ひきこもりぽっちゃり令嬢とウールドール ~人形がつなぐ優しい恋~

しろねこ。

文字の大きさ
26 / 27

第24話 学園内

しおりを挟む
「それでは皆さん、これから三年間共に過ごすわけですが、同じ学校の仲間として、そして国の為に頑張る同志として、仲良くとまでは行かなくても自分とそして民に恥じない生き方を心がけてください」

 クラス全員の自己紹介が終わり、ランディ先生が静かに話し始める。

(民に恥じない、か)

 何ともスケールの大きな話に、気が引き締まる。

 私が何か失態をしてしまったら、お父様やお母様などシルバーニュ領の人達、そして私を認めてくれたディフェクト様とイティルラ様にご迷惑が掛かってしまう。

 そうならないように気を付けないといけないわ。

「それでは今度は学園内を案内しましょう。皆さん資料を見たと思いますので、場所の確認くらいですが」

 ランディ先生の後に続いて皆で教室を出る。

「上階には上級生がいますが、普通の生活をしている分には特に行かないとは思いますので、紹介は省かせてもらいますね。なのでまずは訓練所から行こうと思います」

 一度外に出て、別な棟へと向かう。まずは訓練所へと着いた。

「ここでは主に魔法の練習をします。ここの壁は特殊で魔法によるダメージを防ぐ仕掛けを施しておりますので、外ではけして使わないように」

 確かになんだか壁に模様みたいなのが書いてあるわね。

(外で、なんて使用するつもりはないけれど)

 そもそも魔法……苦手なのよね。

「不安な時はわたくしが教えて差し上げますから」

 私のため息に気付いてか、イティルラ様が寄り添ってくれる。

「ありがとうございます、でも大丈夫です。そんなに使う事もないでしょうし」

 学園で学ぶ魔法は主に魔獣や魔物と対抗するものだけれど、最低限のレベルを学べばよかったはず。

 騎士や魔術師などを目指すならば別だけれど、そういう人向けの専門の学科は二年生になる時に選べるらしい。

 一年生の時は基礎と適性を見るそうだ。

 その後は実験室や運動場、訓練所などを見て回ってから元の棟に向かう。

 一階にある食堂や職員室などの必要な設備の確認をして教室へと戻った。

「皆さん。卒業したら一人前の貴族としてこの国で活躍されると思います。ここではそのためのお手伝いをしますが、この学園での生活はその為の疑似的な社会だと考えてください。ここでの人間関係や実績、生活態度などこれからの人生に関わっていきます。気を引き締めてよい学園生活を送ってください」

 その様な事を言われると気が引き締まるわね。

 ここに通う事になった時点で既に社会人の様なものだ。もう子どもではないと言いたいのだろう。

「とはいえ集団生活内では予想外の事も起こりやすいもの、わからない事も多々出てくるかと思います。その場合はわからないままにせずに、いつでも聞きに来てください。優秀な皆さまであればそのままにしておくことが、いかに思わしくない事かわかりますよね。恥ずかしがらずどんどんと来てください」

 先生の言葉に頷いてしまう。

(わからない事私もいっぱいあるし、自信もないから、なるべく聞きに行かせてもらおう)

