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七不思議の六番目、幽霊の怪 その壱
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「私が卒業生からちまちまと聞いて、やっと最後の六番目を突き止めた。六番目はなんか、七不思議っぽい。THE・七不思議って漢字だな。音楽室だ」
「音楽室?」
「そうだ。音楽室。B棟五階端に位置する辺境の部屋、音楽室だ。あそこは人もあまり通らないし、音もほとんどしない。静寂がうるさくなる耳鳴りが、あそこならしょっちゅう聞こえるわけだ。その音楽室で、幽霊が現れるらしいんだな」
「幽霊? 枯れ尾花じゃなくて?」
「幽霊の正体見たり枯れ尾花、か?」
「そう、それだ」
「残念! 枯れ尾花じゃなくて、話しを効いた限りではマジモンの幽霊っぽいぞ」
「マジモン?」
「音楽室から何かが倒れて落ちるような物音が聞こえて、確かめるために音楽室に入ったんだってさ。そしたら、本が床に散乱していた。音楽室には誰もいなかったそうだ。そして、ふと壁に掛けられた絵画に目を向ける。シューベルトの肖像画だ。そんでもって、眼球が動いたというテンプレ。音楽室から逃げだしたところで辺りは真っ暗になっていたらしい。急いで学校から出ようとすると、特別棟近くで青い何かを見たんだ」
「そんなの簡単な話しだ。音楽室のとごか、とりわけピアノの下にでも人が隠れていたのなら説明はつく」
「目撃者はちゃんと音楽室を歩いて見回った。だが、人はいなかった。それに、ベランダはなく隣りの部屋の窓までの距離は離れていて飛び移ることもできない。そもそも窓にはちゃんと鍵が掛かっていたことも確認したらしい。出入り口は目撃者が音楽室に入った扉以外にはなし。これは完璧な密室だった」
「密室......。ストーカー事件に次いで二度目の密室事件だぞ」
「で、シューベルトの肖像画の目が動いたことに納得のいく説明はつくのか?」
「音楽室と隣りの部屋の間には人が入れる広さの空間があったとする。その空間から、目の部分をくり抜いた肖像画を介して音楽室を見ていたとすれば首尾はいい」
「なるほど。目と絵画は別で、絵画の後ろに隠れていた奴が絵画を介して目を動かしたから、絵画の目が動いていると目撃者が誤認したということだな」
「そう。まずは明日学校に行って音楽室を確かめてみようか」
「待てよ。特別棟の幽霊はどうなるんだ?」
「先輩こそ待て。俺達は安楽椅子探偵じゃない。現場検証が一番だ。続きは明日にしよう」
「明日から? 新島、今日からだろ。八坂中学校に忍び込むぞ」
「えっ? マジ?」
「夜にでも忍び込もう。忍び込むのは慣れているはずだ。それが学校になっただけだ」
「やるか、侵入」
現在は午後三時。五人は八坂市中央図書館を飛び出して、バスに乗りこんだ。
──二時間後
八坂中学校正門にて、文芸部部員五人は正門横のフェンスをよじ登って校内に侵入した。自らの足で、B棟の前まで行くと新島は手に握ったガムテープを窓全体に貼っていった。そして、その窓を殴った。窓は割れるが破片は落ちないから、音は出ない。そのまま、ガムテープを剥がして校舎内に踏み入った。
四人はすんなりと窓から入れたが、新田は足の長さが足りずにあたふたしていた。新島は近くにあった脚立を取って、新田に渡した。
「ありがとうございます」
「おう。早く入れよ」
新田は脚立を使ってやっと入ることが出来た。
階段を、足音をたてずに勢いよく登っていった。午後五時だから、教職員もまだいるのだ。五階に着くと、奥まで歩いて音楽室の扉の前に立った。すると、『ガシャンッ!』という物音が音楽室から聞こえた。全員が一斉に音楽室に入った。
「誰もいない!」
高田が放った言葉に、一同が恐怖を覚えた。そう、音楽室には人影がない。新島はシューベルトの肖像画の前までつかつかと歩いて行き、目潰しをしてみた。
「ふむ。俺が言ったような細工はないようだ。それに、壁を叩いてみると奥に空間はなさそうだ」
「だろ? 私の言った通りだ。他のトリックを考えた方がいいな。だって、壁の中から絵画を介して見ているなんてコメディ色が強すぎる」
「結構いいトリックだと思ったんだがな......」
「全然良くない。コメディ色が強いんだよ」
「だよな。次は音楽室をどうやって荒らしたか。考えたら単純だろうな。事前に荒らしておいて、あとは物音を録音した物を流したか程度だろう」
「あの音が録音とは思えないけどな」
「問題は動く目だ。このトリックはすぐには思いつかないな。あとは実際に動く目を見てみたいな」
「無理だろ。そんな都合よくいったら面白くない」
「っていうか、加湿器がうざいな。顔に当たって濡れる!」
「仕方ない。四月といえどまだ寒いからな」
そんな話しをしていると、三島が驚いたような顔をしてシューベルトの肖像画を指差した。新島、土方、高田、新田も絵画を見た。黒目が下に下がっていった。そう、まさに目が動いたのだ。先に音楽室を出たのは高田だ。鳥肌をたてて、体を震えさせていたのだ。その後、芋づる式に他四人も音楽室を逃げだした。
