茨姫は辺境の地で花開く

鈴木かなえ

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⑦ 夜這いをかけます

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 シーラの導きにより、私は辺境伯様の寝室に忍びこんだ。
 
 そして私の全力の誘惑は成功し、寝台の上で私は彼に激しく口づけされている。
 これが私のファーストキスなのだが、舌を絡めて吸われるのが気持ちよくて私は夢中になった。

 大きな手が私の体を這いまわる。
 薄い夜着の上から胸、腰、背、太腿とまさぐられて、私はくすぐったさとは違う感覚にぞくぞくとして小さく体を震わせた。

「……すまない、急ぎすぎたか」

 どうやら私が怯えているのだと勘違いしたらしく、私を暴く手が止まってしまった。

「ああ、やめないで……もっと触ってください……」 

 私は涙目で訴えた。

 昨日、ロニーの上でマントに包まれた時、私は雌として目覚めた。
 それまでの私は、成人してはいても子供だったと今ならわかる。

 あれからずっと、辺境伯様がほしくてほしくてしかたがない。
 成熟した雌の本能が強い雄を求めているのだ。

 私の願いは通じたらしく、私を見る榛色の瞳に獰猛な光が宿った。
 
 夜着の裾から大きな手がはいりこみ、私の太腿に直接触れた。
 その手は腰、胸、と素肌を撫でながら上にあがっていき、最後には邪魔な夜着をすぽっと脱がされた。
 下着をつけていない私は、それで裸にされてしまった。
 
 彼も前のボタンを全て外された夜着の上を脱ぎ捨て、私を押し倒した。
 再びキスで口を塞がれ、私は広い背中に腕をまわして抱きついた。

「んっ……」

 逞しい胸筋と私の胸の頂きが擦れて、舌を絡めながらも思わず声が漏れた。
 それに気がついたのか、大きな手が私の左の胸を包みこみ、柔らかさを確かめるようにふにふにと揉んでから、硬くなった頂きを指先で弾いた。
 
「んんっ、んうぅっ……!」
 
 たったそれだけのことなのに、のけ反ってしまうくらい気持ちがいい。

「随分と感度がいいな」

 欲情にまみれた低い声で囁かれると、腹の奥がきゅんとなる。
 だが、私はいやいやと首を振った。

「や……キス、やめないでぇ……」

 もっと舌を絡めたいと強請る私に、辺境伯様は舌なめずりをする狼のような顔で笑った。

「やめないよ。次は別のところにキスをしてあげよう」

 その別なところというのは、私の右側の胸の頂きだった。

「あっ! はぁっ、あ、ふぁ……」

 右側の頂きは舌先で転がされ、左側は指でかりかりと引っ掻くように刺激され、私は
短く刈られた黒い髪をかき回しながら声を上げた。
 胸だけでこんなに気持ちがいいなんて、最後はどうなってしまうのだろう。
 そう思うと少し怖いが、それよりも期待の方がはるかに大きい。
 
 ほしい。早くほしい。
 この雄に食べられたい。

 快楽で息が乱れた私の上から、辺境伯様は体を起こした。
 そして、私の両膝の下に手をいれて、ぐいっと左右に開いた。
 
 すっかり濡れた秘部を榛色の瞳に凝視され、さすがの私も赤くなった。
 長い指がそこに触れると、私の体はまた震えた。

「こんなに、濡れているのか……」

「だって、気持ちよくて……んんっ!」
 
 指が膣内にさしこまれ、私はまた声をあげた。
 自分でも触れたことがないところに、彼が触れている。
 ゆっくりと探るように指が動かしたところで、彼の凛々しい形をした眉がぐっと寄せられた。

「きみは……もしかして、処女なのか?」

 蕩けていた私の意識も、これにははっきりと覚醒した。

「あ、当たり前ではありませんか! 私をなんだと思っているのです!?」

「いや、俺はてっきり」

「私は、昨日まで王太子殿下の婚約者だったのですよ!?
 男遊びなどできるわけがないではありませんか!
 もちろん、殿下にも手出しはさせませんでした。
 私は正真正銘、純潔なのです!」

