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第5話 鷹の国 婚約者
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「お互いに話しに行き違いがあったようだが、誤解ではあろう。ともあれ人命救助とは、偉いぞエリック」
「……ありがとうございます」
心にもない言葉を吐き、その後はアルフレッドの言葉に従う。
(個人の感傷よりも政治的にいい方を取るか。まぁ末席の王女の事など大事ではないからな)
小事を捨てて大事を取る父の言葉も正しい。
本来であればエリックもそうしていた。
だが、犠牲になる女性はエリックにとってけして捨て置けない人だ。
(俺を舐めるなよ)
エリックは仄暗い目で話を聞くばかりだ。
婚約者同士で話を、となって二人きりの時間を設けられる。
エリックは興味もないと言わんばかりの態度だが、ヘルガは高揚していた。
こんなに人形のように美しい男性の妻となり、しかも将来は王妃だ。
あまり心の内を見せない為、冷たく氷のような性格をだとは聞いたが、話をしたり二人で過ごせば心変わりもするだろう。
この婚約は大事なものだし、彼もそれを理解しているようで、レナンの件もあれからは口にせず、婚約の話は滞りなく進んだ。
些細なことなど誰も気にも留めない。ファルケの国王すらもエリックの話を流していた。
王妃になる日が待ち遠しいとつい口元が綻ぶ。
「エリック様。あなたのような美しく強い方と婚約を結ぶことが出来、とても幸せです」
「そうか」
エリックは視線をヘルガに向けることなく、興味ないとばかりに目を伏せていた。
紅茶にも焼き菓子にも手を付けることはなく、ただ時を過ぎるのを待っているようだ。
「もしやお疲れでしょうか? 魔獣を退治するとはとても大変な事ですよね。ですがエリック様に怪我がなくて良かったです。もしかしたら本日会う事が適わなかったかもしれませんし」
「……その方が良かったかもな」
ぼそりとそう呟いての再びの沈黙だ。
控えている侍女や侍従たちがはらはらと二人を見つめている。
「あのエリック様、何かお怒りですか?」
その言葉に眉間に皺が寄る。
「何もないお思いですか? ならば察しが悪いとしか言えませんね」
「もしやレナンの事ですか? 申し訳ないです、今度はあのような粗相はさせないようにきつく言いつけておきますからね。全く、勝手に離れてあのような目に合うだなんて、つくづくあの子はパロマのお荷物だわ……」
エリックは怒りを抑えようとして、止めた。
「命を張った実の妹に対してその言葉か……虫唾が走る」
エリックから極めて冷たい声が漏れる。
「お前を愛する気はないし、手を出すつもりもない」
形ばかりの婚姻を示唆される。
「両国の関係性を保つためのものだ。それ以上の意味はないのだからそれで充分であろう」
ヘルガは焦る。そのような薄い立場では、何かあった時に自分の身を守れない。
パロマの後ろ盾では弱いし、第一王女とはいえ他国の王族に嫁ぐのでなければ、どこかの貴族の元へと嫁がねばならない。
「しかし世継ぎは必要でしょう。まさか側室を持つおつもりですか?」
ファルケではそのような制度はないと聞いていた。
それに王妃として君臨するなら、子がいなくては盤石の地位を築けない。
「ないわけではない。三年子がなければ側室を持つことは構わないからな」
今まで側室も持つような事がなかっただけだ。
「三年は長いな。その前にいろいろな波乱があるかもしれない」
言葉にはしないが、殺意の籠った視線がヘルガへと向けられる。
「まぁ杞憂に過ぎないが、気を付けて過ごしてくれよ婚約者殿。あぁ妹君の事はくれぐれも大事にな」
ヘルガはガタガタと体を震わせて、頷くしか出来なかった。
「……ありがとうございます」
心にもない言葉を吐き、その後はアルフレッドの言葉に従う。
(個人の感傷よりも政治的にいい方を取るか。まぁ末席の王女の事など大事ではないからな)
小事を捨てて大事を取る父の言葉も正しい。
本来であればエリックもそうしていた。
だが、犠牲になる女性はエリックにとってけして捨て置けない人だ。
(俺を舐めるなよ)
エリックは仄暗い目で話を聞くばかりだ。
婚約者同士で話を、となって二人きりの時間を設けられる。
エリックは興味もないと言わんばかりの態度だが、ヘルガは高揚していた。
こんなに人形のように美しい男性の妻となり、しかも将来は王妃だ。
あまり心の内を見せない為、冷たく氷のような性格をだとは聞いたが、話をしたり二人で過ごせば心変わりもするだろう。
この婚約は大事なものだし、彼もそれを理解しているようで、レナンの件もあれからは口にせず、婚約の話は滞りなく進んだ。
些細なことなど誰も気にも留めない。ファルケの国王すらもエリックの話を流していた。
王妃になる日が待ち遠しいとつい口元が綻ぶ。
「エリック様。あなたのような美しく強い方と婚約を結ぶことが出来、とても幸せです」
「そうか」
エリックは視線をヘルガに向けることなく、興味ないとばかりに目を伏せていた。
紅茶にも焼き菓子にも手を付けることはなく、ただ時を過ぎるのを待っているようだ。
「もしやお疲れでしょうか? 魔獣を退治するとはとても大変な事ですよね。ですがエリック様に怪我がなくて良かったです。もしかしたら本日会う事が適わなかったかもしれませんし」
「……その方が良かったかもな」
ぼそりとそう呟いての再びの沈黙だ。
控えている侍女や侍従たちがはらはらと二人を見つめている。
「あのエリック様、何かお怒りですか?」
その言葉に眉間に皺が寄る。
「何もないお思いですか? ならば察しが悪いとしか言えませんね」
「もしやレナンの事ですか? 申し訳ないです、今度はあのような粗相はさせないようにきつく言いつけておきますからね。全く、勝手に離れてあのような目に合うだなんて、つくづくあの子はパロマのお荷物だわ……」
エリックは怒りを抑えようとして、止めた。
「命を張った実の妹に対してその言葉か……虫唾が走る」
エリックから極めて冷たい声が漏れる。
「お前を愛する気はないし、手を出すつもりもない」
形ばかりの婚姻を示唆される。
「両国の関係性を保つためのものだ。それ以上の意味はないのだからそれで充分であろう」
ヘルガは焦る。そのような薄い立場では、何かあった時に自分の身を守れない。
パロマの後ろ盾では弱いし、第一王女とはいえ他国の王族に嫁ぐのでなければ、どこかの貴族の元へと嫁がねばならない。
「しかし世継ぎは必要でしょう。まさか側室を持つおつもりですか?」
ファルケではそのような制度はないと聞いていた。
それに王妃として君臨するなら、子がいなくては盤石の地位を築けない。
「ないわけではない。三年子がなければ側室を持つことは構わないからな」
今まで側室も持つような事がなかっただけだ。
「三年は長いな。その前にいろいろな波乱があるかもしれない」
言葉にはしないが、殺意の籠った視線がヘルガへと向けられる。
「まぁ杞憂に過ぎないが、気を付けて過ごしてくれよ婚約者殿。あぁ妹君の事はくれぐれも大事にな」
ヘルガはガタガタと体を震わせて、頷くしか出来なかった。
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