五人が正門に辿り着くまえに特別棟近くの幽霊を見たのはくわしく説明しなくてもいいだろう。
「音楽室?」
「そうだ。音楽室。B棟五階端に位置する辺境の部屋、音楽室だ。あそこは人もあまり通らないし、音もほとんどしない。静寂がうるさくなる耳鳴りが、あそこならしょっちゅう聞こえるわけだ。その音楽室で、幽霊が現れるらしいんだな」
「幽霊? 枯れ尾花じゃなくて?」
「幽霊の正体見たり枯れ尾花、か?」
「そう、それだ」
「残念! 枯れ尾花じゃなくて、話しを効いた限りではマジモンの幽霊っぽいぞ」
「マジモン?」
「音楽室から何かが倒れて落ちるような物音が聞こえて、確かめるために音楽室に入ったんだってさ。そしたら、本が床に散乱していた。音楽室には誰もいなかったそうだ。そして、ふと壁に掛けられた絵画に目を向ける。シューベルトの肖像画だ。そんでもって、眼球が動いたというテンプレ。音楽室から逃げだしたところで辺りは真っ暗になっていたらしい。急いで学校から出ようとすると、特別棟近くで青い何かを見たんだ」
「そんなの簡単な話しだ。音楽室のとごか、とりわけピアノの下にでも人が隠れていたのなら説明はつく」
「目撃者はちゃんと音楽室を歩いて見回った。だが、人はいなかった。それに、ベランダはなく隣りの部屋の窓までの距離は離れていて飛び移ることもできない。そもそも窓にはちゃんと鍵が掛かっていたことも確認したらしい。出入り口は目撃者が音楽室に入った扉以外にはなし。これは完璧な密室だった」
「密室......。ストーカー事件に次いで二度目の密室事件だぞ」
「で、シューベルトの肖像画の目が動いたことに納得のいく説明はつくのか?」
「音楽室と隣りの部屋の間には人が入れる広さの空間があったとする。その空間から、目の部分をくり抜いた肖像画を介して音楽室を見ていたとすれば首尾はいい」
「なるほど。目と絵画は別で、絵画の後ろに隠れていた奴が絵画を介して目を動かしたから、絵画の目が動いていると目撃者が誤認したということだな」
「そう。まずは明日学校に行って音楽室を確かめてみようか」
「待てよ。特別棟の幽霊はどうなるんだ?」
「先輩こそ待て。俺達は安楽椅子探偵じゃない。現場検証が一番だ。続きは明日にしよう」
「明日から? 新島、今日からだろ。八坂中学校に忍び込むぞ」
「えっ? マジ?」
「夜にでも忍び込もう。忍び込むのは慣れているはずだ。それが学校になっただけだ」
「やるか、侵入」
現在は午後三時。五人は八坂市中央図書館を飛び出して、バスに乗りこんだ。
──二時間後
八坂中学校正門にて、文芸部部員五人は正門横のフェンスをよじ登って校内に侵入した。自らの足で、B棟の前まで行くと新島は手に握ったガムテープを窓全体に貼っていった。そして、その窓を殴った。窓は割れるが破片は落ちないから、音は出ない。そのまま、ガムテープを剥がして校舎内に踏み入った。
四人はすんなりと窓から入れたが、新田は足の長さが足りずにあたふたしていた。新島は近くにあった脚立を取って、新田に渡した。
「ありがとうございます」
「おう。早く入れよ」
新田は脚立を使ってやっと入ることが出来た。
階段を、足音をたてずに勢いよく登っていった。午後五時だから、教職員もまだいるのだ。五階に着くと、奥まで歩いて音楽室の扉の前に立った。すると、『ガシャンッ!』という物音が音楽室から聞こえた。全員が一斉に音楽室に入った。
「誰もいない!」
高田が放った言葉に、一同が恐怖を覚えた。そう、音楽室には人影がない。新島はシューベルトの肖像画の前までつかつかと歩いて行き、目潰しをしてみた。
「ふむ。俺が言ったような細工はないようだ。それに、壁を叩いてみると奥に空間はなさそうだ」
「だろ? 私の言った通りだ。他のトリックを考えた方がいいな。だって、壁の中から絵画を介して見ているなんてコメディ色が強すぎる」
「結構いいトリックだと思ったんだがな......」
「全然良くない。コメディ色が強いんだよ」
「だよな。次は音楽室をどうやって荒らしたか。考えたら単純だろうな。事前に荒らしておいて、あとは物音を録音した物を流したか程度だろう」
「あの音が録音とは思えないけどな」
「問題は動く目だ。このトリックはすぐには思いつかないな。あとは実際に動く目を見てみたいな」
「無理だろ。そんな都合よくいったら面白くない」
「っていうか、加湿器がうざいな。顔に当たって濡れる!」
「仕方ない。四月といえどまだ寒いからな」
そんな話しをしていると、三島が驚いたような顔をしてシューベルトの肖像画を指差した。新島、土方、高田、新田も絵画を見た。黒目が下に下がっていった。そう、まさに目が動いたのだ。先に音楽室を出たのは高田だ。鳥肌をたてて、体を震えさせていたのだ。その後、芋づる式に他四人も音楽室を逃げだした。
五人が正門に辿り着くまえに特別棟近くの幽霊を見たのはくわしく説明しなくてもいいだろう。
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