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第17話 誘拐
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「ひっ!」
「声を出すな」
レナードも同じようで、悲鳴を上げかけたが口を塞がれる。
「何者ですか」
エレオノーラが問うが、別な男たちが来て無理やり連れていかれる。
裏口のようなところから出ると、すぐに馬車に押し込まれた。
「何なんですか?! 僕たちをどうしようというのです!」
すぐに走り出した馬車にレナードは怯えている。
そんなレナードを庇うようにエレオノーラは前に出た。
「わたくし達が誰か知っていての所業ですか?」
強気なエレオノーラの声に、一緒に乗り込んできた男たちが笑う。
「威勢のいい女だな。それに比べ、こっちの男は情けない。全く軟弱だな」
男達は刃物を握っている。
それをみてレナードの顔色は真っ白になったが、エレオノーラの体を自分の後ろに引き戻した。
「僕はスフォリア公爵家の者だ!
今すぐ馬車を止め、こんな馬鹿げた事を止めよ。今ならまだ、見逃してやってもいい」
拳を握り、己を奮い立たせている。
その体は目に見えて震えていた。
「公爵家だろうが何だろうが、護衛もいないこの状況では何も出来ないだろ。そうだな、その女を寄こせばお前は見逃す。どうだ?」
「何だと?!」
男たちが剣をレナードに突きつけてきた。
「貴族特有の気位の高いいけ好かない女が、俺達は大嫌いなんだ。だからそいつをこっちに寄こせ」
レナードは震える拳を開いて、エレオノーラを庇うように両腕を広げた。
「そんなことをするわけがない。彼女は僕の大事な人だ、死んでも渡しはしない」
震える体は怖くないわけではないし、レナードは剣も魔法もからっきしで戦える力すらない。
でもエレオノーラを渡すなんて何があっても出来ない。
「へぇ、死んでもね」
「あぁ!」
更に突き出された剣を見てもレナードは揺るがない。
「すみません、エレオノーラ様。僕がもっと強ければ、こんな危険な目に合わせることなんてなかったのに」
少なくともミカエルのように魔法が使えれば、こんな奴らなどすぐにでも撃退できただろうに。
レナードはエレオノーラに申し訳なく思う。
そんなレナードの背中にエレオノーラは寄り添った。
「いいのよ、レナード。充分あなたの気持ちは伝わったわ。ありがとう、そして、ごめんなさい」
エレオノーラの言葉が終わるか終わらないくらいで、馬車は大きく揺れ動いた。
エレオノーラは後ろからレナードを抱きしめる。
「レナード! 離れないで!」
後ろからあたる柔らかな感触に意識が向いたのは一瞬で、天地がひっくり返ったような感覚と衝撃に襲われる。
しばし何が起きたかわからないが、崩れ落ちた馬車の中だとは分かった。
「あれ、今どうなって……」
「まだ動かないで」
耳元からエレオノーラの声がして驚く。
「っ?!」
驚きで声が出そうになったが、何とか耐える。
どうやら後ろからエレオノーラに抱えられているようだ。
崩れた馬車に閉じ込められているのだと思うのだけど、動けないだけで全く痛くない。
「防護壁を張っているから、怪我はないと思うけど、大丈夫?痛いところはない?」
「大丈夫です」
痛みどころか重みも感じられない。
ただ背後の柔らかな感触は感じられる。
「あのエレオノーラ様、重くはないですか?」
レナードの体を支えているエレオノーラが心配になる。
「大丈夫、寧ろこんなにくっつけて幸せだわ」
欲しい答えじゃないものが返ってきた。
「いや、重いですよね、すみません」
唐突に視界が明るくなる。
「エレオノーラ様、レナード様。ご無事ですか?」
ニコルの声だ。
魔法で馬車の欠片をどんどん除けている。
「レナード様……どうぞお出になってください」
ニコルの不機嫌そうな声にレナードは慌てて立ち上がった。
いつまでもエレオノーラにくっついていたから、ニコルが怒ったようだ。
「エレオノーラ様、手を」
差し出された手を握り、エレオノーラが立ち上がる。
軽く埃を払ってレナードにお礼をした。
「ありがとうございます、レナード。わたくしを守ってくれて」
「どちらかというと僕が助けられたと思うのですけど」
「いいえ、あの男達から身を挺して守ってくれたではないですか。なんて良き日なのでしょう」
乙女のようにはしゃぐエレオノーラを見て、ニコルが眉を顰めている。
「レナード様が何をしたのです?」
「わたくしをあの男たちに引き渡せば見逃してやると言われたのです。でもレナードは刃物を突き付けられながらもそれを断り、わたくしの事を大事な人って言ってくれて。今日は最高のデートですわ」
頬に手を当て、嬉しそうだ。
「そう……そんなことが」
少々感心したようにニコルがレナードを見る。
少しは認めてくれたのだろうか?
