19 / 31
⑲ 宿場町
しおりを挟む
ホールデン王国の南端に位置するマクドゥーガル辺境伯家の領地アボットは、隣国バンクス王国との国境を守る要所でもある。
二国の王都をつなぐ街道が通っていることもあり、アボットの領都は宿場町という一面もある。
貴族が利用するような高級な宿から、安いかわりに大部屋の床で雑魚寝をすることになる宿など、様々なランクの宿があるのだそうだ。
屋台やレストランなども多数あるが、それはほぼ全て平民向けとなっている。
見栄を気にする貴族は、宿に併設されている貴族向けのレストランしか利用しないからだ。
「もったいないですよねぇ。
こんなに美味しそうなものがたくさんあるのに!」
まずダスティン様に連れてきてもらったのは、屋台やレストランが立ち並ぶ区画だ。
もうすぐ昼時ということもあり、空腹を誘う匂いが漂ってくる。
「それはそうだが……エミーだって貴族令嬢だろう?
屋台料理など、平気なのか?」
「平気です!
むしろ、気取ったレストランより、こういうところの方が好きですわ。
王都でもよく屋台で買い食いしてましたの」
平民の女の子が着る服を着て、よくコリーンたちと一緒に王都の屋台や市場を歩き回っていた。
それは、レストランの新作メニューを開発するためでもあったが、単純に私がそれを楽しんでいたからでもある。
「買い食い、か……」
困惑したようにつぶやいたダスティン様を、私はじっと見つめた。
「幻滅させてしまいましたか?」
ダスティン様には本当の私を受け入れてほしいから、表面だけ取り繕うようなことをせず、私の令嬢らしくないところも積極的に晒すという方針にしている。
それで幻滅されたり嫌われたりしたら、仕方がないと諦めるつもりだ。
だって結婚したら、死ぬまでずっと一緒にいることになるのに、その間ずっと自分を偽り続ける生活なんて無理なのだから。
「幻滅などしないよ。
少し驚いただけだ。
俺もたまにこのあたりで買い食いするんだ。
エミーはそういうのを嫌がるかと思っていたが、そうでもなさそうで安心したよ」
よかった、と私は胸を撫でおろした。
「王都にはない珍しいものもあるだろう。
早速見て回ろうか」
「はい!」
ダスティン様にエスコートされ、屋台が並ぶ通りを歩くと、すぐに横から声がかけられた。
「あれ! 誰かと思ったら、領主様じゃありませんか!」
「本当だ! いつもと違ってめかしこんでるから、わかりませんでしたよ」
おそらく、ダスティン様はいつもは騎士服で気軽にここに来るのだろう。
屋台で働いている人たちが、次々と声をかけてくる。
彼が領民に慕われていることがよくわかって、私は自然と笑顔になった。
「そちらの美人なお嬢さんは、新しいお嫁さんですかな?
こりゃめでたい!」
これにはなんと応えるのかと、ちらりと彼を見上げると、榛色の瞳が動揺に揺れていた。
私は『新しいお嫁さん』で間違いではないのだが、まだお試し期間中なので、はっきりと断言することもできず、かといって否定すると私を傷つけることになりそうで、どう応えていいのかわからない、と迷っているのが手に取るようにわかる。
「ごめんなさい、私はお嫁さんではないの。
事情によりダスティン様にお世話になっている、客人なのよ」
それなら、私が自分で立場を明らかにすれば問題ない。
「なんだ、そうなのか。
お嬢さんみたいな美人だったら、俺たちも大歓迎なんだけどなぁ」
「領主様は見た目はちょっと怖いけど、いい男なんだよ。
お嬢ちゃん、お嫁さんになってあげてくれないか」
「こ、こら! おまえたちいい加減なことを言うんじゃない!
エミーに失礼だろう!」
ぽんぽん飛んでくる軽口に慌てるダスティン様も可愛い。
「ふふふ、前向きに検討するわね」
私がそう言うと、わっと歓声が上がった。
「お嬢さん、この串焼き食べてって!
領主様もよく買ってくれるんだ」
「オレんとこのスープも食べてくれよ!
