日常探偵団

髙橋朔也

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新参者 その参

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「これで」高田は頭の裏に両手を回した。「三島が父親を嫌いな理由が判明したな」
「姓が違うことか?」
「そうだ。姓が違う、つまり、父親と血のつながりはなく、母親と再婚したんだろ? 本当の親子じゃないから、父親のことが気に食わないというわけだ」
「本当にそんなくだらない理由なのか?」
「わ、私も違うと思います」
「おっ! 新田も俺と同じ意見か。高田、二対一でその説は却下」
「マジかよ......」
「マジだよ」
「じゃあ、新島も何か推理してみろ」
「さあな」
「なら、新田はどうだ?」
「私ですか? えっと......」新田は言葉に詰まった。新島が、無理をしなくてもいいよ、と言ったから新田はお辞儀をした。新田は引っ込み思案なのだ。
「新島は何か閃いたか?」
「いや、まったく閃かない。ってか、別に三島じゃなくても文芸部に入る奴探したはいいんじゃん?」
「いや、三島はすでに誘っちゃったし......」
「それもそうか」
 新島はため息をついた。まずは遠目から調べるべきだったと後悔した。
「新島、どうする?」
「調べるのは高田が得意だよな」
「俺に二次被害が?」
「そゆことだ。明日、ちゃんと調べろよ」
「明日、ね」
「あ、今思い出した。新田、入部届書いたか?」
「は、はい。書いてきました」
 新田はカバンを開けて、紙を一枚取りだした。そして、それを新島の前まで持ってきた。
「部長、入部届です」
「預かっておくよ」
 新島は入部届を受け取って、テーブルに乗せた。
「高田、七不思議の件については進展はあったか?」
「四番目か?」
「四番目じゃなく、七不思議全体の進展だ」
「全て引っくるめても進展はないよ」
「そうか......。それは残念だ」
「本当に残念か?」
「当たり前だ。嘘をついてもしょうがないだろ」
「それもそうだな。......進展かどうか知らんが、一つだけ七不思議についての情報がある」
「何だ? 言ってみろ」
「七不思議の二番目のポルターガイスト現象の原因だった演劇部の屋上での練習な、演劇部が他に練習する場所を見つけたらしい」
「それはよかったじゃないか。まあ、七不思議について進展はしていないが」
「まあ、そういう情報があったことは伝えたからな」
「ああ、わかってる......。ちゃんと聞いてやったから安心しろ」
「じゃあ、明日頑張って三島のことを調べてみる」
「張り切ってるな」

 高田は三島の行動を細かく調べた。好きなものや嫌いなもの。得意な教科や苦手な教科。事細かに調査し、その結果を放課後の部室で披露した。
「得意な科目は数学。苦手な科目は理科だった。そして、三島本人は『寡黙(かもく)』だ」
「またくだらない洒落を言ったな......」
「面白いだろ?」
「つまんないよ」
「悪かったな」
 すると、急に新田が目を輝かせた。
「高田先輩、面白いです!」
「だろ?」
「新田、こいつの洒落は無視していいから!」
「なんでですか?」
「えっと......?」
「新田、今の洒落は面白いだろ?」
「まあいい」新島はため息をつきながら、両手で顔を覆った。「高田は調査結果の報告を続けろ」
「わかってるよ。──これは眉唾かもしれんが、やはり父親が義理かもしれないな」
「つまり、義父か?」
「そうだ。その点は新島と同じだ。だが、なぜその義父を嫌うのか。正確な答えは得られなかった。
 あと、面白いこともわかった。三島は筆圧が強かったんだ。シャープペンシルの芯を、結構折っていた。それで、自然と文字も太くなる」
「筆圧が強いことがわかっても、あまり捜査が進展することはないだろうな」
「そもそも、三島の言うところの『秘密』とは何なのかわからないから、調査も難しいぞ」
「その秘密は俺も教えてもらってないんだ」
「まあ、俺が一日頑張って調べた結果がこれだよ」
「高田に限界はある、か。......このまま三島の推論会を続けるか?」
「無意味だろ。新島が閃けば手っ取り早いが」
「それが、なかなか閃かないぞ」
「ついに晩年を迎えたか」
「今年の誕生日がまだだから、十四歳だが?」
「ああ、晩年だな」
「太宰治?」
「そりゃ、本の名前だ」
「よくわかったな」
「当然だ」
 その後、部室は一時沈黙した。新島は目の下を掻きながら窓の外を見た。陸上部が走っているところだ。
「新島」高田は新島と同じように、窓の外に視線を向けた。「そんなに陸上部が気になるのか? もしかして、女子の運動着を見てるのか? ありゃ、ブルマじゃないぞ」
「勝手に人を変態みたいに言うな。今、真剣に考えているところなんだよ」
「おぉ、そうだったか」
 新島はうつむいて、指を鳴らした。それから部室を歩き回り、三周を回り終えてから高田を見て、白い歯を覗かせた。
「どうした? まさか、閃いたのか?」
「高田の言う通り、完璧に閃いたぞ」
「よくやった、新島!」
 高田と新田は、新島に向けて拍手した。
「で、その閃いた内容を教えてくれ」
「これは、一個人のプライバシーに関わる問題だ。まずは本人に許可を取らなきゃいけない」
「そんな酷い内容だったのか? それとも、内容が無いような感じか?」
「その洒落は無視していいか?」
「ああ、無視していい。その内容は新島が生まれてきた理由より酷いのか?」
「それほど酷いわけではない。だが、常人なら酷いと思う内容だ。まあ、俺の推理が正しければだがな」
「新島が的外れな推理をするわけがないから、多分それが正しい答えだ」
「そう言われると嬉しいよ。俺は、三島が帰宅する前に推理をぶつけてみることにする」
「三島の自宅は北区だったっけ?」
「その洒落も無視していいか?」
「......」
 新島は部室を出ると、六組教室に向かった。彼女がいつも通りの行動をしているなら、現在教室で本を読んでいるはずだ。新島は足を速めた。
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