「声を出すな」
レナードも同じようで、悲鳴を上げかけたが口を塞がれる。
「何者ですか」
エレオノーラが問うが、別な男たちが来て無理やり連れていかれる。
裏口のようなところから出ると、すぐに馬車に押し込まれた。
「何なんですか?! 僕たちをどうしようというのです!」
すぐに走り出した馬車にレナードは怯えている。
そんなレナードを庇うようにエレオノーラは前に出た。
「わたくし達が誰か知っていての所業ですか?」
強気なエレオノーラの声に、一緒に乗り込んできた男たちが笑う。
「威勢のいい女だな。それに比べ、こっちの男は情けない。全く軟弱だな」
男達は刃物を握っている。
それをみてレナードの顔色は真っ白になったが、エレオノーラの体を自分の後ろに引き戻した。
「僕はスフォリア公爵家の者だ!
今すぐ馬車を止め、こんな馬鹿げた事を止めよ。今ならまだ、見逃してやってもいい」
拳を握り、己を奮い立たせている。
その体は目に見えて震えていた。
「公爵家だろうが何だろうが、護衛もいないこの状況では何も出来ないだろ。そうだな、その女を寄こせばお前は見逃す。どうだ?」
「何だと?!」
男たちが剣をレナードに突きつけてきた。
「貴族特有の気位の高いいけ好かない女が、俺達は大嫌いなんだ。だからそいつをこっちに寄こせ」
レナードは震える拳を開いて、エレオノーラを庇うように両腕を広げた。
「そんなことをするわけがない。彼女は僕の大事な人だ、死んでも渡しはしない」
震える体は怖くないわけではないし、レナードは剣も魔法もからっきしで戦える力すらない。
でもエレオノーラを渡すなんて何があっても出来ない。
「へぇ、死んでもね」
「あぁ!」
更に突き出された剣を見てもレナードは揺るがない。
「すみません、エレオノーラ様。僕がもっと強ければ、こんな危険な目に合わせることなんてなかったのに」
少なくともミカエルのように魔法が使えれば、こんな奴らなどすぐにでも撃退できただろうに。
レナードはエレオノーラに申し訳なく思う。
そんなレナードの背中にエレオノーラは寄り添った。
「いいのよ、レナード。充分あなたの気持ちは伝わったわ。ありがとう、そして、ごめんなさい」
エレオノーラの言葉が終わるか終わらないくらいで、馬車は大きく揺れ動いた。
エレオノーラは後ろからレナードを抱きしめる。
「レナード! 離れないで!」
後ろからあたる柔らかな感触に意識が向いたのは一瞬で、天地がひっくり返ったような感覚と衝撃に襲われる。
しばし何が起きたかわからないが、崩れ落ちた馬車の中だとは分かった。
「あれ、今どうなって……」
「まだ動かないで」
耳元からエレオノーラの声がして驚く。
「っ?!」
驚きで声が出そうになったが、何とか耐える。
どうやら後ろからエレオノーラに抱えられているようだ。
崩れた馬車に閉じ込められているのだと思うのだけど、動けないだけで全く痛くない。
「防護壁を張っているから、怪我はないと思うけど、大丈夫?痛いところはない?」
「大丈夫です」
痛みどころか重みも感じられない。
ただ背後の柔らかな感触は感じられる。
「あのエレオノーラ様、重くはないですか?」
レナードの体を支えているエレオノーラが心配になる。
「大丈夫、寧ろこんなにくっつけて幸せだわ」
欲しい答えじゃないものが返ってきた。
「いや、重いですよね、すみません」
唐突に視界が明るくなる。
「エレオノーラ様、レナード様。ご無事ですか?」
ニコルの声だ。
魔法で馬車の欠片をどんどん除けている。
「レナード様……どうぞお出になってください」
ニコルの不機嫌そうな声にレナードは慌てて立ち上がった。
いつまでもエレオノーラにくっついていたから、ニコルが怒ったようだ。
「エレオノーラ様、手を」
差し出された手を握り、エレオノーラが立ち上がる。
軽く埃を払ってレナードにお礼をした。
「ありがとうございます、レナード。わたくしを守ってくれて」
「どちらかというと僕が助けられたと思うのですけど」
「いいえ、あの男達から身を挺して守ってくれたではないですか。なんて良き日なのでしょう」
乙女のようにはしゃぐエレオノーラを見て、ニコルが眉を顰めている。
「レナード様が何をしたのです?」
「わたくしをあの男たちに引き渡せば見逃してやると言われたのです。でもレナードは刃物を突き付けられながらもそれを断り、わたくしの事を大事な人って言ってくれて。今日は最高のデートですわ」
頬に手を当て、嬉しそうだ。
「そう……そんなことが」
少々感心したようにニコルがレナードを見る。
少しは認めてくれたのだろうか?
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