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第27話 緊張と和み
「今日は倒れない、大丈夫!……だと思うわ」
ティタンの腕に手を添え、控えめな決意を露わにする。
あのあとドレスづくりやアクセサリー選びをし、パーティへと参加になった。
初めてのことがあり過ぎて、本当なら今すぐにでも倒れこみたいほどだ。
「緊張するよな、大丈夫か?」
お互いこういう場に参加したことは少ないが、特にミューズはこのような場はほぼ機会がなかった。
特に今日は他国の者が多い。
ミューズは話は分かるがそこまで話せるわけではないので、心配しかない。
「皆がいるから安心してくれ、俺も必ず側にいる」
優しく肩を抱かれ、ミューズは深呼吸をする。
いつも甘えてばかりなのだから、しっかりと自分の足で立たねば。
「ありがとう」
にこりと微笑み歩き出すが、人の多さと眩い照明にくらくらした。
「ミューズ!」
声を掛けられ振り向くとレナンに抱き着かれる。
「久しぶり、今日もとても可愛いわよ」
「お姉様こそ、綺麗だわ」
暫く合わなかったからか、お互い大人びて見える。
「ふわりとしたスカートが可愛い。ミューズはこういうレース多めのドレスが似合っていいなぁ、とても可愛らしくてお人形さんみたい」
「お姉様のドレスも落ち着いたデザインなのに、華やかで素敵。私もお姉様くらい身長が欲しかったわ」
互いの容姿を忖度なく褒め合う。
姉妹だけれど容姿がまるで違う二人は、お互いに憧れているのだ。
「ミューズ嬢、しばらくぶりだね。入学式以来か?」
エリックに挨拶され、ミューズは姿勢を正す。
「エリック様、お久しぶりです。姉がいつもお世話になっております」
「かしこまらずに。ティタンも今日は一緒に参加できて嬉しいよ。本当はもっと参加してもらいたいんだがな」
「申し訳ありません」
ティタンは兄に頭を下げた後、レナンに向き直る。
「レナン様も挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。不慣れではありますが、本日はよろしくお願いいたします」
「いいのよ。こちらもいつも妹がお世話になってて申し訳ないわ、大事にしてくれてありがとうね」
「とんでもございません。俺にとっても大事な人なので、ミューズの為なら何でもします」
「そういうの、もう言わなくていいのよ、恥ずかしいわ……」
ティタンの腕をひっぱり、小声で伝える。
幾度となく伝えられるそういう言葉に羞恥で顔が赤くなってしまった。
今回はレナンだけではなく、エリックも他国の人もここにはいるのだ。
大きな声でそのような事を言われては皆に聞こえてしまう。
「構わないさ。そう言うのを見せる為にも今日は二人を呼んだんだから」
エリックは気にした素振りもなく、周囲を伺う。
「こうして王族と親し気に話したり、そのように愛の言葉を言ってもらえた方が、余計な者も寄ってこない。俺達もずっと一緒に居られるわけではないが、こうして話をしている様子を周囲の者も見れば、広まるものだ」
柔らかな笑顔でエリックが優しく言ってくれた。
(このような笑顔をする方だったかしら?)
昔の記憶よりも、雰囲気が温かくなったように思える。
思わず見とれていると、ティタンとレナンが焦ってしまった。
「駄目! エリック様、ミューズを取らないで」
「ミューズ! 兄上は確かに美形で見た目はいいけれど、俺を捨てないでくれ! 兄上が相手では俺は勝てない!」
一気に騒がしくなった場に、エリックが苦笑する。
「二人とも落ち着くんだ。そんな意図がミューズ嬢にないのは二人がよく知っているだろう。そもそもレナン、ミューズ嬢を取るわけはない。君と弟の大事な人だ、そんな事をするわけない」
近くにいるキュアに、エリックが命じる。
「二人に何か気持ちがすっきりする飲み物を。冷静さをどこかに置いてきたようだ」
その姿を見送り、ミューズに視線を移す。
「溺愛令嬢と呼ばれる所以だな。二人を宥めてもらっていいか?」
「はい……」
二人の行動にこちらが恥ずかしくなる。
「あのね、二人とも。私はそんな気はないの。変な誤解はしないでね」
「でも、あんな見つめて」
レナンは目を潤ませている。
「エリック様の笑顔が変わった気がしたの。お姉様何か知りません?」
「そうなの? いつもあのような表情よ」
「いつも?」
ティタンの方が不思議そうだ。
「兄上があんな風に笑うのは珍しいですよ、いつもはこう、少し頬を上げるくらいしかしません」
「俺とて人だ。笑うくらいするだろう」
「笑いますか?」
実の弟からのそのような言葉にさすがにショックを受ける。
「笑ってる、はずだ。そうだろ、二コラ」
「いいえ、ほぼほぼないですね。こうしてレナン様が側に居れば笑いますけど、他では全く」
常に付き従う従者の言葉に頭を抱える。
「少しは、少しは人らしくなってきたと思ったのに」
ぶつぶつというエリック、王太子には王太子なりの悩みがあるようだ。
「お待たせしました」
飲み物を取りに行っていたキュアが戻ってきた。
後ろに二人の男性を引き連れて。
「見知った美人が一人でいたから、つい声をかけて一緒に来てしまった。誰だその金髪の可愛い子は」
大柄な男性が大声でミューズに話しかける。
「驚いているから、止めろ。まずは挨拶からだろ」
細身の男性が諫める。
