日常探偵団

髙橋朔也

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密室への侵入 その参

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 三人は近くのファミリーレストランに寄った。
「注文、どうするっすか?」
「私はドリンクバーだけにしておくよ」
「俺もドリンクバーだけで」
「じゃあ、俺もドリンクバーだけにするっす」
 店員にドリンクバーを注文し、話し始めた。
「まさか、犯人が優しそうな中島部長だったとはな」
「それは私も驚いたよ」
「女って怖いからな」
「私まで怖いみたいなことは言うな」
「いや、先輩も十分(じゅうぶん)怖い──」
「あぁ!? 何か言ったか? 聞こえないな」
 土方は右手を握って、突き出した。
「い、いえ。何も言ってないです...」
 新島は下を向いた。
「間違ったトリックを披露するのは明日か?」
「ああ。その後で事前に仕掛けたトリックを発動させるんだ」
 高田はドリンクを飲みながら、新島の話しを聞いていた。土方はカバンからノートとペンを取り出した。
「文芸部日誌を作成しようと思う」
「文芸部日誌?」
「ああ。私が一年の頃は日誌を書いていたんだ。活動報告みたいなものだ。なぜ、いまその話しをするのかというと我が校に起こった事件を詳細にまとめるのにぴったりだからだ」
「活動報告...」
「そうだ。ちまちまと毎日、書いていくんだ。私が卒業したら君たちは三年生だ。それから一年で二人も卒業。新入部員がいないなら文芸部は存続できない。だから、文芸部の活動を後世に伝えるんだよ。そう! 文芸部があったという証しさ。なんたって、七不思議研究部が解けなかった七不思議の七番目をいとも簡単に解決したのが我が文芸部だからな」
「細々とした作業だな...」
「そうだよ。だが、これがきっと役に立つよ。来年、文芸部を頼むよ新島」
「部長...俺はどうっすか?」
「そうだね...、可愛い後輩さ」
「後輩、ね」
「部長は新島に任せる。新入部員によろしく。いなかったらそこまでだ」
「悲しいこと言うな」
「現実とは時に...凶器にすらなり得るんだ。改め、気をつけたまえ」
「わかっている。だが、まだ今年は続くぞ。文芸部が一番忙しい三日間。稲穂祭だ」
「多めに発注した分は売り切ろうじゃないか」
「だな」
「まあ、あれくらいならすぐに売れるっすよ」
「頑張ろう!」
「私から提案だが、日誌を書く順番はじゃんけんで日替わりにしよう。当番制だ」
「いいね」
 三人がじゃんけんをした結果、当番制で日誌を書く順番は高田⇒土方⇒新島となった。

 ファミレスで食べてから、三人はそれぞれ家に帰った。そして、次の日の放課後、三人は文芸部部室に顔を出した。
「新島...昨日の計画通り、俺がやるで良いんだな?」
「かまわないよ。高田が探偵役だ」
「事前に仕掛けたのか?」
「ああ」
「ほら、部長も急いでくださいっすよ!」
「ま、まあな。少し待ってくれ」
 土方は靴紐を結ぶと、カバンをつかんだ。
「行こう」
 将棋部部室にはすでに部員全十八人を集めてあった。三人が部室に入ると、歓声が上がった。
「ストーカー事件を解決してくれる文芸部だぞ!」
「バカだな。あれは日常探偵団だ」
「日常探偵団」
 拍手喝采だ。そろそろ職員が叱りにくるんじゃないかと思うくらいだ。
「将棋部部長から文芸部部長にお願いです。どうか、この謎を解いてください」
「わかっている。今回は高田が推理を披露する」
「どうも。文芸部部員の高田弘です」
 高田は挨拶を終えると、新島から風船と包丁、紙切れを受け取った。
「まずは、包丁の先に紙切れを刺す。これを手紙とする。そして、天井に紐で吊すとしよう。これをどうやって外部から切ればいいと思うかね?」
 将棋部部員の一人が答えた。
「外部からなら、火薬を仕掛けて時限式に燃やせばいいんじゃないか?」
「少し賢いが、まだ甘いぞ一年坊。火薬を使ったら跡が残って証拠になってしまう」
「なら、吊した紐も残りますよ」
「もちろんだ。一歩進んだ。だが、まだだ」
「ボンドで包丁を天井に付けた」
「アホか? 天井を見てみろ」
「...風船!」
「そうだ。よくできたな。褒めてやろう」
 高田は風船に息を吹き込んで風船をつくった。その風船の上に包丁を乗せて天井に吊した。
「さて。次にどうやって風船を外部から割ったか、だな」
 高田は新島からカメラのレンズを受け取った。
「知ってるか? 野鳥を撮影するカメラのレンズは焦点(しょうてん)が高いんだ」
「焦点だぁ?」
「知らないのか? 一年坊...。焦点とは、レンズに平行に入射して反射・屈折した光線が集まる点だ。つまり、焦点が高い方が光線を一点に集められるから遠くを焼けるんだ。小学校の実験で虫眼鏡使って紙を焼いただろ? あれと同じだ。そして、ベランダに野鳥を撮影するレンズを置いていたのは...将棋部部長の中島一葉(なかじまかずは)、あんただろ?」
 高田は不敵な笑みをうかべて中島を指さした。
「ぶ、部長が!」
「な、何のことかしら? そもそも、そんな仕掛けじゃ無理よ」
 中島は腕を組みながら高田を見下ろした。
「どうかな? やってみなきゃ分からないからな」
「なら、やってみてくださいよ」
「もちろんだよ」
 高田は爪楊枝を吹き矢の要領で目的の風船に刺した。すると、驚くべきことになった。
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