今日のは特別美味しくできてるからな」
「ありがとう。
私一人で全部は食べられないから、連れと一緒にいただくわね」
私はコリーンやイーノックたちと手分けして、できるだけ多くの種類の屋台料理を食べた。
シンプルな料理ばかりだが、どれもこれも美味しいのは、やはり素材がいいからなのだろう。
フランも、普段と違いマナーを気にしなくていい食事に大喜びで、ジェフと一緒に揚げパンを齧っている。
「ダスティン様、これすごく美味しいです!」
クレープにハムと新鮮な葉野菜を挟んだものをもぐもぐと食べながら彼を見上げると、精悍な顔がふいに近づいてきてペロリと唇の端を嘗められた。
「……‼」
「ソースがついていた」
「だからって、嘗めることあります⁉」
瞬時に真っ赤になった私に、彼は嬉しそうに笑った。
寝室では積極的な私だが、人前でこういう触れ合いをするのは恥ずかしい。
「エミーは可愛いな」
「もうっ! からかわないでください!」
赤くなった頬を膨らませ抗議する私に、彼はまた笑った。
そんな私たちを周囲の人たちはニマニマしながら眺めていて、それはそれでまた恥ずかしくなってしまった。
美味しい屋台料理を堪能した後は、野菜などの食材を売っている市場に足を運んだ。
そこでもまた「領主様のお嫁さんになってあげて」と言われ、たくさんのお土産を持たされて暗くなる前に屋敷に戻ることになった。
馬車に乗ると、ダスティン様は私の隣に座り手を握ってきた。
「ここの領民たちは、俺に対して遠慮がないんだ。
きみは嫌な思いをしなかったか?」
「いいえ、全く。
皆さん、暖かくて気さくで、とてもいい人たちですね」
行きの馬車の中では向かい合わせに座っていたのに、今はとても距離が近い。
一緒にお出かけしたことで、心の距離も近づいたからだろうか。
「ここは田舎だから、王都の常識は通用しないことが多い。
王都育ちの令嬢には住みづらいだろうと思っていたのだが……
きみはあっさり馴染んでしまいそうだな」
「私としては、住みやすさでは王都よりもアボットが上ですね。
王都は便利といえば便利ですけど、ゴミゴミしていますから。
アボットは食事も空気も美味しくて、なんだか息がしやすい気がしますわ」
「そうか。きみは、そう思ってくれるのか……」
彼は私を素通りして、ここにはない遠くのものを見るような目をした。
もしかしたら、フランの母君である亡くなった奥様のことを思っているのかもしれない。
詳しくは知らないが、王都育ちの令嬢だったはずだ。
彼はそれ以上なにも言わなかったので、私もなにも訊かず屋敷に帰り着くまで黙って馬車に揺られていた。
とても楽しくて有意義な一日だったのだが、残念ながら夜這いは諦めなくてはいけない事態になってしまった。
コリーンに頼んで彼に今日は自室で寝ることを伝えてもらい、少し早めに床に就こうとしてたところ、扉がノックされた。
「エミー。入っていいか」
ダスティン様だ。
なんだろうと思いつつ返事をすると、怖い顔をした彼が入ってきた。
「体調が悪いと聞いたが、大丈夫なのか?」
大きな手が頬を包み、もう片方の手が私の額に乗せられた。
「熱はなさそうだな。
どこが悪いんだ? 医師を呼ぶか?」
心配そうに私を覗き込む榛色の瞳に、私は苦笑しながら首を横に振った。
「熱はありません。
月の障りが始まっただけですので」
「ああ……そういう……」
コリーンには体調が悪いから自室で眠ると伝えてもらったのだが、ここまで心配してくれるとは思わなかった。
彼は落ち着かなげに視線をうろうろさせた。
「その……そういう時、女性は腹が痛くなったりするのだろう?
