溺愛令嬢の学生生活はとことん甘やかされてます。

しろねこ。

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第1話 療養

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体の弱いミューズは小さい頃は別邸にて療養していた。

気候が穏やかで自然豊かな場所。

辺境地より少し街よりなだけの田舎町で過ごしていた。

走ったり遊んだりすることができない分ベッドにて本を読んで過ごす事が多かった。

ミューズの母も姉も心配し、こちらで一緒に生活していた。

離れた領地では公爵である父が頑張って切り盛りをし、月に二、三回は顔を見に来てくれた。

夏などの長い休みの際は家族四人でゆっくりと過ごしていた。

ミューズが物心つく頃に父の友人が三人の息子を連れてきた。

夏の暑い時期だけこちらで過ごすようになったそうだ。

家名は教えてもらってないが、家族ぐるみで気さくに付き合うようになった。

ミューズと同い年のティタンは藤色の髪をした体の大きな男の子だった。

体を動かすのが好きで、よく外に遊びに行っていた。

外に出れないミューズのためにお花や野菜を持ってきてくれて、見たもの聞いたものを色々話をしてくれた。

「ミューズの瞳はキレイだな。お日様の金色と、澄み渡った空の色だ」
よく覗き込まれ、褒められた。

彼はとても優しく、親切で、ミューズの話もうんうんとゆっくり聞いてくれている。

「俺は次男だからいずれは家を出なきゃならない。自然いっぱいなところも好きだし、野菜も好きだし、ミューズもいる。ここに住めたらいいなぁ」
ニカっと笑うティタンの表情はとても眩しかった。

体の弱いミューズは将来の事をきちんと考えた事がなかったが、ティタンの考えには共感した。

ここであれば空気も素敵で、のんびりと過ごせるのだろうなぁ。

「それは素敵ね。私もここが好きだわ。ここで一緒に過ごせたら嬉しい」
ニッコリと微笑み、ティタンの考えに賛同する。

「ティタンは凄いなぁ、もう将来の事を考えているのね。私なんて全然考えたことなかったわ。元気になれば色々な事をしてみたいと思うけど…」
いまだベッド生活な自分の体、せめて、もう少し強くなりたい。

「元気になったら、王都に行ってみたいの。キラキラしてるし、きれいな洋服や美味しい食べ物がいっぱいあるんだろうなぁ」
可愛いアクセサリーもあるだろうし、見てみたいものはたくさんある。

「ティタンはいつもは王都にいるんだよね、どんなところ?」

「そうだなぁ、まず王様の住む大きなお城があって、人もいっぱいでお店も多い。祭りなんかあると凄い賑わいで…」
身振り手振りを使って、いかに色々あるか教えてくれる。

「いつか、行けたら案内してほしいなぁ」
王都どころかまだ庭にすら出られないミューズに「約束する」と、固い握手を交わした。

「人が多いからこうやって迷子にならないように繋いであげるよ。兄上もよくそうしてくれた」

「うれしいな、ありがとう」
ミューズより少し大きなその手は日に焼けて黒く、そして温かかった。





月日が過ぎ、ミューズが庭に出られるようになると、ティタンが付き添ってくれた。

日傘を差すミューズの横で歩幅を合わせ、ゆっくり歩いてくれる。

頭一つ分身長差があるため、話すときは常に上向きになる。

「私と一緒でつまらなくない? ティタンはもっと走りたいんじゃないの?」

「今はミューズとの散歩の時間だから気にしなくて大丈夫だ。あとでまた新鮮な野菜をもらってくるよ」
すっかり土地に馴染んだティタンは、周囲の農家の者と親しい仲になっていた。

体に良いだろうと思い、採れたての野菜を貰ってきたり、早朝には畑仕事を手伝いにいくそうだ。

直接ミューズの屋敷に届けに来ることもあり、丁寧にお礼をする。

ティタンの知り合いな事と、体の弱い深窓の令嬢ということで、ミューズは周りの領民からも庇護の対象になっているようだ。

「ティタンありがとう、皆さんにもお礼を伝えてもらえるかしら。いつか私も元気になってお礼をしに行くね」
むんっとガッツポーズをとると、ティタンはくすりと笑う。

「うんうん、まずはしっかりとご飯が食べられるようにならないとな」
こんなに細いからなぁと腕を見る。

「あなたが大きいだけだと思うわ」
会うのが夏の間だけなので、一年越しに再会しているが、ティタンはぐんぐんと大きくなった。

農業にも興味があるが、ここは辺境地に近いため魔物も出やすい。

なので騎士の訓練も初めたそうだ。

「あと二年後にはミューズも学校に行くだろ? そのためにももっと食べて、もっと丈夫になろう」
ミューズの姉、レナンもこの春から通い始めた学校。

主に貴族が人脈づくりや国の仕組みを知るため共通で通うところだ。

能力値や資金によっては市井のものも通うことがある。


「行く予定だけど、ティタンも行く?」

「もちろん、同じクラスになるといいな」

「そうね…」
ミューズは少し顔を曇らせてしまう。

「勉強は楽しみではないか?」
そうではないと首を横に振る。

仮にも公爵家の一員のため、ひと通りの勉強はしている。

この学校生活により、婚約者を決めるものも多いのだが、卒業をして仕事を始めてからだと、忙しくてなかなか手が回らないという事もある。

嫡男のものは政略的に決まっている者も多いが、途中で婚約者と仲違いしたり男女の関係に巻き込まれたりと、そういうのもあると家庭教師からきつく教えられた。

マナーや教養の授業はいいが、その人間関係の問題を聞くと頭を悩ませた。

「学校に行ったら婚約者づくりの問題があるでしょ?勉強は楽しみだけど友だちもいないし、不安なのよね」
ミューズは次女のため、比較的自由だが、家のためを思えばなるべく家柄も考慮したい。

出来れば恋愛結婚がいいとは思うが、これ以上の我儘は言いづらい。

色々と考えると憂鬱だ。

「そういえばティタンは婚約者いるの?」
今までそういう話をしたことはなかった。

普段は王都にいるのだから、自分とは違って良い人がいるのじゃないか?

「いないよ。俺は見目がいいほうじゃないから。兄上ならいっぱい話があるみたいだけど」
あははと笑うティタンはどこか悲しそうだ。

容姿端麗な母親似のエリックとリオンと違い、平凡な顔立ちのティタンは逆に比較され、敬遠されてるという。

「あら、エリック様とは違うけど愛嬌があって私はティタンの顔好きよ」
何より笑顔がとても可愛いのだ。

ミューズはニコリと微笑む。

その言葉にティタンは耳まで真っ赤になった。

あまりにも自然に褒められ、動揺する。

長身過ぎることと顔立ちのせいで、あまり異性と触れてこなかったティタンは、パーティなどから疎遠になっていった。

それに夏になればここでミューズと会えるから、必要ないと思っていた。

(学校が始まれば、ミューズを婚約者にしたいと思う者も増えるだろうな)
そう考えるともやもやする。

ミューズの事をきちんと見るのではなく、公爵家との連なりを求める者も少なからずいるだろう。

次女であれば融通も利かせやすいしな、とティタンは帰ったら早めに手を打とうと考えた。

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