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「カリナの恋人とされる四人は、女に好まれる容姿をしているという事以外に共通点がない。
本来ならその四人のなかに含まれていないルーカス様とエルをほしがったことからも、男なら誰でもいいのではないかと推測される。
それで……整った顔をした騎士崩れの役者を、騎士と偽ってカリナにあてがって、様子を見るということになった。
その役者の魔力かなにかが上がったのが認められたら、独身の騎士の中から希望者を募ることになる。
カリナは中身はアレだが容姿は整っているし、回復魔法の使い手でもあるから妻に望むものも少なくないはずだ。
だが……」
ヘンリックは苦しげな顔で口ごもった。
「だが……もし、役者ではダメだということになったら……
その時は……その時は、私が……その役目を負うことになる」
私は息をのんだ。
ヘンリックが、カリナと……?
「私はバルテン王国に忠誠を誓った騎士だ。
そうなったら、媚薬を飲んででも役目を全うしなくてはならない。
魔王襲来に備えるためには、そうするしかないんだ……」
「リック……」
「マリア……こんなことになって、すまない……」
あまりの理不尽さに、私は怒りに震えた。
マリアンネは可愛い妹で、ヘンリックは大切な友人だ。
その二人を苦しめるなんて、許せない。
やっと夫婦になれるところだったのに、こんな横槍が入るなんて!
「リック、その魔王というのはどういったものなのかわかるか」
険しい顔でエルヴィンが問うた。
場合によっては、魔王討伐に協力するつもりなのだろう。
「カリナが言うには……褐色の肌、黒髪、金色の瞳で、背中に黒い翼がある若い男の姿をしているそうだ」
え? それって……
「……その魔王が、王城を襲うのか」
「そうらしい。
とんでもなく強力な魔法を操って、王城だけでなくバルテン王国全体を滅ぼそうとする、と言っていた」
「魔王には、そうする目的があるのか?」
「いや、そんなことは言っていなかったな。
とにかく、突然襲ってきたから、それを迎え撃ったと本に書いてあったそうだ」
「そうか……」
エルヴィンは神妙な顔で俯いた。
私はそんなエルヴィンをじっと見つめ、マリアンネの涙がひっこんだ顔でエルヴィンを見ている。
「どうした?」
ヘンリックは私たちの変化に気が付き、怪訝な顔をした。
「お嬢」
「ええ、そうね。こうなったら、もう打ち明けたほうがいいわ」
「打ち明けるって、なにを?」
エルヴィンは、申し訳なさそうな顔をしながらヘンリックを見た。
「その魔王というのは……おそらく、俺のことだ」
本来ならその四人のなかに含まれていないルーカス様とエルをほしがったことからも、男なら誰でもいいのではないかと推測される。
それで……整った顔をした騎士崩れの役者を、騎士と偽ってカリナにあてがって、様子を見るということになった。
その役者の魔力かなにかが上がったのが認められたら、独身の騎士の中から希望者を募ることになる。
カリナは中身はアレだが容姿は整っているし、回復魔法の使い手でもあるから妻に望むものも少なくないはずだ。
だが……」
ヘンリックは苦しげな顔で口ごもった。
「だが……もし、役者ではダメだということになったら……
その時は……その時は、私が……その役目を負うことになる」
私は息をのんだ。
ヘンリックが、カリナと……?
「私はバルテン王国に忠誠を誓った騎士だ。
そうなったら、媚薬を飲んででも役目を全うしなくてはならない。
魔王襲来に備えるためには、そうするしかないんだ……」
「リック……」
「マリア……こんなことになって、すまない……」
あまりの理不尽さに、私は怒りに震えた。
マリアンネは可愛い妹で、ヘンリックは大切な友人だ。
その二人を苦しめるなんて、許せない。
やっと夫婦になれるところだったのに、こんな横槍が入るなんて!
「リック、その魔王というのはどういったものなのかわかるか」
険しい顔でエルヴィンが問うた。
場合によっては、魔王討伐に協力するつもりなのだろう。
「カリナが言うには……褐色の肌、黒髪、金色の瞳で、背中に黒い翼がある若い男の姿をしているそうだ」
え? それって……
「……その魔王が、王城を襲うのか」
「そうらしい。
とんでもなく強力な魔法を操って、王城だけでなくバルテン王国全体を滅ぼそうとする、と言っていた」
「魔王には、そうする目的があるのか?」
「いや、そんなことは言っていなかったな。
とにかく、突然襲ってきたから、それを迎え撃ったと本に書いてあったそうだ」
「そうか……」
エルヴィンは神妙な顔で俯いた。
私はそんなエルヴィンをじっと見つめ、マリアンネの涙がひっこんだ顔でエルヴィンを見ている。
「どうした?」
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「お嬢」
「ええ、そうね。こうなったら、もう打ち明けたほうがいいわ」
「打ち明けるって、なにを?」
エルヴィンは、申し訳なさそうな顔をしながらヘンリックを見た。
「その魔王というのは……おそらく、俺のことだ」
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