薬とかなにか、必要なものはないか?」
「私はあまりお腹が痛くなることもありませんから、大丈夫です。
少し調子は悪くなりますけど、それだけですわ」
「そうか……」
障りが重い体質ではないのだが、それでも諦めなければいけないことがある。
「だいたい六日間くらいは続きますので……
残念ながら、その間は夜這いができないのです……」
残念だ。非常に、心から残念だ。
今夜だって、しっかり夜這いをするつもりだったのに。
だが、こればかりは仕方がない。
健康な証拠だと、受け入れるしかないのだ。
しょんぼりと肩を落とした私の顔を、ダスティン様は再び覗き込んだ。
「その……一緒に寝るのも、ダメなのか?」
「え?」
「俺も月の障りがどういうものかは知っている。
その期間は閨事ができないのも理解している。
だが、隣で寝るだけなら大丈夫なのではないか?」
「それは、そうですが……」
閨事ができないなら、一人の方が寝やすいのではないだろうか。
「きみが一人で眠りたいというなら止めないが……
できることなら、いつものように俺の隣で眠ってくれないか」
私だって、できるならそうしたいと思っていた。
ダスティン様の温もりを感じることができないのは、寂しいなと思っていたところだ。
「よろしいのですか?」
「いいに決まっている。
お試しとはいえ、夫婦なのだからな。
夫婦は毎晩同じ寝台で眠るものだろう?」
それって、限りなく本物の夫婦みたいじゃない?
嬉しくて、私の顔は自然にほころんだ。
「……本当は、一人で眠るのは寂しいと思っていたのです。
今夜もお傍に侍らせてくださいませ」
体を寄せると、ダスティン様は私を軽々と抱え上げて主寝室まで運んでくれた。
そんな私たちを見送りながら、『よかったですね!』とコリーンが視線で伝えてきた。
そうして私は今夜もダスティン様の温もりに包まれ、幸せな気分で眠りについた。
これはこれで大満足な夜だった。
翌日、「決して無理をしないように」とダスティン様に厳命されたので、オードリーとコリーンと三人でサロンに集まり女子会をした。
女子会というか、一方的に私がダスティン様のことを惚気るだけになってしまったが、二人ともうんうんと頷きながら私の話を聞いてくれた。
「私、絶対にダスティン様をモノにしてみせるわ!
二人とも、協力してね!」
「ええ、もちろんです!」
「我がダルトン家一丸となって、全力で応援させていただきます!」
私たちは手を取り合い、私の願いを成就させるために邁進することを誓いあったのだった。
二国の王都をつなぐ街道が通っていることもあり、アボットの領都は宿場町という一面もある。
貴族が利用するような高級な宿から、安いかわりに大部屋の床で雑魚寝をすることになる宿など、様々なランクの宿があるのだそうだ。
屋台やレストランなども多数あるが、それはほぼ全て平民向けとなっている。
見栄を気にする貴族は、宿に併設されている貴族向けのレストランしか利用しないからだ。
「もったいないですよねぇ。
こんなに美味しそうなものがたくさんあるのに!」
まずダスティン様に連れてきてもらったのは、屋台やレストランが立ち並ぶ区画だ。
もうすぐ昼時ということもあり、空腹を誘う匂いが漂ってくる。
「それはそうだが……エミーだって貴族令嬢だろう?
屋台料理など、平気なのか?」
「平気です!
むしろ、気取ったレストランより、こういうところの方が好きですわ。
王都でもよく屋台で買い食いしてましたの」
平民の女の子が着る服を着て、よくコリーンたちと一緒に王都の屋台や市場を歩き回っていた。
それは、レストランの新作メニューを開発するためでもあったが、単純に私がそれを楽しんでいたからでもある。
「買い食い、か……」
困惑したようにつぶやいたダスティン様を、私はじっと見つめた。
「幻滅させてしまいましたか?」
ダスティン様には本当の私を受け入れてほしいから、表面だけ取り繕うようなことをせず、私の令嬢らしくないところも積極的に晒すという方針にしている。
それで幻滅されたり嫌われたりしたら、仕方がないと諦めるつもりだ。
だって結婚したら、死ぬまでずっと一緒にいることになるのに、その間ずっと自分を偽り続ける生活なんて無理なのだから。
「幻滅などしないよ。
少し驚いただけだ。
俺もたまにこのあたりで買い食いするんだ。
エミーはそういうのを嫌がるかと思っていたが、そうでもなさそうで安心したよ」
よかった、と私は胸を撫でおろした。
「王都にはない珍しいものもあるだろう。
早速見て回ろうか」
「はい!」
ダスティン様にエスコートされ、屋台が並ぶ通りを歩くと、すぐに横から声がかけられた。
「あれ! 誰かと思ったら、領主様じゃありませんか!」
「本当だ! いつもと違ってめかしこんでるから、わかりませんでしたよ」
おそらく、ダスティン様はいつもは騎士服で気軽にここに来るのだろう。
屋台で働いている人たちが、次々と声をかけてくる。
彼が領民に慕われていることがよくわかって、私は自然と笑顔になった。
「そちらの美人なお嬢さんは、新しいお嫁さんですかな?
