3 / 6
両片想い
しおりを挟む
「はぁ、今日も疲れた……」
ティータイムなのに全くリラックスできなかった。
ロゼッタは堪らなく重い体を引きずり、ダンスのレッスンに向かう。
「愛されてますね、ロゼッタ様」
侍女のアンジュがニコニコしている。
「ありがとう、そんな風に言ってもらえるのは嬉しいわ」
膝に乗せるなんてやりすぎにも程があると思うのだが、愛されていると周りから言われると嬉しい。
ロゼッタとてルアネドが大好きだ。
優しい人だし、あんな美形に微笑まれて、クラクラしないわけではない。
ただ自分が隣に立つのは不釣り合いだから、もっと相応しい令嬢がいいと思っているのだ。
ルアネドの為にも。
周囲からしたらルアネドが婚約者を大事にしてるのは明白で、微笑ましいものだった。
そもそも文句や陰口を言うのは、選ばれなかった令嬢やその家族だ、王宮の者はルアネドの決定に異を唱えない。
殺伐としていた王宮だが、ルアネドが王になりロゼッタという婚約者が来てから、一気に華やいだ。
ルアネドは昔から家臣達にも気遣いの出来る人で、ロゼッタもある意味貴族らしくなく誰にでも優しく接している。
時折メイド達のところにお菓子を持っていって、一緒に食べたりしているので、自然と親しくなれているのだ。
「美味しいものは皆と食べたほうがより美味しいのよ」
と、これはアルテミスの受け売りで、共犯者を増やす言葉である。
こっそりお菓子を食べても、皆と一緒なら怒られないだろうという魂胆だ。
優しい二人により良い環境をと、侍従達はやる気に満ちていた。
そんな中突如としてロゼッタの頭の中に、ある映像が視えた。
きらびやかなシャンデリア、飾り付けられている様子から、パーティの最中であるのがわかる。
顔触れ、雰囲気などから今度の婚約についてのもののようだ。
着飾ったロゼッタとルアネドと、近くには近親者がいる。
ルアネドが給仕のリッカからワインを受け取った。
リッカの顔は不自然に青白いが、ルアネドは気がついていない。
そのワインを飲み干すとルアネドの顔色が変わり、血を吐き、倒れる。
騒然とするパーティ。
ロゼッタは倒れるルアネドに縋りついた、体を揺さぶるが目を開けることはない。
冷たくなる手にロゼッタも体温が降下していく感覚がした。
「なに? 今の……」
廊下の途中だが、腰が抜けてしまい立ち上がれなくなる。
「ロゼッタ様、大丈夫ですか?!」
アンジュは青褪めた表情のロゼッタの体を支えると、すぐさま人を呼んだ。
部屋へと運ばれるとすぐに医師が来てくれた。
ひと通り診察が終わり横になって休んでると、ノックの音が聞こえる。
ルアネドだ、凄く顔色が悪い。
「大丈夫かロゼッタ? 急に倒れたと聞いて、今は落ち着いたか?」
この時間は執務中のはずなのに、ロゼッタの為に来てくれたのだ。
「大丈夫です、落ち着きました。それよりも今は執務中では?」
「ロゼッタが倒れたと聞いて仕事なんか出来るわけないだろ、今日はずっと一緒にいる。何か欲しい物や必要な物はないか? 俺に出来ることはないか?」
ロゼッタの手を取り、両手で優しく包みこまれる。
金の瞳が心配そうにこちらを見つめていた、整った顔立ちは見れば見るほどやはり綺麗だ。
この人を失いたくはない。
「欲しいのは、あなたです」
あんな悲しい別れは嫌だった。
生きていてくれれば何でもいい。
ぼんやりと呟いた言葉にルアネドが目を見開き、顔を真っ赤に染めた。
耳も首も赤くなり、握る手にも力が入る。
「……?」
何だろう、私今……。
「!!!」
ロゼッタはうっかり呟いた言葉を思い出し、毛布を跳ね除け起き上がる。
「違います! いや、違いませんが、誤解です、そんなつもりでは言ってません!」
唐突な愛の告白をしてしまった。
意図せず言ったことに、ロゼッタは顔どころか体中が羞恥で赤くなる。
(いや、えっと、えっーと!)
巧く誤魔化さなければいけない。
「えっと、ルアネド様を失いたくないっていうか、命を大事にっていうか、居なくならないでほしいっていうか」
どれも愛の囁きにしか聞こえない。
「ロゼッタが、そこまで俺を大事に思ってくれていたなんて……」
ルアネドは恥ずかしそうにしながら嬉しそうな声を出し、片手で隠すように顔を覆っている。
「もう婚約パーティなどまどろっこしい、結婚式を即座に挙げるぞ!」
絶対にシュゼットに怒られるから止めてー! と心の中で叫んでしまう。
「違うんですルアネド様、私さっき婚約パーティの事を見て……」
はたと気づく。
こんな荒唐無稽な話を信じてくれるのか?
頭のおかしい人と思われないか?
ただの妄想? 幻覚?
感覚はリアルだったが、現実とは思えない光景だった。
何より長年仕えていたリッカが、そんな事をするとは思えない。
「婚約パーティを見た? 何かあったのか?」
ルアネドが続きを促してくる。
「えっと」
どう話そう。
証拠もなく、リッカを悪人に仕立て上げてしまう可能性もある。
しかし、本当に起きたら取り返しのつかないことになってしまう。
どうしたらいいのか。
(……頭のおかしい人という事で婚約破棄になるかも)
という打算が働いた。
ティータイムなのに全くリラックスできなかった。
ロゼッタは堪らなく重い体を引きずり、ダンスのレッスンに向かう。
「愛されてますね、ロゼッタ様」
侍女のアンジュがニコニコしている。
「ありがとう、そんな風に言ってもらえるのは嬉しいわ」
膝に乗せるなんてやりすぎにも程があると思うのだが、愛されていると周りから言われると嬉しい。
ロゼッタとてルアネドが大好きだ。
優しい人だし、あんな美形に微笑まれて、クラクラしないわけではない。
ただ自分が隣に立つのは不釣り合いだから、もっと相応しい令嬢がいいと思っているのだ。
ルアネドの為にも。
周囲からしたらルアネドが婚約者を大事にしてるのは明白で、微笑ましいものだった。
そもそも文句や陰口を言うのは、選ばれなかった令嬢やその家族だ、王宮の者はルアネドの決定に異を唱えない。
殺伐としていた王宮だが、ルアネドが王になりロゼッタという婚約者が来てから、一気に華やいだ。
ルアネドは昔から家臣達にも気遣いの出来る人で、ロゼッタもある意味貴族らしくなく誰にでも優しく接している。
時折メイド達のところにお菓子を持っていって、一緒に食べたりしているので、自然と親しくなれているのだ。
「美味しいものは皆と食べたほうがより美味しいのよ」
と、これはアルテミスの受け売りで、共犯者を増やす言葉である。
こっそりお菓子を食べても、皆と一緒なら怒られないだろうという魂胆だ。
優しい二人により良い環境をと、侍従達はやる気に満ちていた。
そんな中突如としてロゼッタの頭の中に、ある映像が視えた。
きらびやかなシャンデリア、飾り付けられている様子から、パーティの最中であるのがわかる。
顔触れ、雰囲気などから今度の婚約についてのもののようだ。
着飾ったロゼッタとルアネドと、近くには近親者がいる。
ルアネドが給仕のリッカからワインを受け取った。
リッカの顔は不自然に青白いが、ルアネドは気がついていない。
そのワインを飲み干すとルアネドの顔色が変わり、血を吐き、倒れる。
騒然とするパーティ。
ロゼッタは倒れるルアネドに縋りついた、体を揺さぶるが目を開けることはない。
冷たくなる手にロゼッタも体温が降下していく感覚がした。
「なに? 今の……」
廊下の途中だが、腰が抜けてしまい立ち上がれなくなる。
「ロゼッタ様、大丈夫ですか?!」
アンジュは青褪めた表情のロゼッタの体を支えると、すぐさま人を呼んだ。
部屋へと運ばれるとすぐに医師が来てくれた。
ひと通り診察が終わり横になって休んでると、ノックの音が聞こえる。
ルアネドだ、凄く顔色が悪い。
「大丈夫かロゼッタ? 急に倒れたと聞いて、今は落ち着いたか?」
この時間は執務中のはずなのに、ロゼッタの為に来てくれたのだ。
「大丈夫です、落ち着きました。それよりも今は執務中では?」
「ロゼッタが倒れたと聞いて仕事なんか出来るわけないだろ、今日はずっと一緒にいる。何か欲しい物や必要な物はないか? 俺に出来ることはないか?」
ロゼッタの手を取り、両手で優しく包みこまれる。
金の瞳が心配そうにこちらを見つめていた、整った顔立ちは見れば見るほどやはり綺麗だ。
この人を失いたくはない。
「欲しいのは、あなたです」
あんな悲しい別れは嫌だった。
生きていてくれれば何でもいい。
ぼんやりと呟いた言葉にルアネドが目を見開き、顔を真っ赤に染めた。
耳も首も赤くなり、握る手にも力が入る。
「……?」
何だろう、私今……。
「!!!」
ロゼッタはうっかり呟いた言葉を思い出し、毛布を跳ね除け起き上がる。
「違います! いや、違いませんが、誤解です、そんなつもりでは言ってません!」
唐突な愛の告白をしてしまった。
意図せず言ったことに、ロゼッタは顔どころか体中が羞恥で赤くなる。
(いや、えっと、えっーと!)
巧く誤魔化さなければいけない。
「えっと、ルアネド様を失いたくないっていうか、命を大事にっていうか、居なくならないでほしいっていうか」
どれも愛の囁きにしか聞こえない。
「ロゼッタが、そこまで俺を大事に思ってくれていたなんて……」
ルアネドは恥ずかしそうにしながら嬉しそうな声を出し、片手で隠すように顔を覆っている。
「もう婚約パーティなどまどろっこしい、結婚式を即座に挙げるぞ!」
絶対にシュゼットに怒られるから止めてー! と心の中で叫んでしまう。
「違うんですルアネド様、私さっき婚約パーティの事を見て……」
はたと気づく。
こんな荒唐無稽な話を信じてくれるのか?
頭のおかしい人と思われないか?
ただの妄想? 幻覚?
感覚はリアルだったが、現実とは思えない光景だった。
何より長年仕えていたリッカが、そんな事をするとは思えない。
「婚約パーティを見た? 何かあったのか?」
ルアネドが続きを促してくる。
「えっと」
どう話そう。
証拠もなく、リッカを悪人に仕立て上げてしまう可能性もある。
しかし、本当に起きたら取り返しのつかないことになってしまう。
どうしたらいいのか。
(……頭のおかしい人という事で婚約破棄になるかも)
という打算が働いた。
10
あなたにおすすめの小説
一緒に召喚された私のお母さんは異世界で「女」になりました。
白滝春菊
恋愛
少女が異世界に母親同伴で召喚されて聖女になった。
聖女にされた少女は異世界の騎士に片思いをしたが、彼に母親の守りを頼んで浄化の旅を終えると母親と騎士の仲は進展していて……
母親視点でその後の話を追加しました。
老け顔ですが?何かあります?
宵森みなと
恋愛
可愛くなりたくて、似合わないフリフリの服も着てみた。
でも、鏡に映った自分を見て、そっと諦めた。
――私はきっと、“普通”じゃいられない。
5歳で10歳に見られ、結婚話は破談続き。
周囲からの心ない言葉に傷つきながらも、少女サラサは“自分の見た目に合う年齢で学園に入学する”という前代未聞の決意をする。
努力と覚悟の末、飛び級で入学したサラサが出会ったのは、年上の優しいクラスメートたちと、ちょっと不器用で真っ直ぐな“初めての気持ち”。
年齢差も、噂も、偏見も――ぜんぶ乗り越えて、この恋はきっと、本物になる。
これは、“老け顔”と笑われた少女が、ほんとうの恋と自分自身を見つけるまでの物語。
過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。
黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。
明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。
そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。
………何でこんな事になったっけ?
『候補』だって言ったじゃないですか!
鳥類
恋愛
いつのまにやら『転生』して美幼女になっていましたよ!魔法がある世界とかサイコーか!
頑張って王宮魔導師になるぞ!と意気込んでいたら…いつのまにやら第一王子殿下の『婚約者候補』にされていた…!!
初投稿です。
異世界転生モノをやってみたかった…。
誤字脱字・タグ違いなどございましたらご一報いただければ幸いです。
内容については生温くサラッと読んでいただけたらと…思います。
イベント無視して勉強ばかりしていたのに、恋愛のフラグが立っていた件について
くじら
恋愛
研究に力を入れるあまり、男性とのお付き合いを放置してきたアロセール。
ドレスもアクセサリーも、学園祭もコンサートも全部スルーしてきたが…。
婚約者のことが大大大好きな残念令息と知らんふりを決め込むことにした令嬢
綴つづか
恋愛
――私の婚約者は完璧だ。
伯爵令嬢ステラリアの婚約者は、将来の宰相として期待されている筆頭侯爵令息のレイルだ。冷静で大人びていて文武にも長け、氷の貴公子などと呼ばれている完璧な男性。
でも、幼い頃から感情と表情が読み取りづらいのレイルの態度は、婚約者として可もなく不可もなく、ステラリアはどこか壁を感じていた。政略なこともあるが、引く手あまたな彼が、どうして平凡な伯爵令嬢でしかないステラリアと婚約を結び続けているのか、不思議で不安だった。
だが、そんなある日、偶然にもステラリアは見てしまった。
レイルが自室でベッドローリングをしながら、ステラリアへの愛を叫んでいる瞬間を。
婚約者のことが大好き過ぎるのに表情筋が動かな過ぎて色々誤解をされていた実は残念な侯爵令息と、残念な事実を知ったうえで知らんふりをすることにした伯爵令嬢のラブコメです。
ヒーローとヒロインのどちらかの視点で基本お話が進みますが、時々別キャラ視点も入ります。
※なろうさんにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる