ひきこもりぽっちゃり令嬢とウールドール ~人形がつなぐ優しい恋~

しろねこ。

文字の大きさ
9 / 27

第9話 婚約

しおりを挟む
「本当にしゃべるなんて……」

 驚きしかないわ。まさか、ウールドールがしゃべるなんて……どうなってるの?

「色々あってね……今度詳しく話すよ」

「ぜひ今教えて欲しい所なんだけど……」

「あまり遅くなるとイティルラに悪いからね。ここに人が来ないようにって頼んでいたから。それと……」

 こそっとディフェクトに耳打ちされる。

(チェリちゃんの事は秘密に、か。そうよね)

 話をするウールドールなんて知られたらまずいものね。

「あの人たちはいいの?」

 少し離れたところにいる護衛の人たちをちらりと見る。

「信頼できる者達だから、大丈夫」

「あの人たち偶におやつくれるのにゃ」

 ぺろりとチェリちゃんが舌なめずりしている。

(おやつ、食べるんだ……)

 何だか意外なような、そうでもないような。

 一体何を食べてるのかしら?

「私ともこれから仲良くしてもらえるかしら」

 おずおずと手を伸ばせば、チェリちゃんが私の手に乗ってくれる。

「もちろんだにゃ。というか女の子の方がやはりいいにゃあ、ディフェクトは扱いが雑でにゃ」

「そうなの?」

 普段チェリちゃんはイティルラ様と共にいるのだけれど、今回ははっぱをかける為にディフェクト様についてきたらしい。

 押しの弱いディフェクト様が心配になって、つい口出ししてしまったそうだ。

「エストレアもあまりネガティブになるんじゃにゃーよ。あんたは本当にいい子にゃだからね」

「ありがとう……凄く流暢にお話出来るのね、凄いわ」

 こんなにもぺらぺらと話せるなんで、どんな勉強をしたのかしら。

「チェリちゃんはいつから話せるようになったの?」

「んー、ディフェクト達のところに来た時くらいかにゃ」

「なんで話せる事が出来るようになったの?」

「エストレア、それは後で詳しく話すからそろそろ戻ろう。時間だいぶ経ってしまったし」

「そうね」

 謎は残るものの、ディフェクト様のうながしで会場に戻る事にした。

 確かにあまり会場を離れすぎるのは良くないわね。私の誕生パーティーとして集まってくださっているのだから。
 
(私の部屋にいる子たちも、お話出来るのかしら)

 部屋にいくつかウールドールはあるけれど、話をしたり動き出したなんて見たことはない。

 他の人からもそういう話は聞かないし、なんでチェリちゃんだけそうなったのかしら?

(そう言えば、いつの間にか呼び捨てになっているわ)

 いつの間にかディフェクト様の呼び方が変わってるのに気づく。意識してしまったからには顔は熱くなるし、汗もかくし。

(どうしよう、他の人にも気づかれたら……)

 下を向き、頬を手で隠す。どうかバレませんように。




 ◇◇◇




「何とめでたい」

 あの後私はディフェクト様と共に戻り、パーティー終わった後にお父様に報告をした。

 チェリちゃんの事は一応伏せている。

(まだわからないことがあるけれど、後でイティルラ様と共に説明してくれると言っていたし)

 とりあえず、ディフェクト様を信じて余計な事を言わないようにしよう。

「それにしてもあの幼かったエストレアが婚約なんな、本当に嬉しい……」

 お父様が泣いているけれど、そこまでの事だろうか。

「ずっと気にしていたもの、少し泣かせてあげて」

 お母様の言葉になるほどと思った。

 きっとずっと前のあの事を気にしていたのだろう。

「もう、大丈夫よ。お父様……私は大丈夫」

「大丈夫です、これからは僕が守りますから」

 私とディフェクト様は共にお父様と約束する。きっと大丈夫よ。

「ディフェクト様ありがとうございます、そう言ってもらえるだけでも心強いですわ」

 お父様の前でも私を気遣う言葉を言ってくれて嬉しい、そんな思いだったのだけれど、ディフェクト様の表情がややいつもと違うような?

「むしろそいつが何かしてきたら潰すから安心して」

「?」

 きっと冗談であろう、だって変わらず笑顔だし。冗談、ですよね?