 一度だけ、殿下に寝所に引きずりこまれそうになったことがある。
 私のことは嫌いでも、私の豊かな胸は嫌いではないとかなんとか言っていた。
 もちろん私は全力で逃げたので未遂に終わったのだが、今思い出しても腹が立つ出来事だった。
 あれからさらに私たちの仲は悪くなり、殿下は見せつけるように多くの女性と関係を持つようになった。

「今までにたくさんの男性に会いました。
 その中で、抱かれたいと思ったのは、辺境伯様だけです。
 信じてくださいますか?」

 私に下心を持って近づく男性は掃いて捨てるほどいた。
 『茨姫』を誰が落とすかという賭けが、一部の男性たちの間で行われていたのも知っている。

 もちろん悪いひとばかりなく、いいひとだっていた。

 だがそれでも、私がときめいたのは辺境伯様に対してだけだ。

「エメライン嬢」

 榛色の瞳がこれまでとは違う強い光を宿し、私をひたと見つめた。

「きみの純潔は、俺が貰い受ける」

 そう宣言すると、彼は私の秘部に喰らいついた。

「きゃあああぁっ!」

 陰核の皮が剥かれ舌で押しつぶされ、突然の強すぎる刺激に私の腰が跳ねた。

「いやあっ! ま、待って、お願い! あああっ、へんきょうはく、さまぁ!」

 シーツを蹴って上に逃げようとしたが、がっちりと太腿を抱えこまれているので、足をばたばたさせることしかできない。
 
 私の動きを封じたまま、彼の指がまた私の膣内にいれられた。
 最初は一本だった指は、三本にまで増えて根本まで埋めこまれ、隘路を押し広げながら襞の形をひとつひとつ確かめるように探っていった。

 それと同時進行で、陰核への攻めも行われているのものだから堪らない。 
 ねっとりと陰核を舐めたり、ちゅっと強く吸ったりされるたびに、びりびりとした快楽が背筋を駆け抜けて私は悲鳴のような嬌声をあげた。

「やああっ! ひあっ! あああぁっ!」

 生まれて初めての快楽に身をよじる。
 蜜が溢れる膣内をかき混ぜられ、ぐちゃぐちゃと湿った水音がする。

 やがて、秘部になにかが集まるような感じがして、さらに快楽が強くなった。

「ああっ! な、なに⁉」

「締まってきた。イきそうなのか?」

「やだ、わからな、こわいぃっ!」

「なにも怖いことはない。そのまま身を任せればいい」

 陰核がまた押しつぶされ、膣の腹側を集中的に撫でられた。
 頭の中が白く染まり、集まっていた快楽がパチンと弾けた。

「あああああっ!」

 体が勝手にビクビクと跳ねる。
 膣壁が蠢いて指を締めつけているのがわかった。

 これがイくということなのか。
 快楽の波がやっと引いてぐったりと弛緩した体が寝台に沈んだ。
 
「エメライン嬢……いいだろうか」

 夜着を全て脱ぎ捨てた彼が、私の足の間にいる。
 まだ絶頂の余韻でひくついている膣口に、硬くて熱いものが触れた。

 それがなにか、もちろん私にはわかっている。

 ついに、待ちに待った時が来たのだ。

「辺境伯様……奪って、ください」

 さっきまで指が三本いれられていたところに、別のものがぐっと侵入してきた。
 
「は……あ……」

 しっかり解してくれたからか、思ったより痛くない。
 それよりも、汗で濡れた前髪が額にはりついている彼が色っぽくて、見ているだけでまた息が乱れてしまう。

「う……痛く、ないか?」

「大丈夫ですから……お願いです、もっと奥まで、来て……」

 早くほしい。私の奥まで全て、雄で満たしてほしい。
 
「そう急かすな。痛い思いはさせたくない……」

 言いながら、ゆっくりと腰を進めて私の体の奥へ奥へと拓いていく。
 じわりとした痛みがあるが、そんなことよりもずっと憧れていた男に抱かれているという歓喜に心が震えていた。
 
 やがて私たちの体がぴったりと重なり、彼の全てが私の中に挿入されたのだとわかった。
 彼は眉を寄せて熱い吐息を漏らし、私は腹を内部から押し上げられるような感覚に、はぁはぁと浅い呼吸を繰り返しながら目を見開いた。

