孤独なお針子が拾ったのは最強のペットでした

鈴木かなえ

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 モワデイルを離れてから、私たちは野宿をすることにした。
 人が多いところでしばらく過ごしていたので、自然の中で二人だけで静かに過ごすのも悪くない、ということで意見が一致したのだ。

 人目もないので、アーレンは黒い羽毛に覆われた姿に戻り、私はその柔らかな手触りをしっかりと堪能させてもらっていた。
 久しぶりの感触に、頬ずりして撫でまわしていると、上を向かされて深いキスで口腔を貪られてしまった。

「ナディア……この姿でも、できるって前に言ったよな?」
 
 欲望に染まった金色の瞳。こうなるとアーレンはもう止められない。

 服を剥ぎ取られて裸にされた私は、地面に胡坐をかくように座ったアーレンに跨る体勢にされた。
 大きな翼で素肌を覆ってくれるので、寒くない。
 むしろ、大好きな漆黒の闇に囚われて、その中でアーレンの愛撫を受けるといつも以上に感じてしまう。
 
「アーレン……お願い、もうほしいの……」
「どうした?もう降参か?」

 すぐに音を上げた私に、アーレンは私の胸の頂きを摘まみながら嬉しそうに耳元で囁いた。 
 そんなことを言われても、もう奥が切なくて苦しいくらいなのに。

「だって……我慢できない……」
「しかたないな。それなら、自分で挿れてごらん」

 涙声で訴える私の右手をアーレンはそそり立った剛直へと導いた。
 暗くて見えないが、手で触れた感じでは、それはもう一つの姿の時と同じようだった。
 既に先端から零れた液で濡れているそれの形を確かめるように摩ると、アーレンが吐息を漏らした。
 あんなことを言いながら、アーレンだってとっくに限界を迎えているのだ。

 熱く張りつめたそれを私の入口にあてがって、狙いを定めた。
 腰を落とすと、ぐっと押し広げられる感覚とともにそれが侵入してき、私はそれだけでのけ反ってしまった。
 呼吸を整えるのに必死で、なかなかそこから先に進めないでいると、焦れたアーレンが私の腰を掴んで引き寄せ、一気に奥まで貫いた。

「ああああっ!」

 自重のせいで深いところを抉られて、私はそれだけで達してしまった。
 びくびくと震える私の体を抱きしめて、アーレンは容赦なく下から突き上げてくる。

「やっ、ああっ、やだ、まって、まだイッてる、からぁっ」
「ああ、そうだな。絡みついて……俺のを放そうとしない。ほら、もっと奥を突いてあげよう」
「あっ、そんなしたら、も、やあああああっ!」

 角度を変えて奥を抉られて、私は涙を流しながらまたのけ反った。
 私たち以外誰もいない夜の森の中に嬌声がのみ込まれて消えていく。

「ナディア。人の姿の俺と、こっちの姿と、どっちで抱かれるのが好き?」

 そんなことを今訊かれても、頭が働かない。

 人の姿だと、素肌で触れ合うことができる。
 汗ばんだ肌もさらりと乾いた肌も、ぴったりと合わせるとそれだけでもとても気持ちがいい。
 逞しい肩や胸にキスをするのも大好きだ。

 その一方で、今の姿は柔らかな羽毛を全身で感じることができる。
 肌とは違うその感触もすごく気持ちいい。
 大きな翼で包み込まれ、その中でバリトンで囁かれるとそれだけで腰砕けになってしまいそうになる。

「教えてくれ。どっちが好みだ?」
「あっ、そんなの、わからな、ああぁっ」

 私はまとまった言葉を口にできないくらい乱れているというのに、アーレンはまだ余裕があるのが悔しい。
 アーレンにしがみつきながら必死で首を振って快楽を逃そうとする私に、さらに追い打ちがかけられた。

「んあああっ!」

 腰骨から項まで、手とは違うなにかに撫で上げられ、私はぞくぞくとしてまた声を上げた。

 これは……アーレンの翼だ。

 奥を抉られながら、柔らかく絶妙なタッチで背中や太腿など私の弱いところを撫でられると、簡単に昇りつめてしまう。

「ナディア。どっちだ?」
「どっちも、好き、なの、や、ああああっ!」

 もう何度目かわからない絶頂にのけ反り、アーレンも奥で精を吐き出した。

 どっちの姿のアーレンも好き。どっちの姿のアーレンに抱かれるのも、同じくらい大好き。
 ただ、今のアーレンに抱かれる気持ちよさを知っているのは、この世で私だけ。
 それが私をより幸せな気分にしてくれる。

 熱い飛沫を受け止めながら、私は意識を手放した。
 

 それから数日間、私はどこかもわからない森の中で愛され続けた。

 食事は木の実や兎など、アーレンがどこかから調達してきては食べさせてくれる。
 水もアーレンの魔法で作り出せるので不自由はしない。

 とはいっても、問題がないわけではない。

「ね、アーレン……」
「どうした?」
「お願い、恥ずかしいから……」
「ダメだ。きちんと隅々まできれいにしないと」
「でも……」
「この方が効率がいいんだ。いいから、俺に任せて」
「そんなこと言って、いつも、あ、ひあああっ!」

 野宿をしているので、もちろん風呂やシャワーなんてない。
 アーレンが魔法でお湯をつくり、それで体を洗う。正確には、洗われる。
 自分でできるというのに、アーレンは私の体を丁寧に洗うのだ。
 少し前に買ったいい香りがする石鹸をたっぷりと泡立て、それをぬるぬると私の肌に塗りつけるように大きな手が這いまわる。
 当然ながらただ洗うだけではなく、そこに不埒な動きも加わる。
 執拗に胸や秘部を弄られると、体から力が抜けて自力では立てなくなってしまう。
 快楽に身をよじる私の体から汚れも水分も泡も一瞬で消え去った。
 これもアーレンの魔法だ。

 顎を掬われて深いキスをされると、さっきまでの潤いがまた戻ってくる。
 そのまま人の姿のアーレンに貫かれ、私はまた嬌声を上げた。

「どうだ?こっちの姿の方がいいか?」
「もう、やだ、どっちも好きだって言ってるのにぃ」

 アーレンは柔らかな草の上に広げられたマントの上で私を組み敷きながら、ここ数日の間に何度も繰り返した質問を囁き、その甘いバリトンの響きで私はまた震えてしまう。
 アーレンは人の姿ともう一つの姿で交互に私を抱く。
 どっちのアーレンも同じくらい大好きだと毎回答えているのに、まだ信じてくれないのだろうか。

 滑らかな素肌が汗ばんで、金色の瞳が熱を帯びてギラギラ光っている。
 両脚を逞しい肩の上に抱え上げられて、奥を責められるともうなにも考えられなくなってしまう。

 私はまたアーレンが熱い飛沫を吐き出すまで嬌声を上げ続けた。


 そんな生活が終わりを告げたのは、アーレンが満足したからではなく、単純に手持ちの調味料が無くなったからだった。
 これまでもたまに野宿をすることがあったため、ある程度の塩や香辛料などを持っていたのだが、それを使い果たしたのだ。
 流石に調味料がないと、いくら美味しい肉でもただ焼いただけになるので味気なさすぎる。

 最後だからと散々揺さぶられ、足腰が立たなくなった私を抱えてアーレンは次の町へと飛び立った。

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