日常探偵団

髙橋朔也

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七不思議の四番目、漏水の怪 その壱

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「まあ」新島はコーヒーを飲み干して、缶を床に置いた。「今年も七不思議の四番目が起こるとは限らないからな」
「だな。他に新しい情報がある人は~?」土方の呼びかけに、誰も挙手をしなかった。「このペースじゃ、烏合の衆の会議はすぐに終わっちゃうな」
「なら、会議は早急に切り上げて、遊ぶか?」
「いいな」
「私は賛成です」
「私も賛成しますっ!」
「んじゃあ、俺も」
 五人は一時間、自由な時間を過ごした。

──次の日、放課後──
 八坂中学校二年五組放課後清掃委員会副会長という肩書きを持つ兼島手甲(かねしまてっこう)は、いつも通り放課後清掃をしていた。
 兼島は副会長のため、清掃を受け持つ範囲が広いのだ。急いで清掃をしないと活動終了前会議に参加出来なくなってしまう。
「疲れたなぁ」
 兼島は休憩するため、テニスコートに向かった。テニスコートも清掃範囲だが、周辺にはプールくらいしかないから見回りも来ない。
 テニスコートに折りたたみの椅子が置いてあるので、普段はそれを広げて座っている。だが、今回はテニスコートに行くことは無理そうだった。
「ろ、漏水っ!」
 プールにたまった雨水が、どこからか漏れてテニスコートを浸水させていた。
 こんなことは初めてだから、兼島は飛び上がれる高さまで飛び上がってみた。
「どうすればいいんだ!?」
 兼島は迷ったあげく、近くの通行人に助けを求めた。
「あの! 助けてください!」
「うおっ? プールから水が......」

「で」新島は腕を組んで口をへの字に曲げた。そして、兼島から高田に目を向けた。「兼島が助けを求めた通行人が高田だったというわけか」
「そゆこと」
「まったく......。まあ、七不思議の四番目に早速出会えたことは良かったな」
「俺に感謝しろよ」
 新島と高田の会話にしびれをきらした兼島が、声を上げた。「あのう! 水を全てプールに戻すことは出来ますか?」
「そんなの、先公に頼めばいいんじゃないか? 高田を連れて行かせるから、先公に伝えてこい」
「そうなんですけど、これでは今週の清掃ノルマが達成出来ません」
「清掃ノルマ?」
「放課後清掃委員会では、その週の清掃担当の人に清掃ノルマが設けられます。それを毎回、完璧に達成していると、赤点補習の免除などが出来ます。俺はその免除が欲しいんです」
「こんなことがあったんだから、さすがに清掃ノルマくらいは免除されるだろ?」
「されません」
「なるほど。そういう依頼か。つまり、水を蒸発させればいいんだな?」
「はい」
「なら、いい機械を持っている。君は掃除をしたことにして本部に戻りなさい」
「わかりました。ありがとうございます」
 兼島はお辞儀をして部室を出ていった。
「新島は水を蒸発させる機械を持っているのか?」
「あんなの、兼島を安心させるための嘘だ。それより、テニスコートを掃除しに行くぞ」
 新島はダンボール箱を一つだけ持って部室を出た。高田、三島、新田は新島のあとを追った。
「よし。んじゃ、ダンボール箱の中身を分配する」
 新島はダンボール箱から掌(てのひら)サイズのスポンジをいっぱい取りだして、三人に配った。
「新島。このスポンジ、もしかして......」
「そうだ。そのスポンジで床の水を吸収して、排水口の上で絞れ。で、またスポンジで水を吸収する」
「やっぱり、手作業か」
「ほら。口より手を動かせ」
「へいへい」
 四人は黙々と手を動かして、スポンジで水を吸収していった。高田はため息をつきながら、スポンジを床に放り投げた。十秒ほど待ってから、スポンジを取り、排水口で絞った。
「高田! 手を抜くな!」
「だって、めんどうくさい!」
「三島も新田も、文句を言わずにやってるんだよ。ちゃんとやれ」
「わぁったよ」
 高田はため息をついた。

 一時間、苦労をした。そして、水は全て吸収できた。四人は泥だらけで部室に生還した。
「あぁー! 俺、もう無理だ!」
「高田だけじゃなくて、俺らも無理だ。お互い様だ」
「まあ、そうだけどさぁ......」
「次は、プールの水を漏水させた動機とそのトリックを考えよう」
「機械を使ったはずだ。それで水をテニスコートに出したんだ」
「その機械はどこにあるのか......。まあ、かなり大きい機械のはずだから隠している場所は限られてくる」
「テレビで見たら、かなり大きいもんな!」
「当たり前だ」
「なら、探すか」
「それが一番手っ取り早いな」
「じゃあ、暗くなってから四人で手分けして倉庫を漁ろう」
「そのつもりだ」
 やがて暗くなると、四人はまず第一倉庫に向かった。雑多な道具は大体ここに入れられて、次に取りに戻ってくることは少ない。隠すならうってつけであり、かなり倉庫も大きい。
 四人は物音を立てずに倉庫の中の備品をいじり、水を抜くことに使用出来そうな機械を探した。だが、見付けたものでそれっぽいものといえば、壊れたエアコンのスリーブだ。学校用のエアコンだからスリーブも長く、エアコンとくっついているから水を吸い上げる機械のように見えなくもないのだ。
「駄目だな。第一倉庫にはなにもない」新島は目に入ったほこりを取りながら言った。
「完全に外れだ第二倉庫行くぞ」
「待て。三島と新田が疲れている。──二人とも、大丈夫か?」
 二人は息を切らせながらも、それぞれ大丈夫だと答えた。
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