「すまない、痛むか? しばらくこのままで馴染ませるから」 

 榛色の瞳には、はっきりと欲情の光がある。
 だが、この状況でも彼は私を気遣ってくれている。

 優しいひと。
 強くて優しい、私の大好きなひと。

 私は広い背に腕をまわして縋りついた。
 
「お願い……焦らさないで……」

 ほしい。
 この男に、めちゃめちゃに求められたい。

「きみというひとは……俺の理性を試しているのか?」

 彼の眉間の皺が深くなり、ギリッと奥歯を噛みしめる音がした。
 ゆっくりと熱杭が半ばまで引き抜かれ、また奥までぐっと挿入された。

「ぐ……気持ちよすぎる……」

 同じ動作を数度繰り返し、苦し気に呻いた彼はギラギラと輝く瞳で私を見下した。

「すまない、もう優しくできない」

 そう宣言すると、私に覆いかぶさって激しい律動を始めた。

「あっ! あぁっ! ひ、あああっ!」

 熱杭は拓かれたばかりの隘路を擦り上げ、容赦なく奥を穿つ。

 そう、これだ! 私はこれがほしかった!
 こうやって、がつがつと雄の欲望をぶつけられたかったのだ!

 痛みはすぐに快楽に塗り替えられ、あられもない声をあげながら私は歓喜に震えた。
 純潔を散らしたばかりだというのに、私の体は快楽に溺れ貪欲に辺境伯様を貪っている。
 
 視界がチカチカと明滅し、私の中で暴れている熱杭をぎゅっと締めつけると、律動が激しさを増した。

 肉がぶつかりあう音が暗い室内に響き、私は自分の体が絶頂に達する準備を始めているのを感じた。
 
「ああっ、も、きちゃう、や……あああああっ!」

 私は逞しい体に手足を絡みつけたまま、昇りつめた。
 背が弓なりにしなり、奥を抉る熱杭をぎゅうぎゅうに締めつけながらガクガクと震えた。

「うっ……」

 それと同時に、彼も大きな体をぶるりと震わせて私の奥に精を注いだ。
 
 熱い飛沫が胎内に広がっていくのを感じながら、私はうっとりとした。
 
 ああ、嬉しい。
 やっと満たされた……

「エメライン嬢……大丈夫か」

 大きな手が私の頬に触れた。
 榛色の瞳が、気遣わし気に私を見ている。

「はい。私は大丈夫です……」

「すまない、あまりに気持ちよくて……我慢ができなかった」

「ふふ、嬉しい……キス、してください」

 そっと唇が重ねられ、私は自分から舌を絡めた。
 両手足を全て使って逞しい体を引き寄せるようにして、二人の胸と腹をぴったりとくっつけた。
 キスも気持ちいいが、素肌が触れ合うのも気持ちがいい。

「エメライン嬢……そんなことをしてはダメだ」

「どうしてです?」

「また、ほしくなってしまう。
 純潔を失ったばかりのきみに、これ以上無理をさせたくないのに」

 苦し気に言う辺境伯様の熱杭は、まだ私の胎内の奥深くまで挿入されたままで、硬度も質量も果てる前と変わっていない。

「我慢をなさる必要などありません。
 これは、私から望んだことですから」

 熱杭がまたぴくりと跳ね、凛々しい眉が寄せられた。
 
 足りない。もっとほしい。
 そう感じているのが、私だけではないのは明らかだった。

「辺境伯様……お願い、もう一度……」

 本心では、一度といわず体力が続く限りガツガツと貪られたい。
 
「……本当に、いいのか?」

「はい……私に、あなたを刻みつけてください」

 大きな手が私の腰を掴み、生まれて初めての深い絶頂から戻ってきたばかりで敏感になっている奥を熱杭がグリッと抉った。

「ああっ!」

 その刺激でのけ反った私に、低い声が降ってきた。 

「……そこまで言うなら、つきあってもらおうか。
 俺が満足するまでな」

 それから激しい律動が再開された。 
 私は何度も絶頂に昇りつめ、心も体も満たされる快楽に震えながら、おそらく三度目の精を注がれたところあたりで気を失った。

 私の希望通りの、幸せな初夜だった。
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