こりゃめでたい!」
これにはなんと応えるのかと、ちらりと彼を見上げると、榛色の瞳が動揺に揺れていた。
私は『新しいお嫁さん』で間違いではないのだが、まだお試し期間中なので、はっきりと断言することもできず、かといって否定すると私を傷つけることになりそうで、どう応えていいのかわからない、と迷っているのが手に取るようにわかる。
「ごめんなさい、私はお嫁さんではないの。
事情によりダスティン様にお世話になっている、客人なのよ」
それなら、私が自分で立場を明らかにすれば問題ない。
「なんだ、そうなのか。
お嬢さんみたいな美人だったら、俺たちも大歓迎なんだけどなぁ」
「領主様は見た目はちょっと怖いけど、いい男なんだよ。
お嬢ちゃん、お嫁さんになってあげてくれないか」
「こ、こら! おまえたちいい加減なことを言うんじゃない!
エミーに失礼だろう!」
ぽんぽん飛んでくる軽口に慌てるダスティン様も可愛い。
「ふふふ、前向きに検討するわね」
私がそう言うと、わっと歓声が上がった。
「お嬢さん、この串焼き食べてって!
領主様もよく買ってくれるんだ」
「オレんとこのスープも食べてくれよ!
今日のは特別美味しくできてるからな」
「ありがとう。
私一人で全部は食べられないから、連れと一緒にいただくわね」
私はコリーンやイーノックたちと手分けして、できるだけ多くの種類の屋台料理を食べた。
シンプルな料理ばかりだが、どれもこれも美味しいのは、やはり素材がいいからなのだろう。
フランも、普段と違いマナーを気にしなくていい食事に大喜びで、ジェフと一緒に揚げパンを齧っている。
「ダスティン様、これすごく美味しいです!」
クレープにハムと新鮮な葉野菜を挟んだものをもぐもぐと食べながら彼を見上げると、精悍な顔がふいに近づいてきてペロリと唇の端を嘗められた。
「……‼」
「ソースがついていた」
「だからって、嘗めることあります⁉」
瞬時に真っ赤になった私に、彼は嬉しそうに笑った。
寝室では積極的な私だが、人前でこういう触れ合いをするのは恥ずかしい。
「エミーは可愛いな」
「もうっ! からかわないでください!」
赤くなった頬を膨らませ抗議する私に、彼はまた笑った。
そんな私たちを周囲の人たちはニマニマしながら眺めていて、それはそれでまた恥ずかしくなってしまった。
美味しい屋台料理を堪能した後は、野菜などの食材を売っている市場に足を運んだ。
そこでもまた「領主様のお嫁さんになってあげて」と言われ、たくさんのお土産を持たされて暗くなる前に屋敷に戻ることになった。
馬車に乗ると、ダスティン様は私の隣に座り手を握ってきた。
「ここの領民たちは、俺に対して遠慮がないんだ。
きみは嫌な思いをしなかったか?」
「いいえ、全く。
皆さん、暖かくて気さくで、とてもいい人たちですね」
行きの馬車の中では向かい合わせに座っていたのに、今はとても距離が近い。
一緒にお出かけしたことで、心の距離も近づいたからだろうか。
「ここは田舎だから、王都の常識は通用しないことが多い。
王都育ちの令嬢には住みづらいだろうと思っていたのだが……
きみはあっさり馴染んでしまいそうだな」
「私としては、住みやすさでは王都よりもアボットが上ですね。
王都は便利といえば便利ですけど、ゴミゴミしていますから。
アボットは食事も空気も美味しくて、なんだか息がしやすい気がしますわ」
「そうか。きみは、そう思ってくれるのか……」
彼は私を素通りして、ここにはない遠くのものを見るような目をした。
もしかしたら、フランの母君である亡くなった奥様のことを思っているのかもしれない。
詳しくは知らないが、王都育ちの令嬢だったはずだ。
彼はそれ以上なにも言わなかったので、私もなにも訊かず屋敷に帰り着くまで黙って馬車に揺られていた。
とても楽しくて有意義な一日だったのだが、残念ながら夜這いは諦めなくてはいけない事態になってしまった。
コリーンに頼んで彼に今日は自室で寝ることを伝えてもらい、少し早めに床に就こうとしてたところ、扉がノックされた。
「エミー。入っていいか」
ダスティン様だ。
なんだろうと思いつつ返事をすると、怖い顔をした彼が入ってきた。
「体調が悪いと聞いたが、大丈夫なのか?」
大きな手が頬を包み、もう片方の手が私の額に乗せられた。
「熱はなさそうだな。
どこが悪いんだ? 医師を呼ぶか?」
心配そうに私を覗き込む榛色の瞳に、私は苦笑しながら首を横に振った。
「熱はありません。
月の障りが始まっただけですので」
「ああ……そういう……」
コリーンには体調が悪いから自室で眠ると伝えてもらったのだが、ここまで心配してくれるとは思わなかった。
彼は落ち着かなげに視線をうろうろさせた。
「その……そういう時、女性は腹が痛くなったりするのだろう?
薬とかなにか、必要なものはないか?」
「私はあまりお腹が痛くなることもありませんから、大丈夫です。
少し調子は悪くなりますけど、それだけですわ」
「そうか……」
障りが重い体質ではないのだが、それでも諦めなければいけないことがある。
「だいたい六日間くらいは続きますので……
残念ながら、その間は夜這いができないのです……」
残念だ。非常に、心から残念だ。
今夜だって、しっかり夜這いをするつもりだったのに。
だが、こればかりは仕方がない。
健康な証拠だと、受け入れるしかないのだ。
しょんぼりと肩を落とした私の顔を、ダスティン様は再び覗き込んだ。
「その……一緒に寝るのも、ダメなのか?」
「え?」
「俺も月の障りがどういうものかは知っている。
その期間は閨事ができないのも理解している。
だが、隣で寝るだけなら大丈夫なのではないか?」
「それは、そうですが……」
閨事ができないなら、一人の方が寝やすいのではないだろうか。
「きみが一人で眠りたいというなら止めないが……
できることなら、いつものように俺の隣で眠ってくれないか」
私だって、できるならそうしたいと思っていた。
ダスティン様の温もりを感じることができないのは、寂しいなと思っていたところだ。
「よろしいのですか?」
「いいに決まっている。
お試しとはいえ、夫婦なのだからな。
夫婦は毎晩同じ寝台で眠るものだろう?」
それって、限りなく本物の夫婦みたいじゃない?
嬉しくて、私の顔は自然にほころんだ。
「……本当は、一人で眠るのは寂しいと思っていたのです。
今夜もお傍に侍らせてくださいませ」
体を寄せると、ダスティン様は私を軽々と抱え上げて主寝室まで運んでくれた。
そんな私たちを見送りながら、『よかったですね!』とコリーンが視線で伝えてきた。
そうして私は今夜もダスティン様の温もりに包まれ、幸せな気分で眠りについた。
これはこれで大満足な夜だった。
翌日、「決して無理をしないように」とダスティン様に厳命されたので、オードリーとコリーンと三人でサロンに集まり女子会をした。
女子会というか、一方的に私がダスティン様のことを惚気るだけになってしまったが、二人ともうんうんと頷きながら私の話を聞いてくれた。
「私、絶対にダスティン様をモノにしてみせるわ!
二人とも、協力してね!」
「ええ、もちろんです!」
「我がダルトン家一丸となって、全力で応援させていただきます!」
私たちは手を取り合い、私の願いを成就させるために邁進することを誓いあったのだった。
240
あなたにおすすめの小説
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~
如月あこ
恋愛
宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。
ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。
懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。
メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。
騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)
ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。
※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】
日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
側妃としての役割
しゃーりん
恋愛
結婚を前に婚約者を亡くした侯爵令嬢フェリシア。
半年が過ぎる頃、舞い込んだ縁談は国王の側妃であった。
王妃は隣国の元王女。
まだ子供がいないため側妃が必要になったようだ。
フェリシアが心配した王妃との関係はどうなる?
国王に愛され、自分の役割を果たすお話です。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる