【本編完結】獣人国での異種族婚

しろねこ。

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第24話 獅子の国 ずっと一緒に

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 それからはあっという間に婚姻の場を整えられた。

 色々と理由を述べてお断りをしようとしたのだが、ティタンどころかレーヴェ国の王も受け入れてくれなかった。

 タニア達が起こした暴行未遂についても謝罪され、レーヴェ国が全面的に悪いとし、ミューズを責めることはなかった。そして責任をとるという事で婚姻を是非にと望まれる。

 最後の砦、と思ったミューズの父コニーリオの国王も、娘をすぐに迎えに行かなかった事に後ろめたさがあったためか、特に異議申し立てもなく、円滑に話が進められた。

(きっとレーヴェ国が婚姻の費用を出すと言ったからだわ)
 コニーリオの国王は悪い人ではない。ただお金が無いため、資金を出すと言われると弱い。

「やけにあっさりなんだな」
 その話を聞いてティタンが苦笑したのを見た時は、少し恥ずかしかった。

「……コニーリオはお金がないので、私を引き取りにと名乗り出れなかったのだと思います。言えば滞在費や医療費の請求が来るかと思ったのでしょう。このように支度金を出してくれると言ってもらえたからすんなりと話に応じたのかと思います。寧ろこのような大金をもらえると知ったら、早い段階で喜んで売り渡したでしょう」
 さすがに目に見えて変なところには送られないだろうが、他のお金のある国に同じことを言われたら、言われるがままに婚姻が結ばれたかもしれない。

 それを思えばティタンとの結婚を了承したことは良かったのかも。好きな人と結ばれるなんて何と幸せな事か。

「ミューズを売りに出すだと?」

「言葉のあやですわ。さすがにそのような事はされませんよ」
 多分。いや、どうだろう。

「……それにしても何故コニーリオは、その、お金がないのだ?」
 歯切れの悪い言葉を発するティタンは眉を寄せてミューズに聞いた。

 正直コニーリオの財力面が弱くなければもっと話は混雑を極めただろうとも思う。
 弱みに付け込んだようで悪いがティタンとしては拗れることなく話が進んで助かった。

 だがこれからは妻の母国として大事にしなければならない。今までのように弱いままでは心配だ。

「コニーリオは他国との販路が開くのが不得手なのです。もともと臆病で、体力もなく、戦う力を持たない者達が多いですから。できるのは薬草の栽培や薬の調合です」
 後は足が速いとか、耳が良いとか、そういうものだ。

「それはすごいな、薬なんて繊細な作業がいるだろう。レーヴェの民はそう言うのが苦手なものが多くてな」
 そのような細かくて同じような作業に向き合うのが性に合わない。

 体を動かしたり、魔獣を倒した方がいいと、狩りをしたり家畜を育てることを収入源としている。

 そういう国民性だと知っていたから、ミューズは危険を冒してこの国に薬を売りに来たのだ。

 コニーリオで作った薬はレーヴェにあるものよりも質も効能もいい。

 だからミューズがコニーリオの者であるだけで薬が売れる。もちろん手を抜くようなことはせず、しっかりと心を込めて作ってはいた。
 そこに更に治癒の力を乗せていたのだから、尚更効きがいい。

「もし良ければ、ここで薬作りをさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
 恐る恐るそう話す。

 こんなにもお世話になって、しかも大金まで出してもらった。
 一生かけて働いても、全部は返せないかもしれないが、少しでも報いたい。

 こんな自分を選んでくれたのだから。

「本当か? それは助かるが、無理には良いのだぞ?」
 申し訳なさそうにするその表情にミューズは微笑む。

「無理などではありません。ティタン様の為ならばいくらでもお役に立ちたいのです」
 必要とされるのは単純に嬉しいし、真っすぐに好意を示してくれるティタンの為に何かをしたいのだ。

「ありがとう」
 そっとためらいがちにティタンは手を差し出した。

 あの温室の件でミューズは他人に触られることが苦手になった為、触れたいのだが、どうしても遠慮が出てしまう。

 ティタンの心配そうな顔を見つつもミューズはゆっくりと手を伸ばす。

「こちらこそありがとうございます」
 ほんの少しずつだけれど距離を詰めることが出来てきた。

 ティタンはミューズの事を汚いとは言わないし、胸の内を聞いても面倒くさそうな顔もせずに真摯に受け止めてくれたからだ。

「ミューズが平気になるまでは俺から触れることは出来るだけ避ける。でもまた、近くにいることが出来たら嬉しい」
 そう言われ、少しずつ少しずつ歩み寄っていた。

(ティタン様になら触れられても大丈夫な気がする……)
 段々と気持ちに変化も出てきたし、ティタンはやはり他の人と違う。

 好きな人だからか。

「はい。お待たせしてしまうかもしれませんが、私もまたティタン様に触れていきたいです」
 お互い照れ笑いをしながら、互いの温もりを確かめるように手を握る。

 抱きしめ合ったなど嘘のように思える程、初々しい触れ合いだった。

「それよりも、本当に相手が私でよかったのですか? ティタン様なら引く手数多でしょうし」
 タニアは言っていた言葉がどうしても引っかかってしまい、つい不安が過ぎる。

 信じよう、大丈夫だ、と思っていてもふと暗い思いが頭をかすめる。

「俺はミューズがいい。他の誰でもなく、君とならずっと一緒にいたいと思ったのだ、愛している」
 決意の込めた言葉を聞いて、ミューズは赤くなり俯いてしまう。

 このように真っすぐに愛の言葉を言われると照れくさい。


(信じよう、信じたい)
 最初に会った時からティタンは誠実であった。それなのにこれ以上疑う様な思いを口にするのは失礼だろうと、真っすぐに見つめ返し、口を開く。

「私も、ティタン様をお慕いしております。大好きです」
 まだ愛という言葉は恥ずかしくて口に出来なかったけれど、それでも今の思いをぶつける。

 その言葉を聞いたティタンは嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう」
 頬を赤らめてそういう彼が愛おしくて、切なくて、ミューズも嬉しくなる。

 これからはずっと一緒に居られるのだと、胸は高鳴った。










「何故すぐにでも国に帰してあげなかったのですか?」
 そうサミュエルに問われてレーヴェの国王はふっと笑う。

「息子の恋を応援するのは父親の役目だろう?」

「……」
 白々しい嘘にサミュエルは渋面になった。

 普通ならば主に内緒で隣国の王女を匿うことなど出来はしない。

 ましてやティタンはあのような性格だ、隠そうとしていたがお粗末なものだ。

 それでも何も言わなかったのは意図があるとしか思えない。

「これは独り言だ」
 サミュエルと目を合わせることなく話し始める。

「魔獣の勢いが増し、戦士の派遣が増えた。だが、このところレーヴェの力は衰えてきている」
 以前に比べて国力が落ちていると国王は言う。

「ティタンはあの通り直情的だが力は強い。人をまとめるというよりも戦う方に向いている」
 あくまで独り言だから返事も待たずに流暢に話している。

「その力をぜひたくさん残しておきたくてな」

「はぁ」
 つい声が漏れた。要するに早く後継を作ってもらいたいのか。

「城に連れて来る程ならば知らずと惹かれているはずだと踏んだが、当たりだったな。ちらっと見たが可愛らしい子だし、お互いに好意を抱いている。良い夫婦になるだろう」
 楽しそうに笑う国王に対し、サミュエルは憮然とした表情だ。

(まぁ誰かが損するわけではないし、いいか)
 国王の誤算があるとすれば、二人が超奥手なところだろう。

 孫の顔を見られるのはまだ先になりそうだ。


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