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⑬ 三人での夕食
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「辺境伯様、お待ちしておりました」
「父上! お待ちしておりました!」
食堂に少し遅れてやってきた辺境伯様は、仲良く並んで座っている私とフランを見て驚いた顔をした。
「私たち、お友達になったのです。ね、フラン」
「はい! エミーとお友達になりました!」
「そ……そうか……」
ニコニコ笑顔の私たちに彼は反応に困っているようで、それが少し面白かった。
彼も席につくと、きれいに盛り付けられた料理の皿が並べられ、食前の祈りを捧げて食事が始まった。
「まぁ、フランはカトラリーを使うのが上手ね」
「そうでしょ? たくさん練習したんだよ!」
得意気なフランも可愛い。
「随分と、仲良くなったんだな……」
そう言いながら目を丸くしている辺境伯様。
愛しい旦那様を見ながらだと、元から美味しい料理がさらに美味しく感じる。
「地下水が湧いている池のところで会って、すぐに意気投合したんですよ」
「エミーはね、グリフォンの水浴びが見たかったんだって!」
「残念ながら、今日は見れませんでしたけど」
「グリフォンが水浴びする時はね、離れてないといけないんだよ。
ぶるぶる~ってして水をたくさんまき散らすから、近くにいるとこっちまでずぶ濡れになっちゃうんだ」
「まぁ、そうなの?
それは気をつけないといけないわね。
あんなに冷たい水を浴びたら、風邪をひいてしまうわ」
私とフランがおしゃべりしているのを眺めながら、辺境伯様は私の倍くらいの量の料理を食べている。
体が大きいから、食べる量も多いのだろう。
ああ、料理を口に運ぶ仕草も色っぽい……
あの口にまた食べられたい……
と、不埒な方向に傾きかける意識を、フランの無邪気な笑顔により修正されながら楽しく食事を続けた。
「エミー、明日はどうするの?
もう王都に帰っちゃう?」
食後、不安気に私を見上げるフランに、私は笑って首を横に振った。
「事情があって、私はもう王都には帰れないの。
よかったら明日、お庭とお屋敷を案内してくれないかしら」
そうお願いすると、フランはまたぱっと顔を輝かせた。
「うん! わかった!
僕の秘密の抜け道もエミーには特別に教えてあげるね!」
「それは楽しみだわ」
おやすみなさい、と言って笑顔のフランは侍従に連れられ自室に戻っていった。
それを笑顔で見送って、私を辺境伯様を振り返った。
「申し訳ありません、辺境伯様。
私はフランと会うつもりはなかったのですが、見つかってしまいまして……」
「いや、いいんだ。こうなるのではないかと思っていたよ」
今朝の約束を破ってしまったわけだが、怒られることはなかった。
「きみは、子供の扱いに慣れているんだな」
「ちょうど同じくらいの年の子が身近にいましたので」
私が王都に戻ることができない以上、次にあの子に会えるのは当分先のことになるだろう。
また会える時まで、私のことを覚えていてくれるだろうか……
「エメライン嬢……その、フランと仲良くしてくれて、ありがとう。感謝する」
「そんな、感謝だなんて。
私が好きでしていることなのですから、お気になさらないでください。
可愛いフランとお友達になれて、私も嬉しいのです」
私が笑って見せると、彼も榛色の瞳を少し細めた。
きっと微笑みを返してくれたんだと思う。
「明日も、フランと遊んでやってくれるか」
「はい、お任せください」
「きみを王都から連れてきて正解だったな」
「そう言っていただけて、嬉しいです」
ふふふ、と笑った私は、ここで大事なことを伝えるのを忘れなかった。
「今夜も夜這いしにまいりますので、そのおつもりで」
「きっ……きみは、そんなことを突然……!」
褐色の頬がさっと赤くなり、大きな手が顔の下半分を覆った。
動揺している様も可愛い。
「お嫌ですか?」
「……そうは言っていない」
「では、よろしいのですね」
赤い顔で頷いて、彼は執務室の方向に去っていった。
まだ仕事が残っているのかもしれない。
私もシーラに連れられ客室に戻った。
「辺境伯様は、私のことを嫌ってらっしゃらないわよね?」
「むしろ、かなり好意を持っておいでだと思いますよ」
「そうよね? そんな感じよね?」
嬉しくて、私は赤くなった頬に手をあてた。
「旦那様は、あれで繊細な方です。
年頃の女性とは、今までほとんど関わったことがおありでないのですよ」
「でも、結婚していらしたのでしょう?」
「そうなのですが……
幸せな結婚ではなかったのです。
坊ちゃまを授かったのは僥倖でしたが、旦那様はとても辛い思いをなさいました」
辺境伯様の奥様は、確か伯爵家くらいの家格の令嬢だったはずだ。
王都育ちのお嬢様で、アボットに馴染めなかったのだろうか。
「今は急ぎの仕事もないようですので、旦那様はそれほど忙しくないはずです。
私たちも、できるだけ旦那様とエメライン様が一緒に過ごせるように、さりげなく手を回しますことにいたします。
エメライン様、頑張ってくださいね!」
それはありがたい。
私も、彼ともっと仲良くなるための時間がほしいと思っていた。
きっとシーラだけでなく、多くの人たちが彼のことを心配しているのだろう。
「シーラ、あなたがいてくれてよかったわ。
これからもよろしくね。
頼りにしているわ」
なんとも中途半端な立場の私は、使用人たちから疎まれ孤立するかもしれないという可能性も考えていたが、そんなことにはならなかった。
それもこれも、彼だけでなく、この屋敷の全員が優しいからだ。
いいところに嫁ぐことができた、と私は自分の強運に感謝しながらお風呂で体を清め、いそいそと二夜連続の夜這いに向かった。
寝室では辺境伯様が待ち構えていて、私は即座に裸に剥かれて寝台に組み敷かれた。
そのまま言葉を交わす余裕もなくお互いを貪りあい、私はまた気を失った。
とても幸せな夜だった。
「父上! お待ちしておりました!」
食堂に少し遅れてやってきた辺境伯様は、仲良く並んで座っている私とフランを見て驚いた顔をした。
「私たち、お友達になったのです。ね、フラン」
「はい! エミーとお友達になりました!」
「そ……そうか……」
ニコニコ笑顔の私たちに彼は反応に困っているようで、それが少し面白かった。
彼も席につくと、きれいに盛り付けられた料理の皿が並べられ、食前の祈りを捧げて食事が始まった。
「まぁ、フランはカトラリーを使うのが上手ね」
「そうでしょ? たくさん練習したんだよ!」
得意気なフランも可愛い。
「随分と、仲良くなったんだな……」
そう言いながら目を丸くしている辺境伯様。
愛しい旦那様を見ながらだと、元から美味しい料理がさらに美味しく感じる。
「地下水が湧いている池のところで会って、すぐに意気投合したんですよ」
「エミーはね、グリフォンの水浴びが見たかったんだって!」
「残念ながら、今日は見れませんでしたけど」
「グリフォンが水浴びする時はね、離れてないといけないんだよ。
ぶるぶる~ってして水をたくさんまき散らすから、近くにいるとこっちまでずぶ濡れになっちゃうんだ」
「まぁ、そうなの?
それは気をつけないといけないわね。
あんなに冷たい水を浴びたら、風邪をひいてしまうわ」
私とフランがおしゃべりしているのを眺めながら、辺境伯様は私の倍くらいの量の料理を食べている。
体が大きいから、食べる量も多いのだろう。
ああ、料理を口に運ぶ仕草も色っぽい……
あの口にまた食べられたい……
と、不埒な方向に傾きかける意識を、フランの無邪気な笑顔により修正されながら楽しく食事を続けた。
「エミー、明日はどうするの?
もう王都に帰っちゃう?」
食後、不安気に私を見上げるフランに、私は笑って首を横に振った。
「事情があって、私はもう王都には帰れないの。
よかったら明日、お庭とお屋敷を案内してくれないかしら」
そうお願いすると、フランはまたぱっと顔を輝かせた。
「うん! わかった!
僕の秘密の抜け道もエミーには特別に教えてあげるね!」
「それは楽しみだわ」
おやすみなさい、と言って笑顔のフランは侍従に連れられ自室に戻っていった。
それを笑顔で見送って、私を辺境伯様を振り返った。
「申し訳ありません、辺境伯様。
私はフランと会うつもりはなかったのですが、見つかってしまいまして……」
「いや、いいんだ。こうなるのではないかと思っていたよ」
今朝の約束を破ってしまったわけだが、怒られることはなかった。
「きみは、子供の扱いに慣れているんだな」
「ちょうど同じくらいの年の子が身近にいましたので」
私が王都に戻ることができない以上、次にあの子に会えるのは当分先のことになるだろう。
また会える時まで、私のことを覚えていてくれるだろうか……
「エメライン嬢……その、フランと仲良くしてくれて、ありがとう。感謝する」
「そんな、感謝だなんて。
私が好きでしていることなのですから、お気になさらないでください。
可愛いフランとお友達になれて、私も嬉しいのです」
私が笑って見せると、彼も榛色の瞳を少し細めた。
きっと微笑みを返してくれたんだと思う。
「明日も、フランと遊んでやってくれるか」
「はい、お任せください」
「きみを王都から連れてきて正解だったな」
「そう言っていただけて、嬉しいです」
ふふふ、と笑った私は、ここで大事なことを伝えるのを忘れなかった。
「今夜も夜這いしにまいりますので、そのおつもりで」
「きっ……きみは、そんなことを突然……!」
褐色の頬がさっと赤くなり、大きな手が顔の下半分を覆った。
動揺している様も可愛い。
「お嫌ですか?」
「……そうは言っていない」
「では、よろしいのですね」
赤い顔で頷いて、彼は執務室の方向に去っていった。
まだ仕事が残っているのかもしれない。
私もシーラに連れられ客室に戻った。
「辺境伯様は、私のことを嫌ってらっしゃらないわよね?」
「むしろ、かなり好意を持っておいでだと思いますよ」
「そうよね? そんな感じよね?」
嬉しくて、私は赤くなった頬に手をあてた。
「旦那様は、あれで繊細な方です。
年頃の女性とは、今までほとんど関わったことがおありでないのですよ」
「でも、結婚していらしたのでしょう?」
「そうなのですが……
幸せな結婚ではなかったのです。
坊ちゃまを授かったのは僥倖でしたが、旦那様はとても辛い思いをなさいました」
辺境伯様の奥様は、確か伯爵家くらいの家格の令嬢だったはずだ。
王都育ちのお嬢様で、アボットに馴染めなかったのだろうか。
「今は急ぎの仕事もないようですので、旦那様はそれほど忙しくないはずです。
私たちも、できるだけ旦那様とエメライン様が一緒に過ごせるように、さりげなく手を回しますことにいたします。
エメライン様、頑張ってくださいね!」
それはありがたい。
私も、彼ともっと仲良くなるための時間がほしいと思っていた。
きっとシーラだけでなく、多くの人たちが彼のことを心配しているのだろう。
「シーラ、あなたがいてくれてよかったわ。
これからもよろしくね。
頼りにしているわ」
なんとも中途半端な立場の私は、使用人たちから疎まれ孤立するかもしれないという可能性も考えていたが、そんなことにはならなかった。
それもこれも、彼だけでなく、この屋敷の全員が優しいからだ。
いいところに嫁ぐことができた、と私は自分の強運に感謝しながらお風呂で体を清め、いそいそと二夜連続の夜這いに向かった。
寝室では辺境伯様が待ち構えていて、私は即座に裸に剥かれて寝台に組み敷かれた。
そのまま言葉を交わす余裕もなくお互いを貪りあい、私はまた気を失った。
とても幸せな夜だった。
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