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第二幕
33 ザ・キャロル・オブ・オールド・ワンズ.3※
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貴族街の人々は、パレードがいつまでも始まらないのを不審に思っていると、それが起こった。
雲の上にある筈の街が、薄暗い暗雲に覆われたように、暗闇に包まれる。
戸惑う人々は、これは一体何の凶事であろうかと空を見上げる。
天に輝いていたのは、影に喰われ輪郭だけを残す日食の太陽。
通常、ほんの一瞬しか訪れないその暗闇はいつまでも続き、太陽はその異様な姿のまま中天に鎮座していた。
その時だった。
異様な、連続した重々しい轟音が空に響き、それが人々の耳を襲った。
異常事態に混乱した人々が地にしゃがみ込み、恐れ慄いた時、突然その音は止まり、ほんの一瞬、暗闇に安堵が訪れる。
だが、それは始まりに過ぎなかった。
"それ"が彼らの目の前に現れたからだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆
それはパレードだった。
彼らが待っていたものかどうかは定かではなかったが、少なくともパレードだった。
奇妙な音階の管弦が鳴り響き、一欠片の光もない闇と異臭を放つ霧を伴い、異形の行進はやって来た。
「な、何なんだ……これは」
人々は呆然とそれを眺めるしか無かった。
身が竦み、磔にされたように呆然と。
糸もなく、自ら歩く人形達は鼓笛隊の服装に身を包み、当然のように演奏して練り歩く。
町中の人形が勝手に歩き出し、何処からか持ち出した楽器を手にその列へ混ざっていく。
夥しい数の蜘蛛が糸を紡ぎ、帝国の空に浮く島に橋をかけていく。
先導する亡者達は、濁った白い光を放ち、のたうつ巨大な柱のような芋虫を運ぶ。
後ろに続く、黒い炎が7つ灯った冠を被った獅子のような獣が歩く度に大気は燃えて蒸発する。
その周りに悠然と闊歩する巨大な猫達は、唖然としている人々を通り側に捕食し、惨殺していく。
街の建物の角という角から、人間には認識できない不可解な図形と呼ぶ他に名状することのできない、吠える者どもが湧き出して、行進に参加する。
13個の極彩色の泡がその跡に続き、通過した物体を破壊し、焼け爛れたような悍しい形状に再生させて行く。
その残骸を踏み潰していくのは、巨大な羊の蹄を持ち、子羊のような呻き声を上げる大木のような触手の塊、そしてそれの母親である、泡立ち爛れた雲のような肉塊で、同じように蹄を持ち、粘液を滴らす巨大な口を持つ姿の異形。
その後に続くは深海松──枝のような珊瑚が頭から飛び出ている人間のような者達。
それを見た人々の脳から次々に枝が飛び出して破裂し、誘われるように深海松の行列へ混ざっていく。
彼らの後にゆっくりと鷹揚に現れるのは蛸の触手の髭を生やした頭に六つの赤い眼、鉤爪の腕、蝙蝠の薄い翼に全身が緑色の鱗に覆われた異形。
彼が小脇に抱えていたのは桜色の髪の少女で、それが第二王女だった事に気がついた人間は殆どいなかった。
例え存在しても、正気か命を失ってパレードに参加していたからだ。
異形のパレードの中に、宮殿から持ち出されたと思き玉座があり、それは触手のような手足で自ら歩行し、座っていたのは王冠を被ったハインリヒ……だった何かだった。
彼は身体中から深海松が飛び出し、珊瑚のような、肥大化し硬化した甲殻に顔まで覆われていた。
くぐもった声で何かを叫ぶ彼の声は誰にも聞こえなかった。聞く者もいなかった。
帝国の貴族街を通り抜ける彼らの行進の後には残ったのは、破壊の痕跡と珊瑚礁に塗り替えれた奇妙な街の姿、そして、地に根を下ろし人であることを止めた深海松の人々の姿だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
異形の喧騒は遥か上空、未だ事態が伝わっていない下層は静かなものだった。
「……ん?なんだこれ?」