「それにしても良かったわ、どうなるかと思っていましたもの」

 イティルラ様が私の腕を取り、その身を寄せてくる。

「あの、イティルラ様、近いです」

 良い匂いがふわりと香ってくる。女性同士とは言え、こんなにも美しい顔が近くに来ると照れくさいわ。

「あら、良いじゃないの。だってディフェクトと婚約という事はエストレア様とわたくしは義姉妹になる、つまり家族ですわ」

 より強くイティルラ様に抱き着かれ、困惑してしまう。

「ずるい、イティルラ」

 ディフェクト様はなんだか悔しそうだ。

「ふふん、あなたばかりにエストレアを渡せませんからね」

 勝ち誇る表情のイティルラ様は、ちょっぴりいじわるな感じに見えてしまう。

「シルバーニュ伯爵様、今度王都に来た際には王城へとお越しください。この婚約についての書類を交わしましょう」

 そうだ。家同士の繋がりでもあるから当主であるお父様の承認やサインが必要になるのだわ。

「ぜひよろしくお願いします」

「そう言えば私一人っ子なのですが、ディフェクト様がここに婿に来てくれるって事でしょうか?」

 王族なのに、こんな特徴のない伯爵領でいいの?

「そうだよ、僕、一生懸命勉強して、シルバーニュ領を支えるから安心して」

「わたくしも、形は違えどエストレア様を助けるお手伝いをします。えぇ、必ず」

「よく国王陛下が許してくれたわね……」

 思わずぽつりと呟いてしまう。

「まぁ容易ではなかったけれど、僕とイティルラで説得したからね、許してもらえたよ」

 お父様もイティルラ様も頷いている。

「そこまでしていてくれたなんて……」

 私の知らないところでみんな色々な事をしてくれていたようだ。

(私に出来ることは多くないけれど、出来る限りの事をしたい) 

 二人が私を支えてくれるというのなら、私もその期待に応えたい。

 守られてばかりではいけないわ、私も頑張らないと。



「でもあと数日で王都に帰らなきゃいけないんだよね……婚約したばかりで離れるのは寂しいけれど、あと一年で学園に入学する。そうしたら一緒の寮で過ごせるだろうから、それまで待っていてね」

 ディフェクトが悲しそうな顔をする。

「あと一年、私も勉強を頑張りますから。それまでどうかお二人共お元気で」

「そう言われると帰りたくありませんね。わたくしここに残ろうかしら」

「イティルラずるい、僕だって残りたいよ」

「それはちょっと……」

 お父様とお母様が苦い顔になっている。

 その数日後、二人と約束をして別れた。

 手紙での交流が主なのは変わりないけれど、それでも気兼ねないやり取りでより親密に交流は深まっていく。

 それとディフェクト様との婚約により、新たな夢が出来た。

「ディフェクト様の隣に立つにふさわしい女性にならないと」

 学園に通うようになれば色々な人に会う。お見合いの時の男性にも。

 その時にディフェクト様に恥をかかせるような事はしたくない。

「私一人の力ではどうしようも出来ないわ」

 まず何からしたらいいのかを考え、イティルラ様に相談をする。どうしたら痩せられるかと、その体型を維持できるかと。

「まずは間食を減らす事、そして適度な運動でしょうか」

 イティルラ様はそう言って、色々な方法を教えてくれた。運動や好きなものを我慢するというのは大変だけれど、以前よりもシュッとしてきた気がする。

 それと共にディフェクト様とお父様にそれとなく頼んでくれたみたいで、二人から贈られるお菓子のプレゼントも極端に減った。

 ここまでしてもらったんだもの、入学まで絶対に痩せてみせるわ!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。) この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。 両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。 この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。 自分が悪役令嬢と知ったソフィア。 婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が! 驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。 死亡フラグが立ってしまったーー!!?  早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。 そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。 しかも、正式に求婚されてしまう!? これはどういうこと!? ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。 なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。 攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。 中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。 ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!? ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体などに一切関係ありません。 誤字脱字、感想を受け付けております。 HOT ランキング 4位にランクイン 第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品 この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

思い込み、勘違いも、程々に。

恋愛
※一部タイトルを変えました。 伯爵令嬢フィオーレは、自分がいつか異母妹を虐げた末に片想い相手の公爵令息や父と義母に断罪され、家を追い出される『予知夢』を視る。 現実にならないように、最後の学生生活は彼と異母妹がどれだけお似合いか、理想の恋人同士だと周囲に見られるように行動すると決意。 自身は卒業後、隣国の教会で神官になり、2度と母国に戻らない準備を進めていた。 ――これで皆が幸福になると思い込み、良かれと思って計画し、行動した結果がまさかの事態を引き起こす……

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

処理中です...