赤色の伝説

DREAM MAKER

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旅立ち

3。

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気が付いたら冷たい地下牢にいた。
僕の荷物はすべて取られ、何も残っていなかった。
ただラクナスだけはとっさにマントの下に潜り隠れたらしく、気づかれずに済んだらしい。
実際ラクナスがマントの下から出てきた時はすごくびっくりしてしまったが・・・。
僕はラクナスを撫でながら、
「これからどうしよっか・・・」
もちろんラクナスは聞いてない。撫でている手に気持ちよさそうにうとろんでいるだけだった。
本当にこれからどうしよう。本来の目的も消え去ってしまって・・・。
その時。

「誰?誰かいるの?」
落ち込んでいる僕に、僕の前の地下牢から話しかけられた。他にも誰かいたらしい。
暗闇の中で影がごそりと動く。
はっきり言って怖い。
この暗い地下牢の中で頼れる光は鉄格子の外側に掲げられている一本の松明だけだった。
だからその光が届く範囲内に出てきてもらわなくては姿さえも見えない。
そのうち僕自身の眼も暗闇に慣れて、更に相手も光の範囲内に出てきてくれた事もあって、僕達はお互いの姿を確かめた。
女性!?
頭に全身の血がのぼった様な気がした。
「あら、坊や。あなたも何かしたの?」
ぼ・・・・・。
「あのー・・・。僕、坊やじゃなくてちゃんとロムルっていう名前があるんですよー・・・」
いじけ気味にそう呟くと、
「あら、ごめんなさい。だってなんか幼いから」
童顔だから幼く見えちゃうのかな・・・。一応15歳なんだけど・・・。
でも目の前の女性に比べればそれは仕方ないかもしれない。どう見ても22、23歳くらいの人だしなあ。
彼女はこげ茶色の髪に綺麗な碧眼だった。
僕の眼の色は・・・暗闇の中じゃ判断しにくい色だろう。
「あなたは瞳が藍色なのね。珍しいわ」
「え?」
僕が驚いているのに彼女は得意げににこにこしている。
「ど、どうして分かったんです?」
「目が良い方だからよ」
それだってねえ・・・。
「それよりここからなんとか抜け出さない?このままじゃ私達殺されちゃうわ」
「殺・・・」
―すまでいくのかな?
「ここの裁判官はなんでか戦士隊長に頭が上がらないらしいし・・・」
殺されるなあ。そりゃ僕は確実に。
「で、ここを出たいんだけどあなた針金か何か持っている?」
僕は首を横に振る。彼女はため息をついた。
「どうしよっかー」
僕はラクナスに話しかける。ラクナスはさっきから僕の肩のところでずっと眼を閉じていたので眠っているように見えたのだが。

いきなり扉に向かって火を吹いた。
「わぁっ!」
僕の声が冷たい廊下の中に広がる。
「何?どうしたの?」
彼女は心配して鉄格子に張り付いてきた。
「い、いや。何でもない・・・」
さっきのは幻だったのか・・・。彼女さえラクナスの火を目撃していない。
が、当のラクナスは僕の袖に噛みつきながらしきりに引っ張り扉の方に連れて行こうとする。
「な、なんだよラクナス。何かあるの?言っとくけど扉は開かないよ。ほら、こう押しても・・・っ!!」
開くはずのない扉が僕の体重に押されていとも簡単に開く。その勢いで僕は地面に突っ伏した。
「ねえ。こっちの方も開けてくれません?」
彼女が大丈夫?の意も含めて僕を恐る恐る見下ろす。
「・・・・・・ハイ」
地面に突っ伏したまま僕はそう答えた。


足音が地下牢にいやに響いてしまう。これではすぐに気づかれてしまうかもしれない。
ここの地下牢はいやに広い。が、入っている人は僕達以外見かけなかった。
途中後ろの方で兵士の声が聞こえた。
どうやら僕らが逃げたのがばれたらしい。
「がんばって。もうあと少しで上に出れるわ」
不思議な事は、彼女の足がとても速い事だ。そしてまるで走っていないかのように足音を立たせない。
「光よ」
正面に光が見えてきた。
が、それを塞ぐものがあった。
「こんなところにも鉄格子が・・・」
「ラクナス。何とかならないか?」
また目をつぶっている。今度はかなり長い。
そうこうしているうちに
「ロムル、後ろ!」
遥か向こうから十数人の兵士の足音。
「ラクナス!!」
僕は必死に叫んだ。ラクナスはまだ目を閉じたまま動かない。
「どうしよう」
彼女が青ざめている。兵士の姿がうっすらと見えてきた。
こうなったら一か八かやるしかない。
「ロムル?」
彼女が僕の方を不安気に見る。
もう少し兵士が近づいてくれると嬉しい。
「ロムル!危険だわ!捕まっちゃう!!」
彼女が顔に手を当て、もう駄目というように目をつぶる。

もういいだろう。
手に光球を作り、僕は叫ぶ。
「いけ!氷竜!!」
途端に光球の中から氷の竜が飛び出し、兵士達に喰いかかる。
叫ぶ間もなく喰われた兵士達はどんどん凍っていく。
一瞬にして兵士達の氷漬けが出来上がってしまった。
「・・・すごい。魔法使いだったのね」
「うん。でもまだ氷と炎の魔法しか扱えないんだけどね」
そうこうしていたらラクナスが突然火を吹いた。
と、見る間に鉄格子が砂に変わってゆく。
「今のうちだ!」

僕達は光の方へ飛び出していった。

「あれ?」
外は全く知らないところだった。
街中ではない。
「ここ、城内だわ」
よくよく見るといやに整えられている木々。それに僕達のすぐ横には白い壁。
「早く逃げ出さないと・・・」
彼女は慌てながら逃げ道を探していた。
でも城内にそんな簡単な抜け道があるんだろうか?
「あ、あそこがいいわね」
そう言って彼女が指さした場所は、端に植えられた木々の奥にある数メートルの城壁。

うえ・・・。

どーやって上れってゆーの。
困った顔をしている僕に彼女が、
「とりあえずあそこまで行きましょう」
と言った。

幸いな事に僕達は誰にも見つからず無事に壁の方に来れた。
それもそのはずである。
さっきは余りにも近すぎて分からなかったが、あの白い壁は城の裏側にあたる部分だったのである。
警備が手薄なのも分かる。
「さて・・・・」
彼女が上を見上げる。
さっきは遠くから見たせいか、さほど高く見えなかったが、いざ近くで見ると・・・・高い。
僕はただ呆然と見上げていたが、彼女は隣で
「これくらいならなんとかなりそうね。そこの木に足をかけて・・・。うん。じゃ、行くわよ」
何やら自分で納得して、自分で実行に移そうとしている。
どうやらこの壁を本気で上るらしい。
「本当に上るんですか?だってあなたはドレス着ちゃっているし・・・」
本当に上れるんだろうか?彼女の服装はどう見ても木登り用には向いてない。
どこかいいトコのお嬢様のような恰好である。
が。
彼女はそんな恰好お構いなく猫のようにするりと壁を越えてしまった。
僕はあっけにとられていたが、後ろからさっきの魔法が解けた兵士が地下から出てき始めたので、死にもの狂いで何とか上りきった。
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