【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。

文字の大きさ
44 / 70

第44話 自由時間(ローシュ視点)

 身の回りの護衛も増え、なかなか息苦しい生活が続いていた。一番ひどいのは学園での時間だ。
 そこかしこに人はいるし、多くの貴族が要るから守衛が多い。いつでもどこでも視線を感じ、実に居心地が悪い。

 人の出入りに対するチェックも厳しくて安心というが、間諜が混じり過ぎてはいないか?
 何しろ僕の同行は逐一ミリティアに見張られている、いつも急き立てられている気がする。

 ひと休憩するだけでも「仕事はどうしたの?」と声をかけられるのだ。これは常に動向をみられていることに他ならない。

 こんな風に頻繁に声を掛けられ、溜まったものではない。

 この学園は僕にとってはまるで監獄のようなもの……でも今日だけはつかの間だが、解放されるんだ。





「エカテリーナ様への贈り物を買いに行く?」

「そろそろエカテリーナの誕生日だからね。この機会に日頃のお礼をしたいんだ」

「あら婚約破棄したのだからそういう気遣いは要らないと思うわ。寧ろ不要で迷惑じゃない?」
 ズバッというミリティアは本当に可愛げがなく、意地も悪い。

 そんな事を言っても言いくるめられるだけだから、抗議するようにブライトンを睨むが、こちらもまるで意に介していないという視線を向けるだけだ。

「……今までのお詫びを込めて、という意味で、これで最後にするつもりさ。だからお願い、今日だけは見逃してくれないか?」
 そう頼み込むと、ミリティアは少し考える素振りを見せる。

「……あなたからの本当の贖罪は、エカテリーナ様の迷惑にならないように生きる事よ。その為にその力をつける事に集中して欲しいのだけど」

「その集中の為に今回だけはお願いしたい。僕がどれだけエカテリーナに寄りかかって生きてきたのか、こうして身を持って知ったのだから。直接会う事はないし、突き返されてもいい。でも、行動しないでただ終わるのは嫌なんだ」
 ミリティアの目を真っすぐに見つめながら真剣に訴える。

 睨みつけるように見つめ返されるが、しばしの沈黙の後でハァとため息を吐かれた。

「……そう言うなら、まずは呼び方を改めなさい。元婚約者に軽々しく名を呼ばれるなんて、余計嫌がられるわ」
 じろりと睨まれ、僕は肩をすくめる。

「わかった。ブルックリン侯爵令嬢の為に何かをしたいんだ。お願い、この通りだよ」
 そう言って頭を深く下げると、ミリティアは悩みつつも渋々了承してくれた。

「そうね。このところ逃げずにしっかりと色々な事に向き合ってくれてるものね。では今日だけ許してあげるわ」
 尊大な態度と物言いが気になるが、余計な事を言って取り消されるわけには行かない。

(ミリティアは意外と情に脆いんだよね)
 特にエカテリーナの事を大事に思っているから、彼女の事になると少し当たりが弱くなる。

 そんなミリティアだから僕から贖罪の機会を奪いたくないと思ったのだろうな。

「ありがとう、恩に着るよ」

「ただし市井に行くなら護衛は必ずつける事、そしてエカテリーナ様に無断で会いに行かないように。渡す時は私も同行するからね。許可した責任があるのだから、それくらいは良いでしょ」
 本当かどうかの立ち合うという事か。

 タリフィル子爵の商会には色々なものがあると聞いているし、ラウドに女性受けする物を適当に見繕ってもらおう。
 噓を実にしないと、次からますます身動きが取れなくなってしまう。

 そうして僕はラウドの待つところに向かって急いだ。




 ようやくの自由だ、つい早足になってしまう。

 僕の護衛をしてくれているレイルは余計な事を何も言わない。
 こうしてミリティアを欺くことを言った時も、ラウドの元に行くと言った時も何も反対しなかった。
 訝し気な顔をしただけで、それだけだ。

 待ち合わせをしていた場所に行くとラウドと、そして見知らぬ者がいる。

「君は誰だ?」
 学園内に居るのだから怪しい者ではないだろうけど、初顔に警戒心が生まれる。

「こちらは私の新しい従者です。さぁローシュ様に挨拶をして」
 そうラウドが促すとその男は僕に向かい、頭を垂れて挨拶をしてくる。

「ローシュ殿下、お初にお目にかかります。こうして直にお会いする事が出来て、光栄です」
 僕やラウドよりも背が高くひょろりとしたその従者は、目をキラキラさせて僕を見てきた。

 余程僕に会いたかったのだろう、期待に満ちた目に嬉しさで胸が詰まる。

 このような身分の者も僕に忠誠を誓ってくれている、嬉しい事だ。

 紋のない黒塗りの馬車に乗り込み、先程ミリティアに話したエカテリーナへの贈り物について相談をしてみる。

「エカテリーナ様への贈り物もどうぞ我が商会からお選びください。最高のものを用意させますので」
 にこにこと張り付けたような笑顔でラウドの従者が口を挟んでくる。

 ラウドを見れば、コクコクと必死になって顔を縦に振っていた。

(不思議な気分だ)
 本来なら主の言葉を遮って従者が喋るなどないだろう。

 やはりラウドはあまり体調が良くないのだろう、話を聞いたら静養するように促してあげなくては。







◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
お読み頂き、またエールまでありがとうございます!

とても励みになります╰⁠(⁠⸝⁠⸝⁠⸝⁠´⁠꒳⁠`⁠⸝⁠⸝⁠⸝⁠)⁠╯
感想 3

あなたにおすすめの小説

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版

まほりろ
恋愛
 公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。  公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。  アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。  腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。  本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。  学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。    そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。  実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。  アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。  神に去られた国は徐々に荒廃していき……。  一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。  「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」 ・人外×人間、竜×人間。 ・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。 ・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。 「Copyright(C)2025-まほりろ」 ※タイトル変更しました(2025/05/06) ✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 ✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」 ◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」 ・2025年5月16日HOTランキング2位!  ありがとうございます! ※表紙イラストは猫様からお借りしています。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

さこの
恋愛
 ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。  その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?  婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!  最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)

悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした

みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。 会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。 そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています