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第二幕
08.秘密の求愛者-2(※三人称視点)
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◆◇◆◇◆◇◆◇
「アトランタ……?あれ?いないの?」
ベルミダが戻ると、部屋はもぬけの殻だった。
姉へ宛てられた暗号を、自分の物と取り違えたアトランタが、来客用の部屋を飛び出してすぐのことで、二人は入れ違いになっていた。
「……これは……」
ベルミダは、机の上に置かれたままになっていた叙事詩の分厚い本を見ると、好奇心からそれを手に取り、今朝までこの部屋にあったものではないことに気がつく。
「……?」
ひらひらと栞が、めくる本の頁から零れ落ちてベルミダの足元へ舞い降りる。
拾い上げたそれには、細かく数字が記されている。
「……ふふ、そういうことね」
本と栞を見比べた彼女が、その意図に気付くのも、そしてそれを解読するのも、そこまで難しい事ではなかった。
そして。
「この本を贈ってくれるなんて…….多分贈り主はあの、異国の騎士様ね……あぁ……やっぱり情熱的な人…….」
彼女が贈り主を間違えるのも、何らおかしな事ではなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
アルサメナは、この作戦の企画者に言われた助言を受け止めていた。
真面目で温厚な彼は、至極真っ当に言われた通りに考えたのだ。
故に、誰がそれを贈ったのか、文面の中では明らかにせず、そしてアイリスにも言わないように指示してしまった。
彼からしてみれば、ベルミダ宛に愛を込めた文章を送る相手は、今この国で自分をおいて、他にはいるはずもない。
なぜなら、王のナローシュが囲っている相手に、余計なことをしようと思う人間など、この国にいるはずがないからだ。
だからこそ、別段困ったことにはならないと考えた上での判断でもあった。
ただ、届きさえすれば、この本と暗号の贈り主が誰なのか分かるだろう、というのは。
結局は贈り手側が一方的に思っていることでしかなかったのだ。
そこにこの作戦の致命的な欠陥があった。
そう、ベルミダがこの本を読みたいと伝えていたのは……アイリスただ一人だったからだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……私はどうすれば良いのでしょう、同時に三人もの男性に思われるなんて」
そのうち一人のアイリスは女性である。
なんならベルミダの事を、邪魔だとすら思っているが、そんなことは彼女が知る由もない。
「アルサメナ様、まだ何もしてくれないのなら、私は残りの誰かのものになってしまいますよ……それでも良いのですか……なぜ貴方は何もして下さらないのですか……それにひきかえ、騎士様のなんと頼もしい事でしょうか……」
しかしベルミダは、王弟のアルサメナがその異国の騎士に、希望を感じたのと同じか、それ以上の好感を持ってしまっている。
というのも、今の彼女の味方はこの王宮において誰一人としておらず。
能天気な妹はアルサメナに懸想しているので、姉がナローシュと結婚するのを祝福してすらいる。
妹は、姉の気持ちを知ってはいるが、皇后になれるならば別にいいじゃない、と考えていて、そこまで悪意はないが、結果として、このベルミダに味方一人いない、哀れな状況を作り出してしまっていた。
実際、将軍の娘から皇后になれたとあれば、一族は王族に列席することにはなるのだが……それを望んでいる者は誰もいなかった。
その点、ベルミダから見たアイリスは、
彼女の危機に颯爽と駆けつけ、
ベルミダへの愛のためにこの国へ来たと、聞こえるような言葉を言い、
さらにこれまで彼女に言い寄ってきた男達と違い容易な接触では靡かず、
太ったナローシュや、筋骨隆々なアルサメナとも違う細身の美少年である上に、
月夜に、目の前にいるベルミダの事を、知らないフリをして聞き出し、それとなく彼女が欲しいものを贈り、
更にはその中へ恋文を暗号として認める、
そう、アイリスが正しく騎士として振る舞えば振る舞うほどに。
「騎士様……私はどうすれば良いのでしょう……」
勝手にベルミダの好感度が上がってしまうのだ。
「アトランタ……?あれ?いないの?」
ベルミダが戻ると、部屋はもぬけの殻だった。
姉へ宛てられた暗号を、自分の物と取り違えたアトランタが、来客用の部屋を飛び出してすぐのことで、二人は入れ違いになっていた。
「……これは……」
ベルミダは、机の上に置かれたままになっていた叙事詩の分厚い本を見ると、好奇心からそれを手に取り、今朝までこの部屋にあったものではないことに気がつく。
「……?」
ひらひらと栞が、めくる本の頁から零れ落ちてベルミダの足元へ舞い降りる。
拾い上げたそれには、細かく数字が記されている。
「……ふふ、そういうことね」
本と栞を見比べた彼女が、その意図に気付くのも、そしてそれを解読するのも、そこまで難しい事ではなかった。
そして。
「この本を贈ってくれるなんて…….多分贈り主はあの、異国の騎士様ね……あぁ……やっぱり情熱的な人…….」
彼女が贈り主を間違えるのも、何らおかしな事ではなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
アルサメナは、この作戦の企画者に言われた助言を受け止めていた。
真面目で温厚な彼は、至極真っ当に言われた通りに考えたのだ。
故に、誰がそれを贈ったのか、文面の中では明らかにせず、そしてアイリスにも言わないように指示してしまった。
彼からしてみれば、ベルミダ宛に愛を込めた文章を送る相手は、今この国で自分をおいて、他にはいるはずもない。
なぜなら、王のナローシュが囲っている相手に、余計なことをしようと思う人間など、この国にいるはずがないからだ。
だからこそ、別段困ったことにはならないと考えた上での判断でもあった。
ただ、届きさえすれば、この本と暗号の贈り主が誰なのか分かるだろう、というのは。
結局は贈り手側が一方的に思っていることでしかなかったのだ。
そこにこの作戦の致命的な欠陥があった。
そう、ベルミダがこの本を読みたいと伝えていたのは……アイリスただ一人だったからだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……私はどうすれば良いのでしょう、同時に三人もの男性に思われるなんて」
そのうち一人のアイリスは女性である。
なんならベルミダの事を、邪魔だとすら思っているが、そんなことは彼女が知る由もない。
「アルサメナ様、まだ何もしてくれないのなら、私は残りの誰かのものになってしまいますよ……それでも良いのですか……なぜ貴方は何もして下さらないのですか……それにひきかえ、騎士様のなんと頼もしい事でしょうか……」
しかしベルミダは、王弟のアルサメナがその異国の騎士に、希望を感じたのと同じか、それ以上の好感を持ってしまっている。
というのも、今の彼女の味方はこの王宮において誰一人としておらず。
能天気な妹はアルサメナに懸想しているので、姉がナローシュと結婚するのを祝福してすらいる。
妹は、姉の気持ちを知ってはいるが、皇后になれるならば別にいいじゃない、と考えていて、そこまで悪意はないが、結果として、このベルミダに味方一人いない、哀れな状況を作り出してしまっていた。
実際、将軍の娘から皇后になれたとあれば、一族は王族に列席することにはなるのだが……それを望んでいる者は誰もいなかった。
その点、ベルミダから見たアイリスは、
彼女の危機に颯爽と駆けつけ、
ベルミダへの愛のためにこの国へ来たと、聞こえるような言葉を言い、
さらにこれまで彼女に言い寄ってきた男達と違い容易な接触では靡かず、
太ったナローシュや、筋骨隆々なアルサメナとも違う細身の美少年である上に、
月夜に、目の前にいるベルミダの事を、知らないフリをして聞き出し、それとなく彼女が欲しいものを贈り、
更にはその中へ恋文を暗号として認める、
そう、アイリスが正しく騎士として振る舞えば振る舞うほどに。
「騎士様……私はどうすれば良いのでしょう……」
勝手にベルミダの好感度が上がってしまうのだ。
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