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七不思議の四番目、漏水の怪 その陸
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「ていうことはさぁ」高田はソファに横たわった。「これで七不思議の四番目は万事解決ってこと?」
「万事ではないだろ。七不思議はあと二つ残っている。それに、四番目はまだ解決していない」
「は? 何言ってんの?」
「動機だ」
「息切れ?」
「違う。その動悸じゃない。七不思議の四番目、つまりプールから水を抜いてテニスコートに流した理由だ」
「だから、練習試合を中止させるためだろ?」
「練習試合を中止させたいわけではない可能性の方が高いだろうな」
「なんで?」
「八坂中学校のテニスコートの一つが使えなくなった程度では練習試合はなくならない。確かに予定されていた期日に練習試合は出来なかったが、実際来週あたりに練習試合を行うらしい」
「そう言われれば、そうだな......」
「つまり、何か他の理由があるはずだということだ」
「他の理由か。練習試合が行われる当日は何か学校側の不都合があって、他校を校内に入れたくなかったとか?」
「だったら、その不都合がわからないことには解決しないだろ」
「それがわからないから『不都合』という言葉を使ったんだよ」
「動機不明で処理しようか?」
「部長が許さないだろ」
「......あのさ、その『部長』って言葉を使わない方がいいよ」
「なんで?」
「三島と新田が文芸部の部員になったとき、俺が文芸部の部長になったからだ。三島と新田が混乱する」
「それもそうだな。これからは部長じゃなくて土方と呼ぼう」
「あの、私はかまいませんけど?」
「私も大丈夫です!」
「そうか? なら、部長のままだ」
「三島と新田がいいなら好きにしろ」
「話しを戻すぞ」
「動機の調査か?」
「そういうこと」
新島は床を拭いた雑巾を、バケツに投げ込んだ。
「よし。まずは第一倉庫の中にあったエアコンのスリーブ内を調べよう。プールには藻が浮いていたから、スリーブを使って水を抜いたなら藻が付着しているはずだ」
「そうだな。動機が不明でもトリックさえわかればどうってことはないな」
と、意見が一したので第一倉庫に向かうことになった。
「第一倉庫」高田は威風堂々としたたたずまいで、腰に手を当てた。「相変わらず、倉庫の中が汚い! ほこりっぽい」
「なら、マスクでもしておけ」
「マスクなんか持ってきてない」
「俺も、まさか第一倉庫に今日入るとは思わなかったからマスクは持ってきていない」
「だろうな。まあ、行くぞ!」
最初、新島は咳き込んだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。咳き込んだが、一人ではないからな」
「尾崎放哉(おざきほうさい)か。無季自由律俳句だっけ?」
「よく覚えているじゃないか。俺が好きな俳句は『ゆうべ底がぬけた柄杓(ひしゃく)で朝』だ。ちょっと面白いだろ? 添削はされているがな」
「何が面白い?」
「日常の些細なことをだな──」
「そういうのはいい。よし。スリーブを外すぞ」
「聞いておいて最低な野郎だな」
「そうか? 普通の中学生だ」
「まあ、許してやろう。で? スリーブの内側に藻は付着しているのか?」
「......。ふむ。微量だが、藻らしきものがところどころに付着しているぞ」
「ほとんどそのスリーブを使ったということで確定だな。普通に使っていたらスリーブの内側に藻は付着しないだろう......」
「じゃあ、次は動機探し?」
「そうだ。動機探しだ」
「動機佐賀市か」
「九州と関東じゃ離れすぎだ」
動機を知るために、第一倉庫を出た一行は校舎内の散策を始めた。A棟の屋上から順々に階下に下がっていき、一階に着くとB棟に移った。
「B棟に理科室があるだろ?」
「確かにあるが、高田は理科室が見たいのか?」
「理科室が嫌いなんだよ。悟れよ」
「なんで理科室が嫌いなんだ?」
「骨格標本とか虫の標本、生きた虫がはいった虫かごとかゲテモノが多く置いてあるだろ?」
「えっ! 高田......お前、ゲテモノ嫌いだったの!?」
「好きではある。中国言ったときに猿脳(えんのう)も食った。だが、虫と骨は駄目なんだよ」
「普通なら逆だぞ。猿の脳味噌シャーベットなんて、日本人は食えねーよ」
「いや、案外うまいぞ。あの見た目でな」
「見た目がクソだ」
「だけど、虫と骨は無理だ」
「諦めろ。理科室管理担当は外道虫大好き理科教員の榊原和仁(さかきばらかずひと)だ。理科室には虫と骸(むくろ)が並んでいる。昆虫やら動物やらの解剖など顔色一つ変えずにやってるからな、榊原は」
「なぜ倒置法......」
「強調したかったんだ」
「高田の嫌な顔、見たいな......。よし! 理科室を先に散策しに行くぞ!」
「なっ! テメェ!」
「まあまあ。アイマスクを貸してやる」
新島はポケットからアイマスクを一つ出して、高田に渡した。
「なんでアイマスクを持ってんだ?」
「文芸部の備品だよ」
「備品? ほぉ......」
「そう、備品だ。ダンボール箱に入った、かなり古い奴だ」
「古い奴でもいいから、アイマスクがあって助かるよ」
「行くぞ! 理科室!」
「やっぱり、新島は最低な奴だ! アイマスクのことで少しは見直したんだがな......」
「高田の眉間に皺を寄せた顔が面白いから仕方がない」
