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第二幕
32 ザ・キャロル・オブ・オールド・ワンズ.2※
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◆◆◆◆◆◆◆◆
「……僕は何を見させられているんだ……?」
「……諦めますの、これが現実ですの」
玉座の間に辿り着いたハインリヒとアンナが見たもの、それは。
頭から枝か、或いは珊瑚のようなモノが飛び出し、寄生されたような姿の人間達。
『いえ!いえ!すぐねぃ、すりっど、いえめ!むぐふたぐん!』
『いえ!いえ!すぐねぃ、すりっど、いえめ!むぐふたぐん!』
おおよそ人間の声とは思えない、獣が人間の声を真似して発音しているような、低く不気味な言葉を繰り返し口にしているそれら。
そして、玉座に座るのは、蛸の触手のような髭を生やした頭に、六つの眼。
鉤爪の腕、蝙蝠のような薄い翼を持ち、全身が緑色の鱗に覆われた異形だった。
『くな、がるぬ』
その異形の口から、くぐもったオーボエのような薄気味悪い声が響くと、珊瑚に寄生された人間らしきモノが、一斉に此方を向いた。
異形に睨まれた、たったそれだけで、ハインリヒの背には怖気が走り、吐き気を感じさせた。
『げふ、はりる』
『はりるね、ふんぐりょうめ』
『ふんぐりょうめ』
「な、なんなんだ、お前らは……ここは……僕の宮殿だぞ……その玉座に勝手に座ってる不届き者も……何様だ……!支配者のつもりか!?」
震えながら虚勢を張るハインリヒ。
「さ、流石お兄様ですの……この状況でまだそこまで言えるなんて……」
冷や汗を流すアンナ。
『くな、がるぬ』
立ち上がった異形、玉座からの道を開ける珊瑚の人々。
そして、ゆっくりとハインリヒ達に向かって異形は歩き始める。
「お、お兄様、何か聞かれてるっぽいですの!何か言わないと不味いですの!」
「ぼ、僕は皇帝なんだぞ、こんな悪戯……そうだ悪戯で、道化師たちの愉快な仮装に決まっている……!」
『いえめ、がるぬ』
蛸の触手のような髭が目の前に垂れ下がり、真紅の六眼がハインリヒを見つめる。
彼らの鼻に磯のような匂いが突き刺さる。
「僕は……この国の、この国の皇帝なんだ!すぐにでも、すぐにでもパレードを始めなければならないのに……!こんな化け物共とは違った、幸せの秩序が……!」
震えが限界に達したハインリヒは身体に力が入らず倒れ込む。
「お、お兄様……?何を?」
彼を支えたアンナは心配そうに覗き込む……しかし。
「は、はは、そうか……父上が言っていたのは"こういう"事だったのか……!お前が時だったのか!簒奪を見た稚児の夢だ!7つの王権はここで買えるのか!」
目の焦点が定まらないハインリヒは訳の分からないことをのたまう。
『くな、うあう?うるろぅぐ、ふんぐるぅな、ぶぐ?』
首を傾げる蛸の異形。
「レコンキスタだ!人形達の鼓笛隊に合わせて救貧院の残飯が吹き出してくる様は圧巻で、まるでそれが、アトリビュートなのだ!」
『……ぶぐとらぐるん』
意味不明な言葉を吐き続けるハインリヒに対して、何かを聞き続ける異形。
「お兄様……?なんかよくわかりませんが、その調子ですの!」
『くな、まな、むぐんがる、あいあ?』
「……お兄様?ちょっと、今この人(?)マナって言いませんでしたの?いえ、言いましたの!」
「何を言っている!新技法の三文悲恋劇や草よりも肉を食べる豊かな農民を、僕が許さないことくらい、帝国じゃあ常識だろうが!」
激昂したようにアンナを睨むハインリヒ。
「え、はい……?お兄様?勢いで誤魔化しているんじゃありませんの……?」
『……くな?』
困惑するアンナと異形を他所に、興奮したハインリヒは続ける。
「今こそ、青空に向かって凱旋だ!絢爛たる蜘蛛は天に入植し、略奪と生産を同じくする亡者と柱は先鋒をつかさどれ!国境線を気にする思想家の猫は十字軍の進む道にさながら疫病となってはばかることはない!思い知るがいい!鋭角に宿る建築様式の猟犬を!さぁ!この祭典こそ内なる子山羊が結ばれた遙かなる虹のシャボン玉だ!」
大袈裟な身振り手振りで演説するようにそう捲し立てるハインリヒ。
「……え?お兄様?ねぇ!お兄様!?」
揺すっても石のように動かず、彼女の声に反応もしない。
「進め!集まれ!私こそが帝国!すぐだ!すぐにもだ!僕を迎え入れるのだ!」
そしてハインリヒは絶叫し、珊瑚の亡者達を押し除けると、窓へ駆け込んでガラスを破り、外へ飛び出して行った。
『……?』
首を傾げる蛸の異形と呆然とする珊瑚の異形の群れ。
そして振り返り、取り残されたアンナを見る。