どちらもミューズにとっては知らない人だ。
ティタンの腕に手を添え、控えめな決意を露わにする。
あのあとドレスづくりやアクセサリー選びをし、パーティへと参加になった。
初めてのことがあり過ぎて、本当なら今すぐにでも倒れこみたいほどだ。
「緊張するよな、大丈夫か?」
お互いこういう場に参加したことは少ないが、特にミューズはこのような場はほぼ機会がなかった。
特に今日は他国の者が多い。
ミューズは話は分かるがそこまで話せるわけではないので、心配しかない。
「皆がいるから安心してくれ、俺も必ず側にいる」
優しく肩を抱かれ、ミューズは深呼吸をする。
いつも甘えてばかりなのだから、しっかりと自分の足で立たねば。
「ありがとう」
にこりと微笑み歩き出すが、人の多さと眩い照明にくらくらした。
「ミューズ!」
声を掛けられ振り向くとレナンに抱き着かれる。
「久しぶり、今日もとても可愛いわよ」
「お姉様こそ、綺麗だわ」
暫く合わなかったからか、お互い大人びて見える。
「ふわりとしたスカートが可愛い。ミューズはこういうレース多めのドレスが似合っていいなぁ、とても可愛らしくてお人形さんみたい」
「お姉様のドレスも落ち着いたデザインなのに、華やかで素敵。私もお姉様くらい身長が欲しかったわ」
互いの容姿を忖度なく褒め合う。
姉妹だけれど容姿がまるで違う二人は、お互いに憧れているのだ。
「ミューズ嬢、しばらくぶりだね。入学式以来か?」
エリックに挨拶され、ミューズは姿勢を正す。
「エリック様、お久しぶりです。姉がいつもお世話になっております」
「かしこまらずに。ティタンも今日は一緒に参加できて嬉しいよ。本当はもっと参加してもらいたいんだがな」
「申し訳ありません」
ティタンは兄に頭を下げた後、レナンに向き直る。
「レナン様も挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。不慣れではありますが、本日はよろしくお願いいたします」
「いいのよ。こちらもいつも妹がお世話になってて申し訳ないわ、大事にしてくれてありがとうね」
「とんでもございません。俺にとっても大事な人なので、ミューズの為なら何でもします」
「そういうの、もう言わなくていいのよ、恥ずかしいわ……」
ティタンの腕をひっぱり、小声で伝える。
幾度となく伝えられるそういう言葉に羞恥で顔が赤くなってしまった。
今回はレナンだけではなく、エリックも他国の人もここにはいるのだ。
大きな声でそのような事を言われては皆に聞こえてしまう。
「構わないさ。そう言うのを見せる為にも今日は二人を呼んだんだから」
エリックは気にした素振りもなく、周囲を伺う。
「こうして王族と親し気に話したり、そのように愛の言葉を言ってもらえた方が、余計な者も寄ってこない。俺達もずっと一緒に居られるわけではないが、こうして話をしている様子を周囲の者も見れば、広まるものだ」
柔らかな笑顔でエリックが優しく言ってくれた。
(このような笑顔をする方だったかしら?)
昔の記憶よりも、雰囲気が温かくなったように思える。
思わず見とれていると、ティタンとレナンが焦ってしまった。
「駄目! エリック様、ミューズを取らないで」
「ミューズ! 兄上は確かに美形で見た目はいいけれど、俺を捨てないでくれ! 兄上が相手では俺は勝てない!」
一気に騒がしくなった場に、エリックが苦笑する。
「二人とも落ち着くんだ。そんな意図がミューズ嬢にないのは二人がよく知っているだろう。そもそもレナン、ミューズ嬢を取るわけはない。君と弟の大事な人だ、そんな事をするわけない」
近くにいるキュアに、エリックが命じる。
「二人に何か気持ちがすっきりする飲み物を。冷静さをどこかに置いてきたようだ」
その姿を見送り、ミューズに視線を移す。
「溺愛令嬢と呼ばれる所以だな。二人を宥めてもらっていいか?」
「はい……」
二人の行動にこちらが恥ずかしくなる。
「あのね、二人とも。私はそんな気はないの。変な誤解はしないでね」
「でも、あんな見つめて」
レナンは目を潤ませている。
「エリック様の笑顔が変わった気がしたの。お姉様何か知りません?」
「そうなの? いつもあのような表情よ」
「いつも?」
ティタンの方が不思議そうだ。
「兄上があんな風に笑うのは珍しいですよ、いつもはこう、少し頬を上げるくらいしかしません」
「俺とて人だ。笑うくらいするだろう」
「笑いますか?」
実の弟からのそのような言葉にさすがにショックを受ける。
「笑ってる、はずだ。そうだろ、二コラ」
「いいえ、ほぼほぼないですね。こうしてレナン様が側に居れば笑いますけど、他では全く」
常に付き従う従者の言葉に頭を抱える。
「少しは、少しは人らしくなってきたと思ったのに」
ぶつぶつというエリック、王太子には王太子なりの悩みがあるようだ。
「お待たせしました」
飲み物を取りに行っていたキュアが戻ってきた。
後ろに二人の男性を引き連れて。
「見知った美人が一人でいたから、つい声をかけて一緒に来てしまった。誰だその金髪の可愛い子は」
大柄な男性が大声でミューズに話しかける。
「驚いているから、止めろ。まずは挨拶からだろ」
細身の男性が諫める。
どちらもミューズにとっては知らない人だ。
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