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第23話 止める者
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「いい加減にしましょう、殿下」
セシルがため息と共にそう言った。
「僕は最初に伝えたはずです。ミューズ様は絶対に手に入る女性ではないと。諦めると言っていたはずなのに、いつまでもこんな事をして、往生際が悪いのも程があります」
「セシル、お前裏切るのか」
「裏切る? 何を言うのですか。もともとあなたにミューズ様は勿体ないのですよ、釣り合うわけがない」
セシルの言葉にオーランドは驚きすぎて声が出ないようだ。
「すみません、うちの第三王子が。甘やかされて育ったから、何でも思い通りになると思っているのですよ」
「セシル殿が謝ることはない。が、お灸は据えてもらいたいから、セラフィムにはこの前の映像と一緒に抗議書を送っている。連れ帰ってもらうかもしれないな」
「そんな事をしたのか?!」
まずいといった顔でオーランドの顔色が変わった。
「俺は嘘は言わんし、見られて困ることではなかったからな。困るのはオーランド、お前だけだ」
ティタンも念の為と映像を見たが、嫌がるミューズへ迫るオーランドにだいぶ怒りを感じていた。
「セシル殿、もしも行き場がなくなったら俺が仕事を斡旋するぞ。うちのシュナイ医師が薬学に明るい助手を探していた。セラフィム出身でここまで薬草に詳しいものなら、大歓迎のはずだ」
「ありがとうございます、万が一の時はよろしくお願いします。それとミューズ様に謝罪をお伝えください。こんな事になりすみませんと。ミューズ様とした薬草の話は楽しかったですよ」
すっかり静かになったオーランドを連れ、セシルが去っていく。
「もう来ないでしょうか?」
ずっと事の成り行きを見守っていたルドが声を掛ける。
「そうだな。そろそろセラフィムから返事も来てるんじゃないか?全て兄に任せているから、仔細はわからんが」
外交問題に発展しないようにとエリックに色々とお願いしていた。
何らかの手筈は取っているはずだ。
セラフィム国ではエリックがレナンと従者を伴て、国王と対峙していた。
「送った手紙と、証拠の品は見て頂けましたか?」
「目は通した。オーランドが世話を掛けたようだな」
「ご子息のあの行動を見て、それだけですか?」
エリックは腕を組み、国王を見る。
「我が弟、アドガルムの第二王子に対しての態度。確かにティタンは身分を隠し学校に通っていますが、外交の際にお会いしたことがありますよね? まさかご子息は忘れてしまったのでしょうか」
「オーランドは、そういう……顔を覚えるような事が不得意だからな」
だからといって留学先の王子の顔を忘れるとは、国王も思っていなかったが。
「そうですか、では婚約者のいる女性にあのように触れようとしたのには、どんな理由が? しかも奪おうとは。セラフィムの王族への教育はどのようなものか、興味深いですね」
セラフィムの国王、ヘンデルは歯ぎしりをする。
(こんな若造に言われっぱなしとは)
こうなったのもオーランドのせいだ。
いつまでも浮ついた心と、幼稚な考え、そして傍若無人な振る舞いは、この国から出すべきではなかったと後悔する。
「申し訳ない……あれは即刻セラフィムへと戻し、二度とミューズ嬢に近づけないようにする」
ティタンとは王族として会う事もあるかもしれないが、そちらはどうしようもない。
「それでは足りません。慰謝料を要求します」
「何だと?」
国王が謝罪し、第三王子を自国へ戻すと言ったのに、まだ足りないというのか。
「そちらこそ、オーランドに傷をつけたではないか」
「あれは自衛しただけです。うちの従者は主を守るためなら何でもしますので」
エリックは長い足を組む。
「可哀そうに、我が義妹になるミューズはオーランド王子のせいで、男性恐怖症だ。謝罪だけでは足りない、もっと誠意を見せて頂きたいのですが」
「何が望みだ」
ヘンデルはこの王太子が何を求めているかは知らないが、そう切り出した。
エリックはもとからそのつもりで来たのだろうから、それを聞かねばきっと帰らない。
「話が早いですね。では本題を。こちらの望みはあのセシル=ボルドーを薬師として引き入れたい、というものです」
「セシルを?」
意外な言葉であった。
ボルドー家の三男で、可もなく不可もない男だ。
ボルドー家で持て余していたので、オーランドに与えたが、そんな男を何故指名した?
「ミューズの初めての男友達なので、学校にいる時の話相手になればと思ったのですよ。そうすれば今回生じた男性恐怖症も、少しは落ち着くでしょうから。まぁ嫌だというなら、金貨や土地でもいいですけど」
エリックは選ばせてやるという態度だ。
「金貨であれば千は欲しいですね」
「千?!」
いくら何でも高すぎる。
「ミューズの心の傷、そしてティタンを侮辱した事に比べたら安いものでしょう。どういった賠償にするかはお任せします」
ヘンデルは唸った。
法外な値段ではあるし、飲み込む必要はない。
しかし王太子自らがここまで抗議しに来たのだ。
手ぶらで帰るわけがない。
「セシルの移住権でいいというならば、それで手を打ってもらおう」
たかだか侯爵家の三男坊だ。
金貨千枚よりも安いし、オーランドを諫められなかった罰として、アドガルムに向かわせていいだろう。
オーランドも口煩いセシルを嫌がり、常々別な従者を希望していたのもある。
「交渉成立ですね、では早速契約書にサインを」
予め用意していた書類を付き添いの二コラが広げる。
「レナンすまないがもう少しだけ待っててくれ、終わったらセラフィム観光に連れて行くから」
「わたくしは大丈夫ですが、このような話をするというのは事前に言ってください。驚きましたわ」
観光って聞いたからついてきたのに、とレナンは困惑している。
その反応からおそらく何も知らされてなかったようだ。
書類まで準備していたとは、エリックの用意周到さにヘンデルは辟易しつつ契約書に目を通していった。
セシルがため息と共にそう言った。
「僕は最初に伝えたはずです。ミューズ様は絶対に手に入る女性ではないと。諦めると言っていたはずなのに、いつまでもこんな事をして、往生際が悪いのも程があります」
「セシル、お前裏切るのか」
「裏切る? 何を言うのですか。もともとあなたにミューズ様は勿体ないのですよ、釣り合うわけがない」
セシルの言葉にオーランドは驚きすぎて声が出ないようだ。
「すみません、うちの第三王子が。甘やかされて育ったから、何でも思い通りになると思っているのですよ」
「セシル殿が謝ることはない。が、お灸は据えてもらいたいから、セラフィムにはこの前の映像と一緒に抗議書を送っている。連れ帰ってもらうかもしれないな」
「そんな事をしたのか?!」
まずいといった顔でオーランドの顔色が変わった。
「俺は嘘は言わんし、見られて困ることではなかったからな。困るのはオーランド、お前だけだ」
ティタンも念の為と映像を見たが、嫌がるミューズへ迫るオーランドにだいぶ怒りを感じていた。
「セシル殿、もしも行き場がなくなったら俺が仕事を斡旋するぞ。うちのシュナイ医師が薬学に明るい助手を探していた。セラフィム出身でここまで薬草に詳しいものなら、大歓迎のはずだ」
「ありがとうございます、万が一の時はよろしくお願いします。それとミューズ様に謝罪をお伝えください。こんな事になりすみませんと。ミューズ様とした薬草の話は楽しかったですよ」
すっかり静かになったオーランドを連れ、セシルが去っていく。
「もう来ないでしょうか?」
ずっと事の成り行きを見守っていたルドが声を掛ける。
「そうだな。そろそろセラフィムから返事も来てるんじゃないか?全て兄に任せているから、仔細はわからんが」
外交問題に発展しないようにとエリックに色々とお願いしていた。
何らかの手筈は取っているはずだ。
セラフィム国ではエリックがレナンと従者を伴て、国王と対峙していた。
「送った手紙と、証拠の品は見て頂けましたか?」
「目は通した。オーランドが世話を掛けたようだな」
「ご子息のあの行動を見て、それだけですか?」
エリックは腕を組み、国王を見る。
「我が弟、アドガルムの第二王子に対しての態度。確かにティタンは身分を隠し学校に通っていますが、外交の際にお会いしたことがありますよね? まさかご子息は忘れてしまったのでしょうか」
「オーランドは、そういう……顔を覚えるような事が不得意だからな」
だからといって留学先の王子の顔を忘れるとは、国王も思っていなかったが。
「そうですか、では婚約者のいる女性にあのように触れようとしたのには、どんな理由が? しかも奪おうとは。セラフィムの王族への教育はどのようなものか、興味深いですね」
セラフィムの国王、ヘンデルは歯ぎしりをする。
(こんな若造に言われっぱなしとは)
こうなったのもオーランドのせいだ。
いつまでも浮ついた心と、幼稚な考え、そして傍若無人な振る舞いは、この国から出すべきではなかったと後悔する。
「申し訳ない……あれは即刻セラフィムへと戻し、二度とミューズ嬢に近づけないようにする」
ティタンとは王族として会う事もあるかもしれないが、そちらはどうしようもない。
「それでは足りません。慰謝料を要求します」
「何だと?」
国王が謝罪し、第三王子を自国へ戻すと言ったのに、まだ足りないというのか。
「そちらこそ、オーランドに傷をつけたではないか」
「あれは自衛しただけです。うちの従者は主を守るためなら何でもしますので」
エリックは長い足を組む。
「可哀そうに、我が義妹になるミューズはオーランド王子のせいで、男性恐怖症だ。謝罪だけでは足りない、もっと誠意を見せて頂きたいのですが」
「何が望みだ」
ヘンデルはこの王太子が何を求めているかは知らないが、そう切り出した。
エリックはもとからそのつもりで来たのだろうから、それを聞かねばきっと帰らない。
「話が早いですね。では本題を。こちらの望みはあのセシル=ボルドーを薬師として引き入れたい、というものです」
「セシルを?」
意外な言葉であった。
ボルドー家の三男で、可もなく不可もない男だ。
ボルドー家で持て余していたので、オーランドに与えたが、そんな男を何故指名した?
「ミューズの初めての男友達なので、学校にいる時の話相手になればと思ったのですよ。そうすれば今回生じた男性恐怖症も、少しは落ち着くでしょうから。まぁ嫌だというなら、金貨や土地でもいいですけど」
エリックは選ばせてやるという態度だ。
「金貨であれば千は欲しいですね」
「千?!」
いくら何でも高すぎる。
「ミューズの心の傷、そしてティタンを侮辱した事に比べたら安いものでしょう。どういった賠償にするかはお任せします」
ヘンデルは唸った。
法外な値段ではあるし、飲み込む必要はない。
しかし王太子自らがここまで抗議しに来たのだ。
手ぶらで帰るわけがない。
「セシルの移住権でいいというならば、それで手を打ってもらおう」
たかだか侯爵家の三男坊だ。
金貨千枚よりも安いし、オーランドを諫められなかった罰として、アドガルムに向かわせていいだろう。
オーランドも口煩いセシルを嫌がり、常々別な従者を希望していたのもある。
「交渉成立ですね、では早速契約書にサインを」
予め用意していた書類を付き添いの二コラが広げる。
「レナンすまないがもう少しだけ待っててくれ、終わったらセラフィム観光に連れて行くから」
「わたくしは大丈夫ですが、このような話をするというのは事前に言ってください。驚きましたわ」
観光って聞いたからついてきたのに、とレナンは困惑している。
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