【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。

文字の大きさ
43 / 70

第43話 押さえつけられた毎日(ローシュ視点)

 忙しくクタクタになる日々に、更に追い打ちをかけられた。

 兄様からこの前の襲撃について判明した事、そして様々な注意事項を話される。

 ただ全てを守るには窮屈過ぎる。
 ただでさえ行動を制限されているというのに、更に押さえつけられるなんてと反発心が生まれてしまった。

「危険なんだ。しばらく市井には行かないように」
 何なんだろう。僕を雁字搦めにして、痛めつけようという事だろうか。

 そもそもあの襲撃は僕が頼んだもので、もう起きる危険性はない。
 けれどそれを言う事も出来ないので、ストレスが溜まっていくばかりだ。

 疲れたと言っても休ませて貰えず、まともに休んだのはいつの事だろう。

 数分の休憩の後にはすぐにやるべきことがあると駆り立てられた。

 しかもそれらは僕の側近ではなく、兄様の側近から促される。

 何を言おうとどう抗議しようと、「命令なので」と引かない。

 常に付きっきりという事ではないが、進捗が遅いと監視に来る。

 射る様な目で睨みつけ、命令してくる様に不敬だと周囲の者も言ってくれるが、聞く耳を持ってくれない。

「俺はカルロス殿下のご命令に従っているのです。俺のする事に不服があるという事は、王太子殿下に文句があるという事になりますがよろしいですか?」
 そう言われると誰も何も言えなくなる。

 兄様に立てつくようなことはしたくないと、皆口を噤むのだ。

 そんな身動きの取れない毎日に心の淀みを感じていると、久しぶりに友人に会う。

「ローシュ様、お久しぶりです」

「久しぶりだね、ラウド」
 以前彼とは昼食を共にしたり、放課後一緒に遊んでいたのだが、今は生徒会の事で忙しく、時間が合わない事もあって話すのは数日ぶりだ。

 彼の実家、タリフィル子爵家は商会を持っており、街の事や市井の事に詳しくとても頼りになる存在である。
 次男である彼は家を継ぐわけではないけれど、将来は商会の仕事に携わると話していた。

 エカテリーナが復学してから、体調を崩し青白い顔をしていたのを見たが、今日も彼の顔色は悪い。

「忙しくて一緒に昼食も取れないけれど、皆元気かい?」
 ミリティア達が昼食の時間すらも邪魔しに来るため、以前のようにラウド達話す事が出来なくなった為に近況について聞いてみる。

「皆は、元気ですよ」
 そんな言葉とは裏腹に表情は曇っている。

「……あの、実はローシュ様に相談したいことがありまして」

「相談?」
 藪から棒に一体なんだろう、でも少し嬉しい。
 こうして必要としてくれる者が僕にもいるのだから。

 兄様やミリティアから寄こされる仕事は、こなしたところで誰に感謝されるともわからないものばかりだ。
 こうして顔を合わせて必要とされる方がまだやる気が出る。

「どういったものだい」
 内容にはよるが出来る限り応えたい。
 この学園での僕に向けられる視線を改善出来るかもしれないからね。

 そうしたら皆きっとリヴィオよりも僕の方が正しいと気づいてくれるはずだ。
 僕の方が必要な者だという事に。

「それは、学園ではちょっと話しづらい事でして……誰が聞いてるかもわかりませんし」

「人払いしても駄目かな」

「えぇ。どこで聞かれてしまうかわかりませんので」
 そう言いながらラウドは震えている。余程人前では言えない深刻な相談なのだろう。

「出来れば、私の屋敷まで来て頂けないでしょうか?」

「タリフィル子爵の所に?」
 一度も訪ねた事はないが、彼の実家はとても豪華と聞く。

 大きさはそれほどではないが、交易で仕入れた珍しい調度品があると聞いたことがあった、ぜひ見てみたいものだ。

「行きたいのは山々だけれど、今は兄様からもミリティアからも外出を控えるようにと止められていてね。危ないからと」
 兄様からは再び命を狙われる危険を説かれたばかりだし、ミリティアからも仕事を放りだすことは許さないと釘を刺されている。

 あの二人を説得するのは難しい。

「一日、いえほんの数時間です。駄目でしょうか?」
 その言葉に気持ちが揺らぐ。
 正直出かけたい。

 このように押し込められてばかりなんて耐えられない、僕にだって自由は必要だ。

(一日くらい、いいのではないか?)
 行先も決まっているのならば護衛を増やせばいいだろう、あとはミリティアの説得だけ頭が痛いが、案はある。

「少しくらいなら大丈夫だよ」
 僕の護衛が驚いているが、後で話しをしてわかってもらうつもりだ。

「ただ許可は得られても、僕には自由に使える馬車がない。街までならともかく君の屋敷までは行かせてもらえないと思うんだ」
 暗に馬車があればと促せば、ラウドは顔を輝かせて頷いてくれた。

「うちの馬車を出します、ですからぜひ屋敷にいらしてください」
 子爵家からの護衛も出すと言われた。
 そうなれば新たな護衛をお願いする必要もなくなり、兄様にもバレずに出かけられるかも。

 もちろん普段の護衛は連れて行くつもりだ。

「殿下は大切な方ですから、万全を期します」
 ラウドは真面目な表情でそう言ってくれる。

 そう、僕はこの国で大切な人物なんだ。
 王家の血を引く者だもの。
 エカテリーナやリヴィオなんて目ではない。
感想 3

あなたにおすすめの小説

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版

まほりろ
恋愛
 公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。  公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。  アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。  腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。  本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。  学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。    そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。  実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。  アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。  神に去られた国は徐々に荒廃していき……。  一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。  「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」 ・人外×人間、竜×人間。 ・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。 ・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。 「Copyright(C)2025-まほりろ」 ※タイトル変更しました(2025/05/06) ✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 ✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」 ◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」 ・2025年5月16日HOTランキング2位!  ありがとうございます! ※表紙イラストは猫様からお借りしています。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

さこの
恋愛
 ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。  その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?  婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!  最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)

悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした

みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。 会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。 そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています