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第183話 分かり合う
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「ヘンデル様、顔を上げてください」
ミューズは優しく声を掛ける。
「確かに過去には色々ありましたが、ディエスお父様もリリュシーヌお母様も怒ってなどいませんでしたよ。寧ろ感謝をしていました。血の繋がりがなくともヘンデル様は私に優しくしてくれて、そして王女として何不自由なく育て上げてくれた。父と母の分も含めて私からもお礼を言わせてください。今まで本当にありがとうございました」
頭を深々と下げる。
「私にとってはヘンデル様も大事なお父様です。良いことをすれば褒めてくれて、悪いことをすれば叱ってくれて、病気の時には本心から心配してくれる……たくさんの思い出が今でも浮かんできますわ」
ミューズは笑顔でヘンデルを見る。
「寧ろヘンデル様の方がもう私を娘として見てくれないのかと心配でした。そしてお兄様や妹達も、私の事を家族として見てくれないのかとも」
「そんな事はない!」
ヘンデルは慌てて否定する。
「例え何があろうとミューズは私達の大事な家族で娘だ。もしも離縁するような事があればすぐに戻ってこれるようにと、部屋もそのままだし準備もしている」
「離縁などしませんが?」
うっかり言った言葉にティタンの方が反応を示した。
不快感は表わしたもののそれ以上は言葉を続けない、それを見てフロイドはほっと胸を撫でおろし、思いを口にする。
「ミューズ、俺にとってお前はずっと大事な妹で家族だ。誰が何と言おうがそれは変わることはない。だから遠慮せずに好きなように遊びに来てくれ、いつでも歓迎するよ」
「私も国民もお前を大切に思っている。許されるならば、また変わらずにお父様と呼んでもらいたい。リリュシーヌの忘れ形見、というのもあるが娘としてミューズ自身を愛している」
「お兄様、お父様」
温かい言葉にミューズの胸は熱くなる。
「私も二人の事が大好きですわ。アドガルムが落ち着いたら、またゆっくり遊びに来ます。絶対に」
大好きな家族がいるこの国にまた来ようとミューズは誓う。
「その時はティタン様も一緒に来ていただけますか?」
そっと隣を見ると、ティタンは優しい眼差しでミューズを見つめていた。
「あぁ。また一緒にこの国に来よう。約束する」
今回も短い訪問になってしまったが次回はゆっくりと来られるように手配しようと思った。
今度こそ平和が訪れたことを祈って。
その後ティタンとミューズはシェスタ国とパルス国を回ってくる。
それぞれ目立った被害はないが、王太子達が好意的な様子を見せてくれ、歓迎ムードであった。
そして異国に立て続けに訪問するという事の大変さを痛感する。
「リオンは本当に凄いな」
失礼のない態度や話題などティタンにはなじみのない事である。
今回は気心のしれた友好的な者達だったからよかったが、そうでない場合、ティタンでは上手くかわせる自信がなかった。
パルス国のヴィルヘルム国王はともかく、シェスタ国のゼラスィード国王は敵意、とまでは行かないものの刺々しい態度であった。
ミューズとセシル、そしてグウィエンが間に入っていなかったら、暴れるところであった。
「やはり俺にはこういうのは向いていないな」
人には向き不向きがある、自分には剣を振っている方が性に合うと改めて思った。
「リオンは大丈夫であろうか?」
帝国の次期皇帝としてなど、その重責は自分以上に大変なはずだ。
きっとリオンには出来ると思っているが、だからと言って心配しないわけではない。
(忙しいだろうにこんな気遣いまで寄こして)
それは諸外国に行く際に気を付けることについてをまとめた手紙であった。
シェスタは暑い国だから、通気性が良くて、そして肌の露出が少ない服がいいと言われたり。パルス国には見栄えのいい贈り物が好まれるとか、細かく書いてくれていた。
ティタンが外交に慣れないであろうことはしっているので、色々な準備をしていてくれたようだ。
