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04 それはまるで御伽噺のような②
「……マリー」
「なあに? 今の。お姉様、身の程知らずにも程があるんじゃない?」
いつの間にかシェリー義母様との挨拶巡りも終わったらしいマリーが、そこにはいた。
豪華なドレスをたなびかせ、周りにはご学友というたくさんの令息令嬢を従えている。そのほとんどが、婚約者同士だったはずだ。
……まあ、マリーに恋をしている、所謂フリーの令息も中にはいらっしゃるようだけど。
その方々も、全員見目麗しく、令嬢は皆豪華で華やかなドレスに身を包んでいる。
……よく言えば品の良い、シンプルで淡い色合いのドレスを着た自分がなんだかみすぼらしく思えて、自然と体が縮こまる。
マリー達は、そんな私を取り囲み、扇で口元を隠してくすくすと笑いだした。
傍から見れば、紳士淑女の談笑にしか見えないだろう。
何せ、マリーは『心優しい美少女』として有名なのだから。
「あの方、イアン皇子の側近のアルバート殿だろう?」
「ああ、クリス侯爵家の……」
「まあ、そんなお方が『仮面令嬢』様と?」
言外に『お前とは釣り合わない』と言われ、顔に熱が集まる。
別に、あの方に……アルバート様に期待をしていた訳では無い。
ほんの少しかけられた優しさに、救われていただけなのに。
──その優しさを甘受することも、身の程知らずだというの?
「……声をかけてくださったから、お礼を返しただけよ」
「は? お姉様なんかにアルバート様が声をかけるはずないじゃない。妄想も大概にしなさいよ」
「マリー、お元気なのは良いけれど、少しお転婆がすぎるんじゃないかしら。はしたないわ」
「っ……!! お姉様のくせに……!!」
『声が大きいわよ。恥ずかしいわ』をオブラートに包んだ言い方だったんだけど、マリーには伝わったのかしら。
……多分伝わってないんでしょうね。
ただ、『褒め言葉ではない』とは分かったらしい。
つかつかとマリーがこちらに歩いてくる。
そして──……
「きゃあっ! 足が滑っちゃったわ。ごめんなさい、お姉様……!」
──カラァン。
マリーが、足を滑らせた。
その時体勢を崩し、行き場を失った彼女の手が、私の仮面を結ぶ紐へと偶然伸びる。
鈴を転がすようなマリーの高い声と、床に物が落ちた乾いた音はよく響く。
周りがざわめき、こちらに視線が集まるのが嫌でもわかった。
「………っ!!」
「ごめんなさい、お姉様! 転びかけた時に手がかすってしまって……お怪我はない? お顔をみせて?」
咄嗟に顔を手で覆い隠し、座り込む。
けれど、マリーはそんな私を気にかける言葉を連ねながら、その手を退かせようと腕を強く掴んでくる。
マリーのご学友の中には、我がアルフ侯爵家よりも地位の高い、公爵家のご令嬢もいらっしゃる。
本当なら、今すぐここを走り去ってしまいたいけれど……気位の高い方の前でそんなことをすればどうなるか。少しでも教養があれば想像着くことだ。
逃げることは出来ない。
庇ってくれる人もいない。
助けてくれる人もいない。
皆、『仮面令嬢』の素顔が見れるかもと、この見世物を面白そうに見ているだけだ。
マリーに掴まれた腕が痛い。
爪も刺さっている。
取り囲む令息令嬢達から、クスクスと嗤う声が降り注いでくる。
私用に誂えて貰ったドレスは少ないからと、大事に大事に使っていた、綺麗なクリーム色のドレスも座り込んだせいで汚れてしまった。
──なぜ、こんな目に合わなければならないの?
恥ずかしさと、悔しさ。
私を嘲笑う令嬢達はみんな美しく、傍らには麗しい婚約者を連れている。
そして、彼女達に囲まれ、1人座り込む自分。
とても、とても自分が惨めで、情けなくて──視界が滲んで来た、その時だった。
「お嬢さん、すいません」
ヘラりとした、軽やかな声が聞こえた。
「なあに? 今の。お姉様、身の程知らずにも程があるんじゃない?」
いつの間にかシェリー義母様との挨拶巡りも終わったらしいマリーが、そこにはいた。
豪華なドレスをたなびかせ、周りにはご学友というたくさんの令息令嬢を従えている。そのほとんどが、婚約者同士だったはずだ。
……まあ、マリーに恋をしている、所謂フリーの令息も中にはいらっしゃるようだけど。
その方々も、全員見目麗しく、令嬢は皆豪華で華やかなドレスに身を包んでいる。
……よく言えば品の良い、シンプルで淡い色合いのドレスを着た自分がなんだかみすぼらしく思えて、自然と体が縮こまる。
マリー達は、そんな私を取り囲み、扇で口元を隠してくすくすと笑いだした。
傍から見れば、紳士淑女の談笑にしか見えないだろう。
何せ、マリーは『心優しい美少女』として有名なのだから。
「あの方、イアン皇子の側近のアルバート殿だろう?」
「ああ、クリス侯爵家の……」
「まあ、そんなお方が『仮面令嬢』様と?」
言外に『お前とは釣り合わない』と言われ、顔に熱が集まる。
別に、あの方に……アルバート様に期待をしていた訳では無い。
ほんの少しかけられた優しさに、救われていただけなのに。
──その優しさを甘受することも、身の程知らずだというの?
「……声をかけてくださったから、お礼を返しただけよ」
「は? お姉様なんかにアルバート様が声をかけるはずないじゃない。妄想も大概にしなさいよ」
「マリー、お元気なのは良いけれど、少しお転婆がすぎるんじゃないかしら。はしたないわ」
「っ……!! お姉様のくせに……!!」
『声が大きいわよ。恥ずかしいわ』をオブラートに包んだ言い方だったんだけど、マリーには伝わったのかしら。
……多分伝わってないんでしょうね。
ただ、『褒め言葉ではない』とは分かったらしい。
つかつかとマリーがこちらに歩いてくる。
そして──……
「きゃあっ! 足が滑っちゃったわ。ごめんなさい、お姉様……!」
──カラァン。
マリーが、足を滑らせた。
その時体勢を崩し、行き場を失った彼女の手が、私の仮面を結ぶ紐へと偶然伸びる。
鈴を転がすようなマリーの高い声と、床に物が落ちた乾いた音はよく響く。
周りがざわめき、こちらに視線が集まるのが嫌でもわかった。
「………っ!!」
「ごめんなさい、お姉様! 転びかけた時に手がかすってしまって……お怪我はない? お顔をみせて?」
咄嗟に顔を手で覆い隠し、座り込む。
けれど、マリーはそんな私を気にかける言葉を連ねながら、その手を退かせようと腕を強く掴んでくる。
マリーのご学友の中には、我がアルフ侯爵家よりも地位の高い、公爵家のご令嬢もいらっしゃる。
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「お嬢さん、すいません」
ヘラりとした、軽やかな声が聞こえた。
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