 とりあえず慣れる事が大事ね。三年もあるのだから、ぜひ有意義に過ごさなくては。

 そうして先生の話を聞いている内に、お昼を告げるチャイムが鳴った。

「もうお昼なのね」

 自己紹介や学校案内の後、少しだけ授業を行なったのだけど、あっという間に授業が終わってしまったわ。

 この国の歴史から始まり、最近あったニュースや他国との情勢などの話であったが、初めて聞く話が多く、楽しくて熱中し過ぎてしまってすっかり気づかなかった。

「それではこれで授業を終わります。また午後の授業で会いましょう」

 先生が教室を出て行ったあと、イティルラ様が私のところへと来てくれる。

「終わりましたね、授業はいかがでした?」

「楽しかったです、聞いたことのない事も多くて、興味深かったです」

 そう言うとイティルラ様は苦笑される。

「エストレアにはこういう授業が合うようね。わたくしはちょっと、肩が凝ってしまったわ」

 肩を擦りながら、イティルラ様は疲れた表情をされる。

「そうなのですね。私はまだ少し覚えきれていないので、帰ってからもう一度教科書を読もうと思います」

「ふふ、無理しないでね」

 微笑むイティルラ様に不思議に思う。

「イティルラ様、なんだか楽しそうですね」

「ごめんなさい、エストレアが嬉しそうにしているからつられてつい、ね」

 そんなに楽しそうにしていたかしら。

「さ、食事を食べに行きましょうか。その前に、エストレアに紹介したい人がいるの」

 イティルラ様が手招きをすると二人の令嬢が側に来てくれる。

「フェリーサとミストラルよ、二人共エストレアをよろしくね」

「エストレアです、よろしくお願いします」

 二人はにこにこと笑顔だ。

「フェリーサです、よろしくお願いします。イティルラ様に聞いていた通り、可愛らしい方ですね」

「ミストラルです。本当可愛いわね。これからよろしくね」

 二人共気さくに挨拶をしてくれる。

「二人とは家の都合で知り合ったの。これから仲良くしてもらえたら嬉しいですわ」

 とても素敵そうな二人だわ。それにイティルラ様と親しいなら、きっといいひとよね。

「よければこれから一緒にお食事はいかがかしら」

「は、はい」

 ディフェクト様はどうするのかと思いきや、ディフェクト様はディフェクト様で男性の方と話をしている。

「夕食は一緒ですから、大丈夫よ。ディフェクトも将来シルバーニュ領に力を貸してくれそうな人脈を確保するなどあるから気にしないで」

「そうなのですね」

 もうそう言うのが始まっているのか。

 それならば寂しいとは言っていられないのかも。

 ちらりと目が合うと、ディフェクト様は私に向かって微笑んでくれる。

「エストレア、また放課後ね」

 私の為にそう言ってくれるのはありがたい。

「はい、また後でお待ちしてますね」

 私とイティルラ様とご友人二人、そしてミオさんもついてくる。

「ミオは護衛も兼ねて側にいるつもりだけど……巻き込んでいいかしら」

「えぇもちろん、多い方が楽しいものね」

 きゃいきゃいと皆で騒ぎながら、食堂へと向かう。

「クラスや学年で大体使う所は決まっているけれど、わたくし達には個室があるから」

 王族専用の部屋があるらしい。

 昔は他の皆と一緒に食堂を使っていたらしいけれど、むやみに近づこうとするものや、薬を盛られそうになったりとか、色々あったから個室を作ったそうだ。

「信用できる者しか入れられないようにしてもらっているわ」

 食事も特別に作ってもらえるそう、凄い。

「お邪魔します……」

 そうして部屋に入るとディフェクト様達もいたわ。

「あれ、どうしてここに?」

「うっかりしてたけれど、実はね……」

 今までは入学しても王族は一人であったから余分な部屋はないそうだ。

 双子だからとテーブルは増えたけれど、部屋は別々にならなかったらしい。

「ふふ、結局一緒ですね」

「そうだね」

 ディフェクト様とお互いに顔を見合わせて笑ってしまった。

 思いがけない事であるけれど、こうして一緒なのは嬉しいな。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。) この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。 両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。 この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。 自分が悪役令嬢と知ったソフィア。 婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が! 驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。 死亡フラグが立ってしまったーー!!?  早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。 そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。 しかも、正式に求婚されてしまう!? これはどういうこと!? ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。 なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。 攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。 中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。 ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!? ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体などに一切関係ありません。 誤字脱字、感想を受け付けております。 HOT ランキング 4位にランクイン 第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品 この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

思い込み、勘違いも、程々に。

恋愛
※一部タイトルを変えました。 伯爵令嬢フィオーレは、自分がいつか異母妹を虐げた末に片想い相手の公爵令息や父と義母に断罪され、家を追い出される『予知夢』を視る。 現実にならないように、最後の学生生活は彼と異母妹がどれだけお似合いか、理想の恋人同士だと周囲に見られるように行動すると決意。 自身は卒業後、隣国の教会で神官になり、2度と母国に戻らない準備を進めていた。 ――これで皆が幸福になると思い込み、良かれと思って計画し、行動した結果がまさかの事態を引き起こす……

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

処理中です...