日常探偵団

髙橋朔也

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七不思議の五番目、物欲の怪 その壱

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 目は合っているが何も言ってこない三島にしびれを切らした新島は、声をかけた。
「どうしたんだ、三島? 何か用事か?」
「あ、いえ。何でもないです......」
「そうか。わかった」
 その後、特筆することは部室では起きなかった。一行はまず、新島の家に向かった。そこには土方がいて、土方を加えた五人は近くのファミリーレストランを探す。駅前に行くと、かなり空いているファミリーレストランがあったので入店した。
「お客様、何名様でしょうか?」
 という店員の問いに三島が答えていると、高田が小声で新島に話しかけた。
「何名様って、見ればわかるだろ?」
「あとから来る奴がいるかもしれないから、一応尋ねているんだろ。店の決まりなんじゃないか?」
「でもさ、女の子の前だとオラつきたいじゃん。だから、店員さんに『見りゃわかんだろ? あぁん?』って言いたいじゃん」
「語尾『じゃん』って言われても、わからん。それに、お前はそんな趣味があったのか?」
「ゴビ砂漠?」
「それは、モンゴルだ」
「サハラ砂漠?」
「確か......モロッコ、西サハラ、モーリタニア、アルジェリア、マリ共和国、ニジェール、チュニジア、リビア、チャド、エジプト、スーダンだったと思う」
「カイロ?」
「エジプトの首都だよ。三つとも熱そうだな」
「そうそう。さっき部長が言ってたけど、七不思議の五番目がわかったってよ」
「マジ?」
「マジらしい」
「どんなの?」
「食ってるときに話すってさ」
「お前も、ちゃんと解決したって言えよ」
「何度も聞いたよ。はいはい......」
 高田はうんざりしたような顔で、苦笑した。
 やがて店員が空いている席まで案内した。なぜか、店員のお辞儀をする時の笑みが、薄っぺらく感じられる。
「学校外で、卒業生に聞いて回っていたら七不思議の五番目が判明した」
「ちょうど、俺達も七不思議の四番目を解決したところだ。説明は高田がする」
「聞かせてくれ」
「......っと」高田はポケットから手帳を落とした。それを拾って、読み上げた。「犯人は理科教員の榊原と他少人数。動機はヤゴの回収。栓を抜いて排水口に流れないように、テニスコートに流してヤゴを回収したっす」
「どうやってテニスコートに流したんだ?」
「サイフォンの原理というものを利用して、エアコンのスリーブでプールから水を抜いてたっす」
 高田は土方に、サイフォンの原理の細かい説明をした。
「そんなトリックで水を抜いていたのか」
「で、先輩が知り得た七不思議の五番目の概要を教えてもらおうか」
「ふむ、よかろう。七不思議の五番目は、今までで一番くだらないものだった」
「くだらない?」
「そう。非常にくだらない。ある特定の日に、八坂中学校のひとつのクラスの生徒の大半が腹を下した」
「それは、くだらない」
「しかも、次に大勢が腹を下したクラスは前回の隣り。その次に大勢が腹を下したクラスは前回の隣り。みたいに、どんどん大勢が腹を下すクラスが移動していたんだ。そして、腹を下した生徒は必ず給食の牛乳を二本以上飲んでいる」
「本当にくだらないな。今回のは特に」
「私が思うに、牛乳に何か混ぜられていたんじゃないか?」
「何かって、何?」
「牛乳を飲みたくなる薬みたいな、単純に物欲が強くなったとかかな?」
「どちらにしろ、先に動機から調べてみよう。だが、今日は七不思議残り二つのお祝いだ。楽しもう」
 料理を注文し、雑談を始めた。

 次の日、新島は学校で上の空だった。授業中もぼーっとしていて、窓の外ばかり見ていた。
 休み時間に、高田は気になって新島の肩を叩いた。
「元気ないな、新島!」
「七不思議の五番目のことを考えていたんだ」
「あんなくだらない話しをずっと考えていたのか?」
「くだらないが、そのトリックが気になってるんだ」
「最近、お前謎解きに積極的になったな」
「......興味が湧いただけだ」
「本当か?」
「本当だよ」
「ずっと考えていたが、何かわかった?」
「全然まったくわからん」
「そいつは面白いな」
「喧嘩売ってんのか?」
「それ以外に何を売っているように見えるんだ?」
「媚び?」
「お前こそ喧嘩売ってんのか?」
「それ以外に何を売っているように見えるんだ?」
「俺のこと、完全に馬鹿にしてるな?」
「ああ。当然」新島は腕を組んだ。「で、動機として考えられる事柄がひとつある」
「何だ?」
「毎日の給食の時の牛乳の残本数を減らすことだ。一日で牛乳二本以上飲む奴は限られていて、牛乳ってかなり残ってるからな。残っていた牛乳は廃棄される。それが嫌だから、牛乳二本以上飲ませるためにやったのかもしれない」
「ちょっとインパクトが弱いな。そんな動機で、普通はやるか?」
「だろ? 多分そんな甘い動機ではないと思う。だから、悩んでいるんだ」
「おっ! もう休み時間終わりだ。失礼」
 高田は時計を見て、新島から離れていった。新島はそんな彼を見て、冷やかしにきたのか、とつぶやいた。
 チャイムが鳴り、教室に教員が入ってきた。その教員は教卓に教科書を置いて、右手で白色のチョークを持つ。そして、そのチョークを、黒板の上に走らせて文字を書いていった。
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