地味という理由で勇者パーティを追放されたので、私の考える最強パーティを作って追い抜いてやろうと思います。

こゆき

文字の大きさ
9 / 10
2章 レベ上げとパーティ結成

09

しおりを挟む
 修行が始まり、1週間。
 
「やった、『勇者』……!!」
 
 ついに、ライルの職業が『勇者』へとランクアップした。
 
 
 
「おめでとうございます。ライル、あなたは本当に素晴らしいですね」
 
 拍手と共に、素直に賛辞の言葉を送る。
 マガミも私の横でしっぽをぶんぶん振って祝ってくれているようだ。やだ可愛い。
 
 いやあ、凄い。まさか本当に『勇者』になれるとは。
 さすがはマガミが認めた存在だ。
 
 確かに、『加護持ち』は『勇者』になれる素質がある。
 だが、だからと言って全員が『勇者』になれるか、と言われたら話は別だ。
 
 もちろん、ここで『勇者』へなれなくとも方法はいくらでもあったので問題はなかった。
 が、手っ取り早く済むならそれが何より、というものだ。
 
「ナギ!!」
「きゃあっ!」
 
 己の育成結果に、1人うんうんと頷いていたら、ライルに勢いよく抱きつかれる。
 驚いてそのまま倒れてしまったが、ライルが抱き寄せてくれてるおかげで痛みはない。びっくりした、大型犬が飛びついてきたかと思った……。
 
「ナギ、ナギ……!」
「ちょ、どうしたんですか、ライル……」
「ありがとう……!!」
「!」
 
 お礼を告げるライルの声は、震えていた。
 それもそうだ。『元奴隷』だったライルにとって、自分が『勇者』になる、なんて。
 きっと思ってもなかった事だろう。
 
 ──仕方ないなあ。
 
 今は、濡れる肩にも、震える身体も。全部見ないふりをしてあげよう。
 私はライルのやわらかな黒髪を、優しく撫でた。
 
 
 ***
 
 
「マガミ、お世話になりました」
「ありがとうございましたッ!」
『久しい友と、我が眷属のためだ。構わんよ』
 
 目標を達成した私達は、もうマガミの住む聖域に居続ける必要がない。
 元々、神獣が住まう聖域という場所はあまり長くいていい所でもない。
 
 私とライルは、並んでマガミへと頭を下げお礼を伝えていた。
 
『……もう暫くここに居てもよいのだぞ?』
「とても、とてもとても魅力的ですが……行かなければならないので」
『……そうか』
 
 ああっ、そんな尻尾を丸めて「きゅぅん」なんて鳴かないでっ!!
 あからさまにしょんぼりしてます、というような体制を取られると、私の鋼の理性も揺らいでしまう。
 
 ライルから「こいつマジか」というような顔を向けられるけど、知らない気付かない分からない。
 私は動物に弱いんです!!
 
 もう一度マガミに抱きつき、その頭をわしゃわしゃと撫で回す。
 
「マガミ、私も寂しいです」
『……ふふ、それが聞けただけで良しとしよう。ナギ、私の友。稀なる道を辿った人の子よ』
 
 ご機嫌がなおったらしいマガミは、私の頬をペロリと舐めた。
 ああっ、帰りたくない……!!
 
 また遊びにきますね!!
 と大きな声で宣言し、私達はマガミの聖域を後にした。
 
 
 
 ナギ達が去った後。
 マガミは1人、湖のほとりで空を見上げた。
 思うは、己の友と生き残りの黒き眷属の事。
 
『お前は本当に慌ただしいな、ナギ。
 
 
 ──白澤の弟子よ』
 
 
 彼の呟きは、小鳥だけが聞いていた。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

領主になったので女を殴って何が悪いってやつには出て行ってもらいます

富士とまと
ファンタジー
男尊女子が激しい国で、嫌がらせで辺境の村の領主魔法爵エリザ。虐げられる女性のために立ち上がり、村を発展させ改革し、独立しちゃおうかな。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...