ひきこもりぽっちゃり令嬢とウールドール ~人形がつなぐ優しい恋~

しろねこ。

文字の大きさ
24 / 27

第22話 離宮散策

しおりを挟む
 イティルラ様と侍女のミオさんが離宮を案内してくれるという事で、私とリーレンはその後ろをついていくと、その途中でディフェクト様とも合流する。

「ディフェクト様も一緒に来て下さるのですね」

「もちろんだよ。色々と気になる事もあるだろうし、早くここに慣れてもらいたいからね」

 ディフェクト様の後ろには従者の方がいる。名前は確か……。

「レイズです。俺も同行させていただきますね」

(そうだわ、レイズさんだわ)

「はい、よろしくお願いします」

 ぺこりと礼をしたけれど、目を反らされてしまった。

「レイズ。笑顔とまでは言わないけれど、もう少し愛想を良くしてくれたらいいな」

「……善処します」

 淡々と話すレイズさんにディフェクト様は苦笑する。

「ごめんねエストレア、レイズは昔から表情が硬くてね。ずっと言ってはいたんだけど、もっと気を付けてもらうようにするから」

「大丈夫ですから、気になさらないでくださいね」

 昔から、というからレイズさんとの付き合いも長いのだろうな。

(レイズさんは話すのが苦手なのかもしれないわね、私もそうだから気持ちはわかるわ)

 無理強いする事はしたくないけれど、少しずつでも距離が縮まればいいな。ミオさんもレイズさんも二人にとって大切な人だろうし、私も仲良くしていきたい。

「ミオさん、レイズさん、色々教えて頂けると嬉しいです。至らない点もあるかとは思いますが、頑張っていきますので」

「いえいえエストレア様、それはこちらの台詞ですよ、こちらこそご不便をかけませぬよう、精一杯仕えさせていただきますのでよろしくお願いします」

「ミオの言う通りです。俺達の方が至らない点が多いかと思いますが、しっかりと補佐を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします」

 二人が深々と頭を下げたのを見て、リーレンまで頭を下げる。

「あたしの方がまだまだですので、あたしもよろしくお願いします!」

「皆そこまで大げさにしなくていいんだよ。僕達もなるべく自分の事は自分でと努力するけれど、力を貸してくれるとありがたいなってぐらいだから」

 ディフェクト様が場を収めるように、間を取り持ってくれる。

「わたくし達としましても、仲良くやっていければと思いますわ。ですから皆で話をしながら回りましょう。さぁここであぁだこうだ言ってても進みませんし、この後お茶の時間もありますから、さっさと行きますわよ」

 イティルラ様が私の腕を引きながら、階段の方へと進んでいく。

「まずは三階へと行きましょう、上には図書室がありますわ」

 本を読むのは好きだわ、ぜひゆっくりと見て回りたいものね。

(今度時間があるときにでもこもらせてもらいたいな)

 どのような本があるのかわくわくするわ。

「三階には図書室の他にもゆっくりと勉強するための部屋もあるよ。二階はそれぞれの部屋があってプライベートな空間を意識してるんだ。一階は応接室や食堂、客室など人を招いても大丈夫なように作っているんだ」

 ディフェクト様が私の隣に並び、手を取って説明してくれる。

「この離宮にいる者達はチェリの事を知っている。信頼できる者達だけにしたからね」

 だからチェリちゃんもあのように籠でゆっくりと眠っていたのね。

「そういえばチェリちゃんは?」

 いつもはイティルラ様と一緒と聞いたけれど、見た感じ共にいる様子は見えない。

「まだお昼寝したいというから寝せていますわ。グレースに見守りを頼みましたので、起きたら連れてきてもらいます」

「グレースさんが見てくれているなら、安心ですね」

「そうだね。ここにいる者達とは幼少期からの知り合いだから、ほぼ家族みたいなものだね。だから皆ここに残ってもらったんだ」

 ディフェクト様達はここで生まれ育ってきたらしい。

 グレースさんは今でこそ侍女長であるが、もともとはイティルラ様の乳母だったそうだ。ディフェクト様の乳母はレイズさんの母親だそう。

(幼馴染の絆があるという事よね)

