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第31話 平穏
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あの後の事は全てお任せしたので、ミューズは詳しくは知らない。
聞いても心労を考慮され、教えて貰えなかったのもある。
とりあえずオーランドに会う事はもうないだろう、生まれが良くてもあのようにして身を事も滅ぼすこともあるのだな、としか思えなかった。
感傷に浸れるほど彼の事を知らないし、自分に出来ることは何もない事もわかっている。
「ルアネド様の言ったことは本当なのかしら」
薄情かもしれないけれど、グウィエンが男性も口説くのかという方が気になってしまって、その事が頭から離れなかった。
「皆さまありがとうございました」
改めて兄夫婦とその友人にお礼を言いに、ティタンは一人王城へ来た。
二人が国へ帰る前にしっかりと感謝の意を伝えたかったのだ。
「面白かった! またあのような場があったら教えてくれ」
焼き菓子をつまみながらグウィエンはにこやかにそう言う。
「ティタン様、お気になさらずに。俺もエリックには相当助けられているから、微力だけど今回こうして力を貸せて良かった」
ルアネドは静かに微笑んでいた。
「これでミューズも残りの学生生活をゆっくりと過ごせますね」
レナンもホッとしたようだ。
今回の騒動は貴族たちの間で自然と伝わっていくだろう。
そこから学校に通う令嬢、令息へと伝わり、ティタンの本当の素性と、ミューズへの溺愛の訳が分かるはずだ。
オーランドの所業も伝わるだろうし、彼が最早威張れるような場所はなくなる。
もっともこの度の失態で国から出ることも出来ないのだが。
「他の生徒たちにとっては、これからは少し穏やかではない生活となるかもしれないがな」
エリックが突き放すような言い方をして目を細めている。
セシルやマオなどの事情を知っているものはまだいい。
しかしそれらを知らず、悪評を信じていた者や、二人を悪しく言っていた者は戦々恐々としているだろう。
ティタンとミューズの背後にはアドガルム国だけではなく、シェスタ国とパルス国もついたのだ。
迂闊な事をして機嫌を損ねてはいけないと考えるだろう。
「それでも物怖じせずにいる者はぜひスカウトしたいな」
最有力はキール=ガードナー伯爵令息。
彼だけは何を聞こうと淡々としており、ティタンと変わらぬ関係を保っているらしい。
「剣の才能もあるとルドからも聞いている。今度直に会いに行くか」
ティタンの側にいる護衛騎士の言葉だ。
有能な人材は大歓迎だ、ぜひ直接話をしたい。
「ルドとはあの双子の騎士か。懐かしい、ライカも元気か?」
二人は元シェスタ国の者だ。
グウィエンも昔何度か言葉を交わしてた事がある。
「パーティにいたのに見てなかったのか?」
「レナン嬢とミューズ嬢に目が行ってしまってな。気づかなかった」
ははっと笑うグウィエンの様子に、ティタンもまたルアネドの言葉を思い出す。
「顔に出てますよ、ティタン様」
ルアネドにそう言われ、思わず目を逸らす。
「何の話だ?」
「俺達がグウィエンに口説かれた話だよ、気になるみたいだ」
その言葉にエリックは顔を顰め、グウィエンは思い出す。
「そういえばあったな、そんな事。昔のエリック達は本当に線が細くて美人で女の子のようで……」
「止めろ! 虫唾が走る」
エリックが剣に手を掛けたのを見て、ルアネドが剣の柄に手を置いてそれを止める。
「忘れてくださいと言ったでしょう? この件は俺よりもエリックの方が気にしているらしい」
「……申し訳ありません」
蒸し返すのはもう止めよう。
ただレナンだけが続きを聞きたくてがっかりしている様子が見えた。
聞いても心労を考慮され、教えて貰えなかったのもある。
とりあえずオーランドに会う事はもうないだろう、生まれが良くてもあのようにして身を事も滅ぼすこともあるのだな、としか思えなかった。
感傷に浸れるほど彼の事を知らないし、自分に出来ることは何もない事もわかっている。
「ルアネド様の言ったことは本当なのかしら」
薄情かもしれないけれど、グウィエンが男性も口説くのかという方が気になってしまって、その事が頭から離れなかった。
「皆さまありがとうございました」
改めて兄夫婦とその友人にお礼を言いに、ティタンは一人王城へ来た。
二人が国へ帰る前にしっかりと感謝の意を伝えたかったのだ。
「面白かった! またあのような場があったら教えてくれ」
焼き菓子をつまみながらグウィエンはにこやかにそう言う。
「ティタン様、お気になさらずに。俺もエリックには相当助けられているから、微力だけど今回こうして力を貸せて良かった」
ルアネドは静かに微笑んでいた。
「これでミューズも残りの学生生活をゆっくりと過ごせますね」
レナンもホッとしたようだ。
今回の騒動は貴族たちの間で自然と伝わっていくだろう。
そこから学校に通う令嬢、令息へと伝わり、ティタンの本当の素性と、ミューズへの溺愛の訳が分かるはずだ。
オーランドの所業も伝わるだろうし、彼が最早威張れるような場所はなくなる。
もっともこの度の失態で国から出ることも出来ないのだが。
「他の生徒たちにとっては、これからは少し穏やかではない生活となるかもしれないがな」
エリックが突き放すような言い方をして目を細めている。
セシルやマオなどの事情を知っているものはまだいい。
しかしそれらを知らず、悪評を信じていた者や、二人を悪しく言っていた者は戦々恐々としているだろう。
ティタンとミューズの背後にはアドガルム国だけではなく、シェスタ国とパルス国もついたのだ。
迂闊な事をして機嫌を損ねてはいけないと考えるだろう。
「それでも物怖じせずにいる者はぜひスカウトしたいな」
最有力はキール=ガードナー伯爵令息。
彼だけは何を聞こうと淡々としており、ティタンと変わらぬ関係を保っているらしい。
「剣の才能もあるとルドからも聞いている。今度直に会いに行くか」
ティタンの側にいる護衛騎士の言葉だ。
有能な人材は大歓迎だ、ぜひ直接話をしたい。
「ルドとはあの双子の騎士か。懐かしい、ライカも元気か?」
二人は元シェスタ国の者だ。
グウィエンも昔何度か言葉を交わしてた事がある。
「パーティにいたのに見てなかったのか?」
「レナン嬢とミューズ嬢に目が行ってしまってな。気づかなかった」
ははっと笑うグウィエンの様子に、ティタンもまたルアネドの言葉を思い出す。
「顔に出てますよ、ティタン様」
ルアネドにそう言われ、思わず目を逸らす。
「何の話だ?」
「俺達がグウィエンに口説かれた話だよ、気になるみたいだ」
その言葉にエリックは顔を顰め、グウィエンは思い出す。
「そういえばあったな、そんな事。昔のエリック達は本当に線が細くて美人で女の子のようで……」
「止めろ! 虫唾が走る」
エリックが剣に手を掛けたのを見て、ルアネドが剣の柄に手を置いてそれを止める。
「忘れてくださいと言ったでしょう? この件は俺よりもエリックの方が気にしているらしい」
「……申し訳ありません」
蒸し返すのはもう止めよう。
ただレナンだけが続きを聞きたくてがっかりしている様子が見えた。
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