【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき

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01 前世の私

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私が一体、何をしたと言うのだろう。

空気が足りず、ぼんやりとした頭はそんなことばかりを考えてしまう。
呼吸をするのも痛くて、浅い息しか出来なくて、前はあんなに苦しかったのに。
今はそんな苦痛さえも分からなくなっていた。

私は、ライラック公爵家の長女として。リーゼッヒ王国の王太子婚約者として。清く正しく生きてきた、つもりだった。
王太子であるアレン様とも幼少期から仲睦まじく、お互いがお互いを望み、将来を約束していた。
両親も、国王夫妻も、お互いの婚約を祝福してくれていた。
ああ、なんて優しい記憶だろう。

──……もう、二度と手に入らない記憶だというのに、こんなにも暖かい。

いつからだろう。歯車が狂いだしたのは。
それは、……ああ、そうだ。彼女が、学園に入学してきてからだ。

彼女──『現王太子婚約者』である、リリィ・マーガレット様。

男爵家の御令嬢であるリリィ様は、お身体が弱く中途入学をなされたのをよく覚えている。
通常、入学が遅れた場合は学年を1つ送らせ、1学年から入学するものだけれど……リリィ様はとても優秀で、編入という形で私達と同学年に入学なさった。

そして、彼女とアレン様の仲が急激に縮まったのもその頃からだ。


──私が、リリィ様を虐めていると言われ始めたのも。


私は何もしていなかった。
何もするはずがなかった。 
アレン様はお優しいから、お身体の弱く、婚約者もおらず頼りになる殿方がいないリリィ様を気にかけておられたのをよく知っていた。
そんなお優しいアレン様が、大好きだった。

だから、嫉妬なんてするはずがないのに。
アレン様も、私に説明をしてくれていたから、尚のこと。
なのに、周りは『嫉妬に狂ったライラック令嬢がマーガレット令嬢を虐めている』という。

何度も弁明した。
何度も違うと訴えた。

──けれど、けれど。
……誰も、私の言葉を信じてはくれなかった。

お友達も。先生も。両親も。国王夫妻も。
……アレン様も。

そして、私は婚約破棄を告げられ、隣国の王太子へと嫁がされた。
同盟の証の結婚、という建前を元に。
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