しかし。
魔導具を捨てに来た男が見たのは、普段の残骸の山では無く、珊瑚のような物に覆われた得体の知れない塊だった。
雲の上にある筈の街が、薄暗い暗雲に覆われたように、暗闇に包まれる。
戸惑う人々は、これは一体何の凶事であろうかと空を見上げる。
天に輝いていたのは、影に喰われ輪郭だけを残す日食の太陽。
通常、ほんの一瞬しか訪れないその暗闇はいつまでも続き、太陽はその異様な姿のまま中天に鎮座していた。
その時だった。
異様な、連続した重々しい轟音が空に響き、それが人々の耳を襲った。
異常事態に混乱した人々が地にしゃがみ込み、恐れ慄いた時、突然その音は止まり、ほんの一瞬、暗闇に安堵が訪れる。
だが、それは始まりに過ぎなかった。
"それ"が彼らの目の前に現れたからだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆
それはパレードだった。
彼らが待っていたものかどうかは定かではなかったが、少なくともパレードだった。
奇妙な音階の管弦が鳴り響き、一欠片の光もない闇と異臭を放つ霧を伴い、異形の行進はやって来た。
「な、何なんだ……これは」
人々は呆然とそれを眺めるしか無かった。
身が竦み、磔にされたように呆然と。
糸もなく、自ら歩く人形達は鼓笛隊の服装に身を包み、当然のように演奏して練り歩く。
町中の人形が勝手に歩き出し、何処からか持ち出した楽器を手にその列へ混ざっていく。
夥しい数の蜘蛛が糸を紡ぎ、帝国の空に浮く島に橋をかけていく。
先導する亡者達は、濁った白い光を放ち、のたうつ巨大な柱のような芋虫を運ぶ。
後ろに続く、黒い炎が7つ灯った冠を被った獅子のような獣が歩く度に大気は燃えて蒸発する。
その周りに悠然と闊歩する巨大な猫達は、唖然としている人々を通り側に捕食し、惨殺していく。
街の建物の角という角から、人間には認識できない不可解な図形と呼ぶ他に名状することのできない、吠える者どもが湧き出して、行進に参加する。
13個の極彩色の泡がその跡に続き、通過した物体を破壊し、焼け爛れたような悍しい形状に再生させて行く。
その残骸を踏み潰していくのは、巨大な羊の蹄を持ち、子羊のような呻き声を上げる大木のような触手の塊、そしてそれの母親である、泡立ち爛れた雲のような肉塊で、同じように蹄を持ち、粘液を滴らす巨大な口を持つ姿の異形。
その後に続くは深海松──枝のような珊瑚が頭から飛び出ている人間のような者達。
それを見た人々の脳から次々に枝が飛び出して破裂し、誘われるように深海松の行列へ混ざっていく。
彼らの後にゆっくりと鷹揚に現れるのは蛸の触手の髭を生やした頭に六つの赤い眼、鉤爪の腕、蝙蝠の薄い翼に全身が緑色の鱗に覆われた異形。
彼が小脇に抱えていたのは桜色の髪の少女で、それが第二王女だった事に気がついた人間は殆どいなかった。
例え存在しても、正気か命を失ってパレードに参加していたからだ。
異形のパレードの中に、宮殿から持ち出されたと思き玉座があり、それは触手のような手足で自ら歩行し、座っていたのは王冠を被ったハインリヒ……だった何かだった。
彼は身体中から深海松が飛び出し、珊瑚のような、肥大化し硬化した甲殻に顔まで覆われていた。
くぐもった声で何かを叫ぶ彼の声は誰にも聞こえなかった。聞く者もいなかった。
帝国の貴族街を通り抜ける彼らの行進の後には残ったのは、破壊の痕跡と珊瑚礁に塗り替えれた奇妙な街の姿、そして、地に根を下ろし人であることを止めた深海松の人々の姿だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
異形の喧騒は遥か上空、未だ事態が伝わっていない下層は静かなものだった。
「……ん?なんだこれ?」
しかし。
魔導具を捨てに来た男が見たのは、普段の残骸の山では無く、珊瑚のような物に覆われた得体の知れない塊だった。
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