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婚約パーティ
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そして婚約パーティの日が来た。
紫を基調としたドレスは足元に向かうにしたがって黒へと変わっていく。
細かいダイヤが散りばめられ、夜空のような美しさだ。
生地は薄手のオーガンジーを使用しており、軽やかな印象になっている。
髪は軽く結い上げられ、薄紫の花がつけられていた。
イヤリングやネックレスなどつけるアクセサリーは金色で統一されている、ルアネドの髪と瞳の色でロゼッタは彩られていた。
ルアネドは濃い紫の衣装の中、柔らかいクリーム色のスカーフをつけていた。
装飾品はアメトリンをメインにし、その色は神秘的だ。
スラッとしたデザインはとても凛々しい、二人で並ぶと装いを揃えたのが目に見えてわかった。
パーティではたくさんの人が二人に挨拶に来る。
見知った顔もあるが、ロゼッタにとっては初めての人の方が多い。
今後も会うことがあるだろうと、顔と名前を覚えようと必死になる。
ロゼッタの家族とも久々に会う事が出来、気兼ねなく話をすることが出来た。
「ルアネド様、妹を大事にしてくださりありがとうございます。しっかりと約束をお守り下さいね」
「式までは我慢するさ。こちらも約束は覚えている。落ち着いたら必ず」
「?」
ルアネドとアルテミスの会話にロゼッタは訝しむ。
「お姉様、何の話でしょうか? 約束とは」
自分に関わる気がしてならない。
「うふふ、いずれわかるわ」
艶っぽく笑うだけで教えてはくれない。
「結婚したら話すよ」
ロゼッタの視線を感じたルアネドも明言を避け、はぐらかした。
やや疑問は残るものの、ロゼッタはルアネドの友人だという他国の男性とも顔を合わす。
金髪翠眼のこれまた美しい男性と、琥珀色の髪と褐色の肌を持つ大柄な男性だ。
その隣には美しい伴侶がそれぞれいた。
「影を貸した甲斐があった。今度はアドガルムにも貢献してもらうぞ」
「可愛らしい女性だな、ぜひ我が国にも遊びに来てくれ。ルアネドに飽きたらぜひ側室に……」
「グウィエン、笑えない冗談は止めろ。ルアネドがひくついてるぞ」
「あぁすまん。ルアネドがやっと婚約したのが嬉しくてな、何ならずっと独身かと心配した。エリックだって、そうだろ?」
「最初から素直におめでとうと言えばいいのに。側室などと口にして、後で奥方に叱られてしまえばいい」
友人同士の軽口にルアネドの表情が和らいだ。
「エリック、グウィエン、ありがとう。国が落ち着いたら必ずロゼッタと遊びに行かせてもらうよ」
気のおけない友人達との会話にルアネドの緊張はすっかりほぐれたようだ。
そんな雰囲気から一転してロゼッタは緊張してくる。
(いよいよだわ…)
あの時に見たのと同じ場面だ、間違いではないかと周囲を見渡してしまう。
遠くでは歓談と軽食を楽しむ姿が見えた。
ダンスを踊る姿も見られ、優雅な音楽がホール中に響き渡っている。
今ルアネドの周りにいるのは近親者のみだ、ひと通りの挨拶が終わり、歓談に興じていた。
近くで控えているメイドの中にいる、青ざめた顔のリッカが見えた。
リッカは古参の使用人だ。
このようなばでも慣れているはずなのに、今は明らかな動揺が見えている。
何らかの事が起こったに違いない。
(未だに信じられない、でも)
どうして暗殺に手を染めてしまうのか。
使用人達がルアネドやロゼッタ、そして他の主賓にワインを渡していく、ルアネドに手渡したのはやはりリッカだ。
皆に行き渡ったところで、ルアネドは周りを一瞥している。
(この後どうするのだろう?)
ロゼッタはあれからルアネドとシュゼットの計画は聞いていない。
ルアネドは皆を見たあと、ロゼッタに目を向けるとイタズラっこみたいに微笑んだ。
そして、一気にワインを煽る。
途端、ルアネドの体が大きく揺れる。
「ルアネド様!」
ロゼッタの大声に皆が一斉に注目した。
ルアネドは血を吐き倒れるーーなどという事をしなかった。
「いや、もう少し度数を抑えてあるものだと思ってた……」
頬を赤くし、口元を押さえている。
少し離れたところにいるシュゼットを睨みつけて。
シュゼットがいる位置はカルサスが万が一逃走しても捕まえられる位置だ。
その口が何かを言うように動く。
何かの合図だろう、ルアネドが立ち上がった。
「すまない、急遽ワインを変更したみたいで思わずびっくりしてしまった。変えざるを得ない事が、あったようだ。なぁカルサス殿」
名指しを受けたカルサスは目を見開く。
「陛下、何故私に? そちらのワイン事情など知りえませんが……」
「給仕のリッカを脅しワインに毒を入れただろう。指示したのはカルサス殿だな」
その一言ですぐにリッカは取り押さえられる。
カルサスの周囲も騎士たちが取り囲んだ。
「何をおっしゃってるのかわからない、これは何かの間違いだ」
「国が落ち着いてきた今、俺を毒殺し成り代わろうとしたのだろう。王位を阻む者が俺だけになるのを待ち、暗殺されないよう興味がないふりをしてこの時を待っていたな。カルサス殿は俺を王にするべく頑張ってくれた立役者だ。その俺が毒殺されたとなれば、大いに悲しむだろうと皆に思われる。情に深い男を演じて同情を集め、王になるつもりだったのだろう。他の継承者を排除した今、俺を除けば一番王に近いのは貴方だ」
騎士たちがカルサスを捕縛する。
「待て、何かの間違いだ。私がこの国にとって大事な王を、可愛い甥っ子を殺そうとするはずがない。ルアネド信じてくれ!」
必死の訴えにもルアネドの表情は動かない。
「リッカの家族を攫い彼女を脅したことも知っている。証言も証人も揃っているよ。毒は貴方の私兵が他国より輸入していたな、証拠もある。即刻反逆人カルサスを捕らえ、牢に送れ」
「待て、ルアネド! お願いだから!」
「続きは裁判で話しましょう、会えればですが」
引きずられていくカルサスを、ロゼッタは黙って見るしか出来ない。
微かに視えた彼のその後は、口にすることすら憚られるものだった。
ルアネドは忠実だったリッカに目を移す。
「リッカ……毒のワインは証拠としておさえてある。そして家族は無事だ、俺の配下が助け出しているから安心してくれ。正直に証言してもらえれば処罰は軽くする」
リッカはか細い声でお礼を言い、涙を流しながらも自らの足で騎士達に付き従った。
紫を基調としたドレスは足元に向かうにしたがって黒へと変わっていく。
細かいダイヤが散りばめられ、夜空のような美しさだ。
生地は薄手のオーガンジーを使用しており、軽やかな印象になっている。
髪は軽く結い上げられ、薄紫の花がつけられていた。
イヤリングやネックレスなどつけるアクセサリーは金色で統一されている、ルアネドの髪と瞳の色でロゼッタは彩られていた。
ルアネドは濃い紫の衣装の中、柔らかいクリーム色のスカーフをつけていた。
装飾品はアメトリンをメインにし、その色は神秘的だ。
スラッとしたデザインはとても凛々しい、二人で並ぶと装いを揃えたのが目に見えてわかった。
パーティではたくさんの人が二人に挨拶に来る。
見知った顔もあるが、ロゼッタにとっては初めての人の方が多い。
今後も会うことがあるだろうと、顔と名前を覚えようと必死になる。
ロゼッタの家族とも久々に会う事が出来、気兼ねなく話をすることが出来た。
「ルアネド様、妹を大事にしてくださりありがとうございます。しっかりと約束をお守り下さいね」
「式までは我慢するさ。こちらも約束は覚えている。落ち着いたら必ず」
「?」
ルアネドとアルテミスの会話にロゼッタは訝しむ。
「お姉様、何の話でしょうか? 約束とは」
自分に関わる気がしてならない。
「うふふ、いずれわかるわ」
艶っぽく笑うだけで教えてはくれない。
「結婚したら話すよ」
ロゼッタの視線を感じたルアネドも明言を避け、はぐらかした。
やや疑問は残るものの、ロゼッタはルアネドの友人だという他国の男性とも顔を合わす。
金髪翠眼のこれまた美しい男性と、琥珀色の髪と褐色の肌を持つ大柄な男性だ。
その隣には美しい伴侶がそれぞれいた。
「影を貸した甲斐があった。今度はアドガルムにも貢献してもらうぞ」
「可愛らしい女性だな、ぜひ我が国にも遊びに来てくれ。ルアネドに飽きたらぜひ側室に……」
「グウィエン、笑えない冗談は止めろ。ルアネドがひくついてるぞ」
「あぁすまん。ルアネドがやっと婚約したのが嬉しくてな、何ならずっと独身かと心配した。エリックだって、そうだろ?」
「最初から素直におめでとうと言えばいいのに。側室などと口にして、後で奥方に叱られてしまえばいい」
友人同士の軽口にルアネドの表情が和らいだ。
「エリック、グウィエン、ありがとう。国が落ち着いたら必ずロゼッタと遊びに行かせてもらうよ」
気のおけない友人達との会話にルアネドの緊張はすっかりほぐれたようだ。
そんな雰囲気から一転してロゼッタは緊張してくる。
(いよいよだわ…)
あの時に見たのと同じ場面だ、間違いではないかと周囲を見渡してしまう。
遠くでは歓談と軽食を楽しむ姿が見えた。
ダンスを踊る姿も見られ、優雅な音楽がホール中に響き渡っている。
今ルアネドの周りにいるのは近親者のみだ、ひと通りの挨拶が終わり、歓談に興じていた。
近くで控えているメイドの中にいる、青ざめた顔のリッカが見えた。
リッカは古参の使用人だ。
このようなばでも慣れているはずなのに、今は明らかな動揺が見えている。
何らかの事が起こったに違いない。
(未だに信じられない、でも)
どうして暗殺に手を染めてしまうのか。
使用人達がルアネドやロゼッタ、そして他の主賓にワインを渡していく、ルアネドに手渡したのはやはりリッカだ。
皆に行き渡ったところで、ルアネドは周りを一瞥している。
(この後どうするのだろう?)
ロゼッタはあれからルアネドとシュゼットの計画は聞いていない。
ルアネドは皆を見たあと、ロゼッタに目を向けるとイタズラっこみたいに微笑んだ。
そして、一気にワインを煽る。
途端、ルアネドの体が大きく揺れる。
「ルアネド様!」
ロゼッタの大声に皆が一斉に注目した。
ルアネドは血を吐き倒れるーーなどという事をしなかった。
「いや、もう少し度数を抑えてあるものだと思ってた……」
頬を赤くし、口元を押さえている。
少し離れたところにいるシュゼットを睨みつけて。
シュゼットがいる位置はカルサスが万が一逃走しても捕まえられる位置だ。
その口が何かを言うように動く。
何かの合図だろう、ルアネドが立ち上がった。
「すまない、急遽ワインを変更したみたいで思わずびっくりしてしまった。変えざるを得ない事が、あったようだ。なぁカルサス殿」
名指しを受けたカルサスは目を見開く。
「陛下、何故私に? そちらのワイン事情など知りえませんが……」
「給仕のリッカを脅しワインに毒を入れただろう。指示したのはカルサス殿だな」
その一言ですぐにリッカは取り押さえられる。
カルサスの周囲も騎士たちが取り囲んだ。
「何をおっしゃってるのかわからない、これは何かの間違いだ」
「国が落ち着いてきた今、俺を毒殺し成り代わろうとしたのだろう。王位を阻む者が俺だけになるのを待ち、暗殺されないよう興味がないふりをしてこの時を待っていたな。カルサス殿は俺を王にするべく頑張ってくれた立役者だ。その俺が毒殺されたとなれば、大いに悲しむだろうと皆に思われる。情に深い男を演じて同情を集め、王になるつもりだったのだろう。他の継承者を排除した今、俺を除けば一番王に近いのは貴方だ」
騎士たちがカルサスを捕縛する。
「待て、何かの間違いだ。私がこの国にとって大事な王を、可愛い甥っ子を殺そうとするはずがない。ルアネド信じてくれ!」
必死の訴えにもルアネドの表情は動かない。
「リッカの家族を攫い彼女を脅したことも知っている。証言も証人も揃っているよ。毒は貴方の私兵が他国より輸入していたな、証拠もある。即刻反逆人カルサスを捕らえ、牢に送れ」
「待て、ルアネド! お願いだから!」
「続きは裁判で話しましょう、会えればですが」
引きずられていくカルサスを、ロゼッタは黙って見るしか出来ない。
微かに視えた彼のその後は、口にすることすら憚られるものだった。
ルアネドは忠実だったリッカに目を移す。
「リッカ……毒のワインは証拠としておさえてある。そして家族は無事だ、俺の配下が助け出しているから安心してくれ。正直に証言してもらえれば処罰は軽くする」
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