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02 舞踏会の報せ
それから、気がついたらウイリアム様個人から婚約破棄の申し込みをされていた。
どうやら、私と接していくうちに期待が高まり、「実はとても美しいから隠しているのでは」と思ってしまったらしい。
あのマリーの姉なのだから、と……。
そうしたら、実際は冴えない容姿で落胆したようだ。
何とも迷惑なお話ね。
お父様はそれを許可し、……どうやら資金援助をバッサリと立ち切ったようだ。
ナゲル子爵家の方からは『息子が勝手に言ったこと』と異議申し立てがあったようだけど、お父様は聞く耳を持たなかった。
結果、ナゲル子爵家は立ち行かなくなり没落したと聞く。
……一時は「彼とならば」と婚約を望んだ方だというのに、その報せを受けても心ひとつ揺らがなかった私は、きっと薄情者なんでしょう。
「約立たずのお前を貰ってくれるなら、と期待していたが……やはり、その醜さでは無理があったか」
そう告げる、お父様の瞳は、とても冷たかった。
お父様は、私とウイリアム様の婚約を、祝福してくれていた。とても嬉しそうに、祝ってくださっていた。
嬉しかったの。
私も愛されてるんだと、そう思っていたの。
──なんて、愚かなのだろう。
王子様が迎えに来てくれるお姫様は、決まって美人。
着飾らなくても、お化粧なんてしなくても美しい女性しか、お姫様には選ばれない。
醜いアヒルの子は、白鳥になんてなれはしない。
そんな当たり前のことを学んだ、18のよく晴れた夏の日の事だった。
***
「舞踏会……、ですか」
「ああ。用意をしておくように」
「かしこまりました」
そんなことから1年。私はお父様から呼び出され、舞踏会へ参加するように告げられた。
私が参加しても、笑いものになるだけでしょうに……。
お父様としても、醜く仮面なんてしている私はなるべく公の場に出したくないらしいけど……そうすればそうしたで、色々と言われるものらしい。
それに、マリーは私と違い、マナーなどのお稽古にあまり力を入れてないのだ。
美しく、まだ16という可憐な乙女であるマリーには求婚が耐えない。
マナーや将来女主人となるための勉強もお父様はさせているけど……どうにも苦手らしく、サボりがちと聞く。
それでも、美しい自慢の娘に、お父様は甘いから何も言われていないけれど……。
どうしても、『何故』と思ってしまう。
ほんの少しマナー講師に怒られただけで、学園のテストで100点ではなかったというだけで、私は烈火のごとく怒られたのに。
──羨ましい。
そう、思ってしまう。
お父様の執務室から出て、自室へと戻る。
その途中の廊下で、中庭からの楽しそうな笑い声が聞こえて思わずそちらを見た。
そこには、マリーがいた。
色とりどりの花の中、学友だという数人の殿方に囲まれるマリーは、まるで薔薇の妖精かのよう。
人目を引く美しさを持つ彼女の周りには、常に人が絶えない。
学友という殿方達も、彼女に恋をしているのだろう。頬を染め、マリーの気を引こうと必死だ。
「……いいなぁ」
私も、誰かにあんなふうに……好意を向けられてみたい。
思わず分不相応なことを呟いてしまい、緩く頭を振って歩き出す。
眩しい陽の光に包まれた中庭を見た後の眼には、廊下はどうにも薄暗く見えてしまった。
「マリー、どうかしたのかい?」
「……いいえ、なんでもないわ」
私が歩きだした後。
私がいた窓を見つめるマリーがいた事なんて、知る由もなかった。
どうやら、私と接していくうちに期待が高まり、「実はとても美しいから隠しているのでは」と思ってしまったらしい。
あのマリーの姉なのだから、と……。
そうしたら、実際は冴えない容姿で落胆したようだ。
何とも迷惑なお話ね。
お父様はそれを許可し、……どうやら資金援助をバッサリと立ち切ったようだ。
ナゲル子爵家の方からは『息子が勝手に言ったこと』と異議申し立てがあったようだけど、お父様は聞く耳を持たなかった。
結果、ナゲル子爵家は立ち行かなくなり没落したと聞く。
……一時は「彼とならば」と婚約を望んだ方だというのに、その報せを受けても心ひとつ揺らがなかった私は、きっと薄情者なんでしょう。
「約立たずのお前を貰ってくれるなら、と期待していたが……やはり、その醜さでは無理があったか」
そう告げる、お父様の瞳は、とても冷たかった。
お父様は、私とウイリアム様の婚約を、祝福してくれていた。とても嬉しそうに、祝ってくださっていた。
嬉しかったの。
私も愛されてるんだと、そう思っていたの。
──なんて、愚かなのだろう。
王子様が迎えに来てくれるお姫様は、決まって美人。
着飾らなくても、お化粧なんてしなくても美しい女性しか、お姫様には選ばれない。
醜いアヒルの子は、白鳥になんてなれはしない。
そんな当たり前のことを学んだ、18のよく晴れた夏の日の事だった。
***
「舞踏会……、ですか」
「ああ。用意をしておくように」
「かしこまりました」
そんなことから1年。私はお父様から呼び出され、舞踏会へ参加するように告げられた。
私が参加しても、笑いものになるだけでしょうに……。
お父様としても、醜く仮面なんてしている私はなるべく公の場に出したくないらしいけど……そうすればそうしたで、色々と言われるものらしい。
それに、マリーは私と違い、マナーなどのお稽古にあまり力を入れてないのだ。
美しく、まだ16という可憐な乙女であるマリーには求婚が耐えない。
マナーや将来女主人となるための勉強もお父様はさせているけど……どうにも苦手らしく、サボりがちと聞く。
それでも、美しい自慢の娘に、お父様は甘いから何も言われていないけれど……。
どうしても、『何故』と思ってしまう。
ほんの少しマナー講師に怒られただけで、学園のテストで100点ではなかったというだけで、私は烈火のごとく怒られたのに。
──羨ましい。
そう、思ってしまう。
お父様の執務室から出て、自室へと戻る。
その途中の廊下で、中庭からの楽しそうな笑い声が聞こえて思わずそちらを見た。
そこには、マリーがいた。
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人目を引く美しさを持つ彼女の周りには、常に人が絶えない。
学友という殿方達も、彼女に恋をしているのだろう。頬を染め、マリーの気を引こうと必死だ。
「……いいなぁ」
私も、誰かにあんなふうに……好意を向けられてみたい。
思わず分不相応なことを呟いてしまい、緩く頭を振って歩き出す。
眩しい陽の光に包まれた中庭を見た後の眼には、廊下はどうにも薄暗く見えてしまった。
「マリー、どうかしたのかい?」
「……いいえ、なんでもないわ」
私が歩きだした後。
私がいた窓を見つめるマリーがいた事なんて、知る由もなかった。
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