次期女王になる美姫はダメンズと言われる公爵令息を寵愛中

しろねこ。

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第16話 二人きり

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レナードは女性と観劇を見に来るなんて初めてだと改めて思う。

小さい頃に家族で見に来た事はあるが、こうして婚約者と来るなんて少し感動していた。

「楽しみですね、エレオノーラ様」
馬車から降りる前に車内でエレオノーラはニコルに改めて身支度を整えて貰っていた。

二人で何かを話しながら行なっている。

この二人は仲が良く、いつも一緒だなぁとレナードは思っていた。

付け襟とストールで大分印象が変わる。

エレオノーラの肌の露出が減った分、レナードもようやく気持ちが落ち着いた。

「恋愛ものとは聞いたのですが、どのようなものか楽しみです」
レナードは本を読むのが好きなのだが、実は恋愛系が好きだ。

特に両片思いなどの話は、創作話だとは知っていても応援したくなる。

こっそり作者に感想の手紙を送ったこともある。

「わたくしも詳しくは知らないのですが、リオーネの話では評判がいいらしいのです。レナードが気に入るといいわね」
周囲の目があるからか、そっと腕に手を添えるくらいの接触だ。

「エレオノーラ様達のボックス席はあちらですね、では私はまた後で迎えに来ます。何かありましたら通信石で連絡を。レナード様、くれぐれもエレオノーラ様をよろしくお願い致しますね」
ジロリと睨むような目をニコルから向けたられた。

それだけ言うとニコルと護衛のキュリアンは姿を消した。

「二人は一緒じゃないの?」

「デートですもの。レナードとわたくしだけに決まっているじゃない」
エレオノーラに手を引かれ、席に座る。

スペースは広く、ボックス席という事で隔離されている。

本当なら落ち着いて見られるのだろうが、レナードは全く落ち着かない。

距離も近く、二人きり。

未だにエレオノーラといると動悸が止まらない。

世の夫婦はどうやって慣れていくのか、不思議で仕方ない。

レナードは膝の上で拳を握り、エレオノーラの方をなるべく見ないようにしていた。






エレオノーラはそんなレナードが可愛くて可愛くて仕方ない。

気づかれないよう熱い吐息をこぼした。

いつまでも慣れないという事は、レナードはエレオノーラを意識しているという事だ。

何とも思ってない相手にあそこまで顔を赤らめたりはしない、異性としてしっかり見てもらえて本当に嬉しい。

そして大事にしてくれているからこそ、触れてこないこともわかっている。

その反応がまた愉しくてエレオノーラは更にレナードに迫ってしまうのだ。

膝の上に手を乗せれば、体をびくりとさせる。

更に体を寄せれば何かに耐えるようなため息が聞こえた。

見れば首まで真っ赤だ。

エレオノーラは自分がこんな悪女だとは思わなかったが、レナードも悪いと思ってる。

いつまでもこのようなじれったい反応ばかりでなの、たまにはレナードからの積極的なアピールも欲しいのだ。

(少しくらいからかっても罰は当たらないでしょ?)
観劇が始まると同時にレナードの手に指を絡めると、小さな悲鳴が聞こえてきた。






観劇が始まり、静かに見ているのだが、落ち着かない。

(確かに恋愛もの、だけど……ちょっと、いやかなり刺激的だ)
官能的な表現はあるもののストーリーは面白いので、顔を赤らめつつもレナードは目が離せない。

(切ない……出来れば幸せになって欲しい)
小説の悲恋物も読むが、基本的には誰も苦しんでほしくないと思っている。

そんな想いで少し涙が浮かんだ頃、レナードの肩にエレオノーラが頭を乗せる。

「わたくしはずっとそばにおりますよ……」
小さな声で囁かれた。

意図を察してエレオノーラにそっと寄り添うと、花の香りが漂う。

「ありがとうございます」
鑑賞中の為、小さな声でそれだけのやり取りをした。

エレオノーラは本当に優しい。

その後は寄り添いつつ、時には涙して、時には顔を赤くし、レナードはエレオノーラとの観劇を最後まで見ることが出来た。







「良かったです、最後は幸せになって」
涙を止めることも出来ず、レナードはハンカチで拭っていた。

「お鼻が真っ赤になっているわ、レナード。大丈夫?」
鼻をすすり、赤くなってしまっている。

気遣うエレオノーラにお礼をいい、しばし二人は席で座っていた。

見終わった人たちが一斉に帰るので、二人はその波が落ち着くまで待っていた。







「二人が最後ですよ、そろそろ出てください」
劇場の人に声を掛けられ、二人は立ち上がる。

「出口はこちらに……」

「?」
先程とは違う通路を促される。

「こちらは先程とは違いますよね」
レナードの疑問に男が答える。

「まだ入り口は混んでますので、こちらの別口からどうぞ」

「折角ですが、従者と待ち合わせしていますの。先程の道で結構よ」
そうエレオノーラも伝えると、何かを背中に押し当てられる。

「?!」
鋭く硬いものだ。

「黙ってついてこい。声を出せば殺す」
男の言葉にエレオノーラは無言で睨みつけた。
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