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2章 レベ上げとパーティ結成
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修行が始まり、1週間。
「やった、『勇者』……!!」
ついに、ライルの職業が『勇者』へとランクアップした。
「おめでとうございます。ライル、あなたは本当に素晴らしいですね」
拍手と共に、素直に賛辞の言葉を送る。
マガミも私の横でしっぽをぶんぶん振って祝ってくれているようだ。やだ可愛い。
いやあ、凄い。まさか本当に『勇者』になれるとは。
さすがはマガミが認めた存在だ。
確かに、『加護持ち』は『勇者』になれる素質がある。
だが、だからと言って全員が『勇者』になれるか、と言われたら話は別だ。
もちろん、ここで『勇者』へなれなくとも方法はいくらでもあったので問題はなかった。
が、手っ取り早く済むならそれが何より、というものだ。
「ナギ!!」
「きゃあっ!」
己の育成結果に、1人うんうんと頷いていたら、ライルに勢いよく抱きつかれる。
驚いてそのまま倒れてしまったが、ライルが抱き寄せてくれてるおかげで痛みはない。びっくりした、大型犬が飛びついてきたかと思った……。
「ナギ、ナギ……!」
「ちょ、どうしたんですか、ライル……」
「ありがとう……!!」
「!」
お礼を告げるライルの声は、震えていた。
それもそうだ。『元奴隷』だったライルにとって、自分が『勇者』になる、なんて。
きっと思ってもなかった事だろう。
──仕方ないなあ。
今は、濡れる肩にも、震える身体も。全部見ないふりをしてあげよう。
私はライルのやわらかな黒髪を、優しく撫でた。
***
「マガミ、お世話になりました」
「ありがとうございましたッ!」
『久しい友と、我が眷属のためだ。構わんよ』
目標を達成した私達は、もうマガミの住む聖域に居続ける必要がない。
元々、神獣が住まう聖域という場所はあまり長くいていい所でもない。
私とライルは、並んでマガミへと頭を下げお礼を伝えていた。
『……もう暫くここに居てもよいのだぞ?』
「とても、とてもとても魅力的ですが……行かなければならないので」
『……そうか』
ああっ、そんな尻尾を丸めて「きゅぅん」なんて鳴かないでっ!!
あからさまにしょんぼりしてます、というような体制を取られると、私の鋼の理性も揺らいでしまう。
ライルから「こいつマジか」というような顔を向けられるけど、知らない気付かない分からない。
私は動物に弱いんです!!
もう一度マガミに抱きつき、その頭をわしゃわしゃと撫で回す。
「マガミ、私も寂しいです」
『……ふふ、それが聞けただけで良しとしよう。ナギ、私の友。稀なる道を辿った人の子よ』
ご機嫌がなおったらしいマガミは、私の頬をペロリと舐めた。
ああっ、帰りたくない……!!
また遊びにきますね!!
と大きな声で宣言し、私達はマガミの聖域を後にした。
ナギ達が去った後。
マガミは1人、湖のほとりで空を見上げた。
思うは、己の友と生き残りの黒き眷属の事。
『お前は本当に慌ただしいな、ナギ。
──白澤の弟子よ』
彼の呟きは、小鳥だけが聞いていた。
「やった、『勇者』……!!」
ついに、ライルの職業が『勇者』へとランクアップした。
「おめでとうございます。ライル、あなたは本当に素晴らしいですね」
拍手と共に、素直に賛辞の言葉を送る。
マガミも私の横でしっぽをぶんぶん振って祝ってくれているようだ。やだ可愛い。
いやあ、凄い。まさか本当に『勇者』になれるとは。
さすがはマガミが認めた存在だ。
確かに、『加護持ち』は『勇者』になれる素質がある。
だが、だからと言って全員が『勇者』になれるか、と言われたら話は別だ。
もちろん、ここで『勇者』へなれなくとも方法はいくらでもあったので問題はなかった。
が、手っ取り早く済むならそれが何より、というものだ。
「ナギ!!」
「きゃあっ!」
己の育成結果に、1人うんうんと頷いていたら、ライルに勢いよく抱きつかれる。
驚いてそのまま倒れてしまったが、ライルが抱き寄せてくれてるおかげで痛みはない。びっくりした、大型犬が飛びついてきたかと思った……。
「ナギ、ナギ……!」
「ちょ、どうしたんですか、ライル……」
「ありがとう……!!」
「!」
お礼を告げるライルの声は、震えていた。
それもそうだ。『元奴隷』だったライルにとって、自分が『勇者』になる、なんて。
きっと思ってもなかった事だろう。
──仕方ないなあ。
今は、濡れる肩にも、震える身体も。全部見ないふりをしてあげよう。
私はライルのやわらかな黒髪を、優しく撫でた。
***
「マガミ、お世話になりました」
「ありがとうございましたッ!」
『久しい友と、我が眷属のためだ。構わんよ』
目標を達成した私達は、もうマガミの住む聖域に居続ける必要がない。
元々、神獣が住まう聖域という場所はあまり長くいていい所でもない。
私とライルは、並んでマガミへと頭を下げお礼を伝えていた。
『……もう暫くここに居てもよいのだぞ?』
「とても、とてもとても魅力的ですが……行かなければならないので」
『……そうか』
ああっ、そんな尻尾を丸めて「きゅぅん」なんて鳴かないでっ!!
あからさまにしょんぼりしてます、というような体制を取られると、私の鋼の理性も揺らいでしまう。
ライルから「こいつマジか」というような顔を向けられるけど、知らない気付かない分からない。
私は動物に弱いんです!!
もう一度マガミに抱きつき、その頭をわしゃわしゃと撫で回す。
「マガミ、私も寂しいです」
『……ふふ、それが聞けただけで良しとしよう。ナギ、私の友。稀なる道を辿った人の子よ』
ご機嫌がなおったらしいマガミは、私の頬をペロリと舐めた。
ああっ、帰りたくない……!!
また遊びにきますね!!
と大きな声で宣言し、私達はマガミの聖域を後にした。
ナギ達が去った後。
マガミは1人、湖のほとりで空を見上げた。
思うは、己の友と生き残りの黒き眷属の事。
『お前は本当に慌ただしいな、ナギ。
──白澤の弟子よ』
彼の呟きは、小鳥だけが聞いていた。
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