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断罪

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「ラーラを連れてきました」
両国の話し合いの場で、アドガルムの一団は捕らえたラーラと、人身売買に関わった男共をリンドールに突き出した。

ラーラの転移魔法により逃してしまったハインツだけはどうしても見つからず、所在不明のまま断罪が始まる。

ミハイラス伯爵とベリト子爵の証言。

麻薬の使用、密売、その売上資金を大臣に横流しし、便宜を図っていたこと。

ラーラの証言と、人身売買のアジトに残っていた書類から、ラドンの関与が濃厚になった。

「嘘だ…嘘だ」
ラドンはまさかの事態に呆けていた。

探り当てられるとは思っていなかったようだ。

特にラーラは転移魔法の使い手だ、何かあればすぐに逃げられるし、捕まるなんて事はないはずだった。

ラーラは大臣の関与を詳細に、そして素直に証言し、ハインツについても知ってる限り応えてくれた。

「顔に、騙されました……あんなに美しい男性に言い寄られのは初めてだったの、それがこんな事に……」
ポロポロとラーラは涙を流していた。

ハインツや売られた人達の転移先はナ=バークの街だと言われ、すぐさま捜索隊が組まれ、派遣された。

売られた者達は見つかったが、ハインツだけは見つけることが出来なかった。

無事にディエスの冤罪は解かれ、大臣の処刑が決定する。

人身売買に関わった者達も処刑が決まったが、そちらは実行されなかった。

ラーラを含め皆、牢の中で焼死体となって発見されたからだ。







「一体ハインツ様はどちらへ行ったのでしょう……」

まだごたついており、全てが解決したわけではないが、レナンはリンドールにいた。

ハインツにひと言言うため、今回の断罪劇にレナンも顔を出す予定であったからだ。

しかし、当のハインツはラーラの転移魔法で行方知らずとなってしまったので、レナンはそのままリンドールにあるロキの別邸にて、お世話になっていたのである。

冤罪から開放されたディエスだが、代わりに大臣が投獄されたり、帰る屋敷が無くなったので、暫しリンドールに力を貸す事にした。

勿論恨みは募っているが、手を貸すかわりにリンドールへの移住権をと望み、それを叶えるためだけに仕事をし始めた。

夜にはこちらに帰ってくるので、レナンも喜んで滞在している。

ロキからの許しも得て、エリックも滞在し、レナンを側で支えていた。

「よろしくお願いいたしますね、ディエス殿」
と、エリックが新たな婚約者になってから初めての挨拶を交わす。

ディエスは顔を引き攣らせ、怒鳴り声を上げそうになっていたが、リリュシーヌの口添えで何とか耐えた。

自分が投獄されているうちに大事な娘に新たな婚約者が出来たなんてと、父親として気が気でなかったらしい。

レナンを誑かしたのではないかと内心心配だったのだ。

だが、レナンが心から慕っている様子や、エリックもレナンを大事にしているのを見て安心したようで、あれからは何も言っていない。

まだエリックとまともに話をする時間がないのもあるが。

「ディエス殿が落ち着いたら、しっかりと話をしよう」
ディエスの頭は毎日パンクしそうな程稼働してる。

リンドールの内政の事、アドガルムへの移住の事、娘の結婚話の事など。

レナンに続き、ミューズの婚約の話を出した時は流石に卒倒した。

これ以上負担をかけるのはまずいと保留されている。

投獄されていた事に加え、過労と心労で今にも寝込んでしまいそうな顔色をしていた。

そんなディエスをリリュシーヌが懸命に支えている。

アドガルムでの家族での新しい生活のため、力を合わせ頑張っていた。

手伝おうと言うレナンとエリックの言葉をリリュシーヌは断った。

「あなた方はこれからの事を考えなさい、未来ある若者なんだから」
と、二人で過ごすようにと勧められてしまった。

リリュシーヌの言葉に甘え、ゆったりと話をしたり、ティータイムを二人で過ごす。

レナンは、もうすぐ離れてしまうリンドールでの一日一日を大事に思っていた。

冤罪は晴らせたが、まだまだ大手を振ってリンドールを歩くことが出来ない為、ロキの別邸の庭を散策することが多かった。

ロキは薔薇が好きだそうで、特に裏庭には様々な種類の薔薇が咲いている。







「少し二人にしてくれ、何かあれば呼ぶ」
お茶のセットだけしてもらうと、ニコラやキュアを下がらせた。

静かで穏やかな空間。

レナンは笑顔で薔薇を見つめ、そんなレナンをエリックは微笑みを浮かべ、見つめていた。

「今度アドガルムに戻る時は家族一緒だな」

「はい」
ようやくレナンの心からの笑顔を見ることが出来て、エリックは安心する。

アドガルムに居るときも笑顔を見せてくれていたが、やはり父親の安否が気になるのか、どこか不安が残っていた。

アドガルムに戻れば残してきた仕事に追われるだろうが、ディエスの冤罪も晴れ、レナンが安心したならばそれでいいと思った。

国に残っているティタンやリオンが分担して行なってくれているそうだが、あまり頼みすぎても気が引ける。

だが、まだいくつか問題が残っているので、もう少しだけ二人にはお世話になりそうだ。

肌がピリピリする感覚に、エリックが口の端をあげた。

「…来たな」


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