赤い六眼に自分の姿が映っているのが見えたアンナは絶句した。
「……やばいですの」
「……僕は何を見させられているんだ……?」
「……諦めますの、これが現実ですの」
玉座の間に辿り着いたハインリヒとアンナが見たもの、それは。
頭から枝か、或いは珊瑚のようなモノが飛び出し、寄生されたような姿の人間達。
『いえ!いえ!すぐねぃ、すりっど、いえめ!むぐふたぐん!』
『いえ!いえ!すぐねぃ、すりっど、いえめ!むぐふたぐん!』
おおよそ人間の声とは思えない、獣が人間の声を真似して発音しているような、低く不気味な言葉を繰り返し口にしているそれら。
そして、玉座に座るのは、蛸の触手のような髭を生やした頭に、六つの眼。
鉤爪の腕、蝙蝠のような薄い翼を持ち、全身が緑色の鱗に覆われた異形だった。
『くな、がるぬ』
その異形の口から、くぐもったオーボエのような薄気味悪い声が響くと、珊瑚に寄生された人間らしきモノが、一斉に此方を向いた。
異形に睨まれた、たったそれだけで、ハインリヒの背には怖気が走り、吐き気を感じさせた。
『げふ、はりる』
『はりるね、ふんぐりょうめ』
『ふんぐりょうめ』
「な、なんなんだ、お前らは……ここは……僕の宮殿だぞ……その玉座に勝手に座ってる不届き者も……何様だ……!支配者のつもりか!?」
震えながら虚勢を張るハインリヒ。
「さ、流石お兄様ですの……この状況でまだそこまで言えるなんて……」
冷や汗を流すアンナ。
『くな、がるぬ』
立ち上がった異形、玉座からの道を開ける珊瑚の人々。
そして、ゆっくりとハインリヒ達に向かって異形は歩き始める。
「お、お兄様、何か聞かれてるっぽいですの!何か言わないと不味いですの!」
「ぼ、僕は皇帝なんだぞ、こんな悪戯……そうだ悪戯で、道化師たちの愉快な仮装に決まっている……!」
『いえめ、がるぬ』
蛸の触手のような髭が目の前に垂れ下がり、真紅の六眼がハインリヒを見つめる。
彼らの鼻に磯のような匂いが突き刺さる。
「僕は……この国の、この国の皇帝なんだ!すぐにでも、すぐにでもパレードを始めなければならないのに……!こんな化け物共とは違った、幸せの秩序が……!」
震えが限界に達したハインリヒは身体に力が入らず倒れ込む。
「お、お兄様……?何を?」
彼を支えたアンナは心配そうに覗き込む……しかし。
「は、はは、そうか……父上が言っていたのは"こういう"事だったのか……!お前が時だったのか!簒奪を見た稚児の夢だ!7つの王権はここで買えるのか!」
目の焦点が定まらないハインリヒは訳の分からないことをのたまう。
『くな、うあう?うるろぅぐ、ふんぐるぅな、ぶぐ?』
首を傾げる蛸の異形。
「レコンキスタだ!人形達の鼓笛隊に合わせて救貧院の残飯が吹き出してくる様は圧巻で、まるでそれが、アトリビュートなのだ!」
『……ぶぐとらぐるん』
意味不明な言葉を吐き続けるハインリヒに対して、何かを聞き続ける異形。
「お兄様……?なんかよくわかりませんが、その調子ですの!」
『くな、まな、むぐんがる、あいあ?』
「……お兄様?ちょっと、今この人(?)マナって言いませんでしたの?いえ、言いましたの!」
「何を言っている!新技法の三文悲恋劇や草よりも肉を食べる豊かな農民を、僕が許さないことくらい、帝国じゃあ常識だろうが!」
激昂したようにアンナを睨むハインリヒ。
「え、はい……?お兄様?勢いで誤魔化しているんじゃありませんの……?」
『……くな?』
困惑するアンナと異形を他所に、興奮したハインリヒは続ける。
「今こそ、青空に向かって凱旋だ!絢爛たる蜘蛛は天に入植し、略奪と生産を同じくする亡者と柱は先鋒をつかさどれ!国境線を気にする思想家の猫は十字軍の進む道にさながら疫病となってはばかることはない!思い知るがいい!鋭角に宿る建築様式の猟犬を!さぁ!この祭典こそ内なる子山羊が結ばれた遙かなる虹のシャボン玉だ!」
大袈裟な身振り手振りで演説するようにそう捲し立てるハインリヒ。
「……え?お兄様?ねぇ!お兄様!?」
揺すっても石のように動かず、彼女の声に反応もしない。
「進め!集まれ!私こそが帝国!すぐだ!すぐにもだ!僕を迎え入れるのだ!」
そしてハインリヒは絶叫し、珊瑚の亡者達を押し除けると、窓へ駆け込んでガラスを破り、外へ飛び出して行った。
『……?』
首を傾げる蛸の異形と呆然とする珊瑚の異形の群れ。
そして振り返り、取り残されたアンナを見る。
赤い六眼に自分の姿が映っているのが見えたアンナは絶句した。
「……やばいですの」
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