 こんなにも信頼しているのはそういう理由だったのね、納得だわ。

「僕達は双子だからという事で二人一緒にここで過ごしたんだ。少し古くなってきたから、エストレアが来る前に改修工事はしてもらったんだけれど、他にも希望があったら教えて欲しいな」

「ありがとうございます」

 古さなどは全く感じないのは、その為かしら。

「結構広いのですね」

 私の家よりも広いような……? まぁ王家の方が住むところですものね、比べるのがおこがましいわよね。

「図書室も、本がたくさんありますね」

 部屋が広いのはもちろん、蔵書の数も多い。

「二人共本が好きなのはあるけれど、色々と勉強があるからね……」

 王族としての教育だろうか。

(そうなると調べものとか本を見る機会は増えるものね)

 パッと見ただけでも、辞書や歴史書などが多く見える。これほどの勉強をしてきたって事だろう。

 本を見て回っているとディフェクト様が言いにくそうな表情で口を開く。

「エストレア……伝えるのが遅くなって申し訳ないんだけれど、学園の勉強以外にも王子妃としての勉強も受けて欲しいんだ。もちろんそんなには量は多くないし、僕もサポートするけれど、婚約中でも外交とかで僕と共に招かれることが出ると思うから……」

「はい、わかりましたわ」

 ディフェクト様の妻となるならば、多少は必要だろうと覚悟はしていた。

(いずれシルバーニュ領に戻るわけだけれども、ディフェクト様が王族であることは変わらないもの。ここにいるうちもシルバーニュ領に戻った後も、王子の婚約者として、配偶者として人前に出る事くらいあるわよね)

 それに、ベリンダ様に負けたくない。

 いまだにディフェクト様を諦めていないというなら、尚更頑張らないといけないわね。

 三階を回った後は二階、一階と部屋の説明を受けながら下りていく。

「最後に中庭でお茶をしましょう、おススメの場所ですわ」

 薦められて中庭に出れば、そこには綺麗な花が咲き乱れている。

 見覚えのある植物もちらほら見かけられた。

「シルバーニュ伯爵家のものと同じものをいくつか植えてもらったんだ。少しは寂しくないかなって」

「ありがとうございます、このようにお気遣いを頂いてしまって……」

 馴染のある景色にしばし郷愁に駆られ、魅入ってしまった。

「少しでも気持ちが晴れたならよかった」

 ディフェクト様がホッとした表情で見つめてくる。

「ベリンダの事があったからね、嫌な思いをしただろうと心配だったんだ。ごめんね、僕がはっきりしないばかりに……」

「いえ、私も早とちりしてしまって、すみませんでした」

「エストレアは悪くありませんわ。スパッと言わなかったディフェクトが悪いのです。わたくしなら堂々と言いますわ、エストレアが一番だと」

 イティルラ様の言葉にディフェクト様が眉間に皺を寄せる。

「僕だってエストレアが一番だよ。この世界で一番愛している」

「ディフェクト様……」

 思いもよらない告白に顔が熱くなってしまう。恥ずかしさと困惑で顔を上げられないわ。

「本心だよ。三年間、シルバーニュ領を離れることになって寂しいとは思うけれど、僕が支えるから、どうか側にいてね」

 ディフェクト様の気遣いは嬉しいものの、時と場所を選んで欲しいな。

 こんなの……今にも倒れちゃいそう……



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。) この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。 両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。 この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。 自分が悪役令嬢と知ったソフィア。 婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が! 驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。 死亡フラグが立ってしまったーー!!?  早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。 そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。 しかも、正式に求婚されてしまう!? これはどういうこと!? ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。 なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。 攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。 中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。 ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!? ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体などに一切関係ありません。 誤字脱字、感想を受け付けております。 HOT ランキング 4位にランクイン 第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品 この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

思い込み、勘違いも、程々に。

恋愛
※一部タイトルを変えました。 伯爵令嬢フィオーレは、自分がいつか異母妹を虐げた末に片想い相手の公爵令息や父と義母に断罪され、家を追い出される『予知夢』を視る。 現実にならないように、最後の学生生活は彼と異母妹がどれだけお似合いか、理想の恋人同士だと周囲に見られるように行動すると決意。 自身は卒業後、隣国の教会で神官になり、2度と母国に戻らない準備を進めていた。 ――これで皆が幸福になると思い込み、良かれと思って計画し、行動した結果がまさかの事態を引き起こす……

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

処理中です...