忙しくともきめ細かい気遣いを送ってくれる出来た弟だと感心してしまう。
ミューズは優しく声を掛ける。
「確かに過去には色々ありましたが、ディエスお父様もリリュシーヌお母様も怒ってなどいませんでしたよ。寧ろ感謝をしていました。血の繋がりがなくともヘンデル様は私に優しくしてくれて、そして王女として何不自由なく育て上げてくれた。父と母の分も含めて私からもお礼を言わせてください。今まで本当にありがとうございました」
頭を深々と下げる。
「私にとってはヘンデル様も大事なお父様です。良いことをすれば褒めてくれて、悪いことをすれば叱ってくれて、病気の時には本心から心配してくれる……たくさんの思い出が今でも浮かんできますわ」
ミューズは笑顔でヘンデルを見る。
「寧ろヘンデル様の方がもう私を娘として見てくれないのかと心配でした。そしてお兄様や妹達も、私の事を家族として見てくれないのかとも」
「そんな事はない!」
ヘンデルは慌てて否定する。
「例え何があろうとミューズは私達の大事な家族で娘だ。もしも離縁するような事があればすぐに戻ってこれるようにと、部屋もそのままだし準備もしている」
「離縁などしませんが?」
うっかり言った言葉にティタンの方が反応を示した。
不快感は表わしたもののそれ以上は言葉を続けない、それを見てフロイドはほっと胸を撫でおろし、思いを口にする。
「ミューズ、俺にとってお前はずっと大事な妹で家族だ。誰が何と言おうがそれは変わることはない。だから遠慮せずに好きなように遊びに来てくれ、いつでも歓迎するよ」
「私も国民もお前を大切に思っている。許されるならば、また変わらずにお父様と呼んでもらいたい。リリュシーヌの忘れ形見、というのもあるが娘としてミューズ自身を愛している」
「お兄様、お父様」
温かい言葉にミューズの胸は熱くなる。
「私も二人の事が大好きですわ。アドガルムが落ち着いたら、またゆっくり遊びに来ます。絶対に」
大好きな家族がいるこの国にまた来ようとミューズは誓う。
「その時はティタン様も一緒に来ていただけますか?」
そっと隣を見ると、ティタンは優しい眼差しでミューズを見つめていた。
「あぁ。また一緒にこの国に来よう。約束する」
今回も短い訪問になってしまったが次回はゆっくりと来られるように手配しようと思った。
今度こそ平和が訪れたことを祈って。
その後ティタンとミューズはシェスタ国とパルス国を回ってくる。
それぞれ目立った被害はないが、王太子達が好意的な様子を見せてくれ、歓迎ムードであった。
そして異国に立て続けに訪問するという事の大変さを痛感する。
「リオンは本当に凄いな」
失礼のない態度や話題などティタンにはなじみのない事である。
今回は気心のしれた友好的な者達だったからよかったが、そうでない場合、ティタンでは上手くかわせる自信がなかった。
パルス国のヴィルヘルム国王はともかく、シェスタ国のゼラスィード国王は敵意、とまでは行かないものの刺々しい態度であった。
ミューズとセシル、そしてグウィエンが間に入っていなかったら、暴れるところであった。
「やはり俺にはこういうのは向いていないな」
人には向き不向きがある、自分には剣を振っている方が性に合うと改めて思った。
「リオンは大丈夫であろうか?」
帝国の次期皇帝としてなど、その重責は自分以上に大変なはずだ。
きっとリオンには出来ると思っているが、だからと言って心配しないわけではない。
(忙しいだろうにこんな気遣いまで寄こして)
それは諸外国に行く際に気を付けることについてをまとめた手紙であった。
シェスタは暑い国だから、通気性が良くて、そして肌の露出が少ない服がいいと言われたり。パルス国には見栄えのいい贈り物が好まれるとか、細かく書いてくれていた。
ティタンが外交に慣れないであろうことはしっているので、色々な準備をしていてくれたようだ。
忙しくともきめ細かい気遣いを送ってくれる出来た弟だと感心してしまう。
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