新島はわくわくして、裂けるほど口を緩めた。そして、スキップしながら理科室がある階まで向かった。
「万事ではないだろ。七不思議はあと二つ残っている。それに、四番目はまだ解決していない」
「は? 何言ってんの?」
「動機だ」
「息切れ?」
「違う。その動悸じゃない。七不思議の四番目、つまりプールから水を抜いてテニスコートに流した理由だ」
「だから、練習試合を中止させるためだろ?」
「練習試合を中止させたいわけではない可能性の方が高いだろうな」
「なんで?」
「八坂中学校のテニスコートの一つが使えなくなった程度では練習試合はなくならない。確かに予定されていた期日に練習試合は出来なかったが、実際来週あたりに練習試合を行うらしい」
「そう言われれば、そうだな......」
「つまり、何か他の理由があるはずだということだ」
「他の理由か。練習試合が行われる当日は何か学校側の不都合があって、他校を校内に入れたくなかったとか?」
「だったら、その不都合がわからないことには解決しないだろ」
「それがわからないから『不都合』という言葉を使ったんだよ」
「動機不明で処理しようか?」
「部長が許さないだろ」
「......あのさ、その『部長』って言葉を使わない方がいいよ」
「なんで?」
「三島と新田が文芸部の部員になったとき、俺が文芸部の部長になったからだ。三島と新田が混乱する」
「それもそうだな。これからは部長じゃなくて土方と呼ぼう」
「あの、私はかまいませんけど?」
「私も大丈夫です!」
「そうか? なら、部長のままだ」
「三島と新田がいいなら好きにしろ」
「話しを戻すぞ」
「動機の調査か?」
「そういうこと」
新島は床を拭いた雑巾を、バケツに投げ込んだ。
「よし。まずは第一倉庫の中にあったエアコンのスリーブ内を調べよう。プールには藻が浮いていたから、スリーブを使って水を抜いたなら藻が付着しているはずだ」
「そうだな。動機が不明でもトリックさえわかればどうってことはないな」
と、意見が一したので第一倉庫に向かうことになった。
「第一倉庫」高田は威風堂々としたたたずまいで、腰に手を当てた。「相変わらず、倉庫の中が汚い! ほこりっぽい」
「なら、マスクでもしておけ」
「マスクなんか持ってきてない」
「俺も、まさか第一倉庫に今日入るとは思わなかったからマスクは持ってきていない」
「だろうな。まあ、行くぞ!」
最初、新島は咳き込んだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。咳き込んだが、一人ではないからな」
「尾崎放哉(おざきほうさい)か。無季自由律俳句だっけ?」
「よく覚えているじゃないか。俺が好きな俳句は『ゆうべ底がぬけた柄杓(ひしゃく)で朝』だ。ちょっと面白いだろ? 添削はされているがな」
「何が面白い?」
「日常の些細なことをだな──」
「そういうのはいい。よし。スリーブを外すぞ」
「聞いておいて最低な野郎だな」
「そうか? 普通の中学生だ」
「まあ、許してやろう。で? スリーブの内側に藻は付着しているのか?」
「......。ふむ。微量だが、藻らしきものがところどころに付着しているぞ」
「ほとんどそのスリーブを使ったということで確定だな。普通に使っていたらスリーブの内側に藻は付着しないだろう......」
「じゃあ、次は動機探し?」
「そうだ。動機探しだ」
「動機佐賀市か」
「九州と関東じゃ離れすぎだ」
動機を知るために、第一倉庫を出た一行は校舎内の散策を始めた。A棟の屋上から順々に階下に下がっていき、一階に着くとB棟に移った。
「B棟に理科室があるだろ?」
「確かにあるが、高田は理科室が見たいのか?」
「理科室が嫌いなんだよ。悟れよ」
「なんで理科室が嫌いなんだ?」
「骨格標本とか虫の標本、生きた虫がはいった虫かごとかゲテモノが多く置いてあるだろ?」
「えっ! 高田......お前、ゲテモノ嫌いだったの!?」
「好きではある。中国言ったときに猿脳(えんのう)も食った。だが、虫と骨は駄目なんだよ」
「普通なら逆だぞ。猿の脳味噌シャーベットなんて、日本人は食えねーよ」
「いや、案外うまいぞ。あの見た目でな」
「見た目がクソだ」
「だけど、虫と骨は無理だ」
「諦めろ。理科室管理担当は外道虫大好き理科教員の榊原和仁(さかきばらかずひと)だ。理科室には虫と骸(むくろ)が並んでいる。昆虫やら動物やらの解剖など顔色一つ変えずにやってるからな、榊原は」
「なぜ倒置法......」
「強調したかったんだ」
「高田の嫌な顔、見たいな......。よし! 理科室を先に散策しに行くぞ!」
「なっ! テメェ!」
「まあまあ。アイマスクを貸してやる」
新島はポケットからアイマスクを一つ出して、高田に渡した。
「なんでアイマスクを持ってんだ?」
「文芸部の備品だよ」
「備品? ほぉ......」
「そう、備品だ。ダンボール箱に入った、かなり古い奴だ」
「古い奴でもいいから、アイマスクがあって助かるよ」
「行くぞ! 理科室!」
「やっぱり、新島は最低な奴だ! アイマスクのことで少しは見直したんだがな......」
「高田の眉間に皺を寄せた顔が面白いから仕方がない」
新島はわくわくして、裂けるほど口を緩めた。そして、スキップしながら理科室がある階まで向かった。
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