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七不思議の四番目、漏水の怪 その漆
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ちゃんとした目的がなければ、普段ならなかなか理科室には入れない。なぜならば、危険な薬品が多く置かれているからだ。だが理科室には、この時間帯なら榊原がいることが多い。榊原がいるのならば、理科室には入ることができる。
新島は理科室の扉をノックした。そして、榊原が顔を出した。理科室に榊原がいたことに、新島は安堵のため息をつく。
「どうした?」
「文芸部部長の新島です。ちょっと理科室の骨格標本を観察したいと思い、文芸部全員で来ました」
榊原自慢の骨格標本を見たいという生徒が四人も来たのだ。榊原はうれしくなって、理科室に大歓迎した。
「ひとつずつ丁寧に見ていくといいよ。ほら! あの骨の曲線! 美しいだろう? 綺麗だろう? 骨というのはだな、動物が死しても残るんだ。ロマンを感じるだろ? どうだ?」
「ええ。感じます。角張っておらず、可愛らしいですね」
新島は目を輝かせて、骨格標本を眺めた。彼は動物の、骨という最終形態に興味があるようだ。
高田はアイマスクをしていて、前が見えないから新島の肩につかまっていた。
「高田! 肩につかまるなよ」
「アイマスクをしているんだから仕方ないだろ!」
「あっ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 肩を強く握るなよ」
「仕返しだ」
「くそっ! アイマスク外してやるよ」
新島は高田の顔からアイマスクを剥ぎ取った。
「うあぁー! ゲテモノッ!」
「それほど驚かなくてもいいだろ......。大げさだな。死骸だけだぜ?」
「気持ち悪い」
「お前、猿脳食ったんだろ?」
「といっても、その猿の脳味噌シャーベットが入っている器は本物の猿の頭の中じゃなくて作り物の猿の頭だ」
「前に一度だけ画像を見たことがあるが、直視できないぞ? あんなに気色の悪い食べ物は」
「中国では重宝されているんだ」
「ここはチャイナじゃなくて、ジャパンだ。わかるか? JAPAN。NIPPON。日本。日本(ジャパン)だぞ!」
「日本で使われている漢字は、元は中国のだろ」
「それを言うなら、文字の起源はメソポタミア文明のシュメール人が絵文字使ったからだ」
「遡り過ぎだ! それに、メソポタミア文明もそうだが世界四大文明には中国の黄河文明も含まれている」
「殷の時代なら甲骨(こうこつ)文字だろ? 骨に文字を刻むとは論外だな。めんどうだろ」
「......日本の縄文時代では、土器に縄の文様を付けていただろ? あれこそ無駄だ。それに、弥生時代の名前の由来を知っているか? 東京都文京区弥生の向丘(むこうがおか)貝塚という場所から壺が出土した。その壺が使われていた時代が弥生時代なのだが、弥生という場所から出土したのが由来だぞ? 馬鹿だろ」
「文字関係ないじゃないか!」
「新島、お前意外と細かいな!」
「何だと!」
新島と高田の喧嘩を三島が呆れたように見物していた。
数十分して、二人は疲れたから喧嘩をやめた。両者とも息を切らしていた。
「で、新島?」
「ど......どうしたんだ? ハァハァ......」
「ああ」高田は声をひそめた。「七不思議の四番目の動機はわかったか?」
「理科室に手掛かりはなさそうだ」
「そうか。わかった」
高田はうなずいて、歩き出した。そして、足に何かが当たり、しゃがむ。そこには、虫かごがあった。中をよく見た。
「生きた虫だ!」
「おっ! 君はいいところに気づいたね」榊原は活き活きとした口調で話し始めた。「それはヤゴだよ。トンボに羽化させたくてね。あとは解剖か実験に使うんだ」
「か、解剖?」
「おっと。それ以上は言えないぞ。ハハハハハハ」
「ヤゴか」新島もしゃがんだ。「もしかすると、これが動機か?」
「どういうことだ?」
「この続きは部室で話そう」
四人は榊原にお礼をして、部室に戻っていった。
「さて。動機の件を話してもらおうか?」
「プールから水を抜いたのは榊原だろうな」
「何でだよ?」
「プールに溜まった雨水でヤゴを育てていたとかが、考えられるな」
「じゃあ、何でヤゴがいるのにプールから水を抜いたんだ?」
「育てていたヤゴを回収するためだろうな。プールの栓を抜いたら排水口にヤゴが流されてしまうから、仕方なくサイフォンの原理を利用してテニスコートに水を流した。あとは、流されてきたヤゴを回収すればいい」
「だったらなんでこっそりと育てていたんだ?」
「学校が公認していない可能性もあるが、多分学校は公認しているはずだ。生徒に言わなかったのは、ヤゴを使って非人道的な実験をするからだろう」
「そういうことか」
「それに藻が付着していたスリーブの付いたエアコンは、俺達が一年生の頃に理科室に設けられていたエアコンだ」
「確かに、言われてみればそうだ」
「ヤゴの時期は三月から八月。まあ、辻褄は合うだろ?」
「だな」
「そんで、トンボに羽化か」
「うっかり羽化したトンボを迂回しながら歩くんだな」
「洒落か。三連続は久々じゃないか?」
「久々だ」
七不思議の四番目の動機は、見当が付いた。新島は、今日の烏合の衆の会議は会食にしよう、と言い出した。
「なんで?」
「七不思議残り二つの祝いだ。その時に、高田から先輩に七不思議の四番目が解決したと発表しろ」
「了解」
「その会食の代金は俺が払う。だが、安いファミレスだからな」
「えー」
「奢ってやるだけありがたいと思えよっ!」
新島は椅子に座って、足を組んだ。三人も着席する。三島は本を開いて、新島の顔を見た。新島は視線に気づいて、三島の方を向く。彼と彼女は七秒ほど見つめ合った。
新島は理科室の扉をノックした。そして、榊原が顔を出した。理科室に榊原がいたことに、新島は安堵のため息をつく。
「どうした?」
「文芸部部長の新島です。ちょっと理科室の骨格標本を観察したいと思い、文芸部全員で来ました」
榊原自慢の骨格標本を見たいという生徒が四人も来たのだ。榊原はうれしくなって、理科室に大歓迎した。
「ひとつずつ丁寧に見ていくといいよ。ほら! あの骨の曲線! 美しいだろう? 綺麗だろう? 骨というのはだな、動物が死しても残るんだ。ロマンを感じるだろ? どうだ?」
「ええ。感じます。角張っておらず、可愛らしいですね」
新島は目を輝かせて、骨格標本を眺めた。彼は動物の、骨という最終形態に興味があるようだ。
高田はアイマスクをしていて、前が見えないから新島の肩につかまっていた。
「高田! 肩につかまるなよ」
「アイマスクをしているんだから仕方ないだろ!」
「あっ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 肩を強く握るなよ」
「仕返しだ」
「くそっ! アイマスク外してやるよ」
新島は高田の顔からアイマスクを剥ぎ取った。
「うあぁー! ゲテモノッ!」
「それほど驚かなくてもいいだろ......。大げさだな。死骸だけだぜ?」
「気持ち悪い」
「お前、猿脳食ったんだろ?」
「といっても、その猿の脳味噌シャーベットが入っている器は本物の猿の頭の中じゃなくて作り物の猿の頭だ」
「前に一度だけ画像を見たことがあるが、直視できないぞ? あんなに気色の悪い食べ物は」
「中国では重宝されているんだ」
「ここはチャイナじゃなくて、ジャパンだ。わかるか? JAPAN。NIPPON。日本。日本(ジャパン)だぞ!」
「日本で使われている漢字は、元は中国のだろ」
「それを言うなら、文字の起源はメソポタミア文明のシュメール人が絵文字使ったからだ」
「遡り過ぎだ! それに、メソポタミア文明もそうだが世界四大文明には中国の黄河文明も含まれている」
「殷の時代なら甲骨(こうこつ)文字だろ? 骨に文字を刻むとは論外だな。めんどうだろ」
「......日本の縄文時代では、土器に縄の文様を付けていただろ? あれこそ無駄だ。それに、弥生時代の名前の由来を知っているか? 東京都文京区弥生の向丘(むこうがおか)貝塚という場所から壺が出土した。その壺が使われていた時代が弥生時代なのだが、弥生という場所から出土したのが由来だぞ? 馬鹿だろ」
「文字関係ないじゃないか!」
「新島、お前意外と細かいな!」
「何だと!」
新島と高田の喧嘩を三島が呆れたように見物していた。
数十分して、二人は疲れたから喧嘩をやめた。両者とも息を切らしていた。
「で、新島?」
「ど......どうしたんだ? ハァハァ......」
「ああ」高田は声をひそめた。「七不思議の四番目の動機はわかったか?」
「理科室に手掛かりはなさそうだ」
「そうか。わかった」
高田はうなずいて、歩き出した。そして、足に何かが当たり、しゃがむ。そこには、虫かごがあった。中をよく見た。
「生きた虫だ!」
「おっ! 君はいいところに気づいたね」榊原は活き活きとした口調で話し始めた。「それはヤゴだよ。トンボに羽化させたくてね。あとは解剖か実験に使うんだ」
「か、解剖?」
「おっと。それ以上は言えないぞ。ハハハハハハ」
「ヤゴか」新島もしゃがんだ。「もしかすると、これが動機か?」
「どういうことだ?」
「この続きは部室で話そう」
四人は榊原にお礼をして、部室に戻っていった。
「さて。動機の件を話してもらおうか?」
「プールから水を抜いたのは榊原だろうな」
「何でだよ?」
「プールに溜まった雨水でヤゴを育てていたとかが、考えられるな」
「じゃあ、何でヤゴがいるのにプールから水を抜いたんだ?」
「育てていたヤゴを回収するためだろうな。プールの栓を抜いたら排水口にヤゴが流されてしまうから、仕方なくサイフォンの原理を利用してテニスコートに水を流した。あとは、流されてきたヤゴを回収すればいい」
「だったらなんでこっそりと育てていたんだ?」
「学校が公認していない可能性もあるが、多分学校は公認しているはずだ。生徒に言わなかったのは、ヤゴを使って非人道的な実験をするからだろう」
「そういうことか」
「それに藻が付着していたスリーブの付いたエアコンは、俺達が一年生の頃に理科室に設けられていたエアコンだ」
「確かに、言われてみればそうだ」
「ヤゴの時期は三月から八月。まあ、辻褄は合うだろ?」
「だな」
「そんで、トンボに羽化か」
「うっかり羽化したトンボを迂回しながら歩くんだな」
「洒落か。三連続は久々じゃないか?」
「久々だ」
七不思議の四番目の動機は、見当が付いた。新島は、今日の烏合の衆の会議は会食にしよう、と言い出した。
「なんで?」
「七不思議残り二つの祝いだ。その時に、高田から先輩に七不思議の四番目が解決したと発表しろ」
「了解」
「その会食の代金は俺が払う。だが、安いファミレスだからな」
「えー」
「奢ってやるだけありがたいと思えよっ!」
新島は椅子に座って、足を組んだ。三人も着席する。三島は本を開いて、新島の顔を見た。新島は視線に気づいて、三島の方を向く。彼と彼女は七秒ほど見つめ合った。
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