1 / 22
序章
婚約破棄ですか、どーぞどーぞ
しおりを挟む
とあるパーティの始まり、キラキラしたシャンデリアや着飾った色とりどりのドレス、まさしく女の子が憧れる世界で、私は開場中の視線を一身に浴びていた。
私の前には、婚約者であった国の第二王子である竜胆裕貴が仁王立ちしている。そして、彼の腕に縋り付く少女はこちらを心配そうに見つめている。
あー。ついにこの時がやって来た。悪役令嬢として転生した私は、ここで婚約破棄される。この花園学園中等部卒業パーティで。この学園は、ゲーム世界で大都市である帝都に位置するエリート校だ。いわゆる東大のようなもの。
そのパーティで、裕貴は私のメンタルをこれでもかと痛めつけるつもりなのだ。そりゃあ、ゲーム通りの藤峰織花ならば信じられない裏切りに呆然とするだろう。しかし、舐めてもらっては困る。私が織花として覚醒したのは幼少期、当然この未来を予測していた。だから、学園生活でものんびりまったり過ごしてきたのだ。決してヒロインを虐めてなどいない。
それはつまり、私が責められる必要はどこにもないということになる。そう結論づけて、私は真っ直ぐに彼らの視線を受け止める。
「…わたくしに何か御用でしょうか?」
私がにっこり微笑んで尋ねると、裕貴はぴくりと眉根を寄せる。おや、気に触ったようだ。どうも、織花としてゲームを見ていると裕貴はキレやすいんじゃないかと思える。カルシウムを摂らないから怒りっぽいんだよ。背も伸びないんだよ。
私の心の声は聞こえていないだろうに、裕貴は怒りの顔でより大きな声を出した。
「御用だと?笑わせてくれる!お前が百合亜を泣かせたのだろう!」
「ひ、裕貴君、私のことはもういいから…っ」
そう言いながら、姫咲百合亜はこちらに哀れみの視線を向ける。しかし、そこには確かな優越感も含まれていた。
…うわぁ。ヒロインってこうして見ると嫌な女の子だわ。何か生理的に無理!よく疑問抱かずにゲームできたなぁ私。
正直キレやすい裕貴も性格悪そうな百合亜もごめんである。さっさとさよならしたい。しかし、身分の都合上、私から婚約破棄を申し出ることは出来ない。こればっかりは仕方がない。
「おい、聞いているのか?」
「聞いているので続きをどうぞー」
めんどくさいので返事が少し雑になった。が、裕貴は元々怒っているのでそんなに変わらない。百合亜は違和感を感じたように、首を傾げただけだ。
「大日本帝国の第二王子と藤峰織花との婚約を、ここで破棄とする!」
「まぁ、ありがとうございます!百合亜さんと末永くお幸せにー」
さぁ、イベントは終わった。後は適当にご飯をつまんで帰ろう。
私の態度に意表を突かれたように固まる裕貴と百合亜だったが、我に返った裕貴は彼女を連れてその場から立ち去って行った。
彼らがいなくなった途端、周りで様子を窺っていた生徒がぞろぞろ集まってくる。
「織花さん!大丈夫でしたか?わたくし達、何もできなくてごめんなさい」
一人の女子生徒が謝罪すると、他の子達も私に声をかけてきた。仕方ない、相手は王子だしね。
「まったく、あの女の顔見ましたか?笑っていましたのよ!むかつく!」
「ま、まぁまぁ、令嬢がそのような言葉を使うものではありませんわ」
予想以上に皆が怒っていた。私よりも凄まじい怒りだ。本来、この場面で織花の味方はいなかった。しかし、私が中等部で平和的に過ごしたおかげか、こうして慰めてくれる友人を得ることができた。私は幸せ者だ。
「さて、気を取り直してご飯でも頂きません?せっかくの祝いの席ですもの。ね?」
「織花さんがそう言うなら…。でも、これだけは分かってくださいませ、わたくし達は織花さんから離れませんわよ」
「えぇ!色々と危なっかしいですし!」
えっ?どこが?
胸に抱いた疑問はしかし、その後の談笑の中で消えていった。
私の前には、婚約者であった国の第二王子である竜胆裕貴が仁王立ちしている。そして、彼の腕に縋り付く少女はこちらを心配そうに見つめている。
あー。ついにこの時がやって来た。悪役令嬢として転生した私は、ここで婚約破棄される。この花園学園中等部卒業パーティで。この学園は、ゲーム世界で大都市である帝都に位置するエリート校だ。いわゆる東大のようなもの。
そのパーティで、裕貴は私のメンタルをこれでもかと痛めつけるつもりなのだ。そりゃあ、ゲーム通りの藤峰織花ならば信じられない裏切りに呆然とするだろう。しかし、舐めてもらっては困る。私が織花として覚醒したのは幼少期、当然この未来を予測していた。だから、学園生活でものんびりまったり過ごしてきたのだ。決してヒロインを虐めてなどいない。
それはつまり、私が責められる必要はどこにもないということになる。そう結論づけて、私は真っ直ぐに彼らの視線を受け止める。
「…わたくしに何か御用でしょうか?」
私がにっこり微笑んで尋ねると、裕貴はぴくりと眉根を寄せる。おや、気に触ったようだ。どうも、織花としてゲームを見ていると裕貴はキレやすいんじゃないかと思える。カルシウムを摂らないから怒りっぽいんだよ。背も伸びないんだよ。
私の心の声は聞こえていないだろうに、裕貴は怒りの顔でより大きな声を出した。
「御用だと?笑わせてくれる!お前が百合亜を泣かせたのだろう!」
「ひ、裕貴君、私のことはもういいから…っ」
そう言いながら、姫咲百合亜はこちらに哀れみの視線を向ける。しかし、そこには確かな優越感も含まれていた。
…うわぁ。ヒロインってこうして見ると嫌な女の子だわ。何か生理的に無理!よく疑問抱かずにゲームできたなぁ私。
正直キレやすい裕貴も性格悪そうな百合亜もごめんである。さっさとさよならしたい。しかし、身分の都合上、私から婚約破棄を申し出ることは出来ない。こればっかりは仕方がない。
「おい、聞いているのか?」
「聞いているので続きをどうぞー」
めんどくさいので返事が少し雑になった。が、裕貴は元々怒っているのでそんなに変わらない。百合亜は違和感を感じたように、首を傾げただけだ。
「大日本帝国の第二王子と藤峰織花との婚約を、ここで破棄とする!」
「まぁ、ありがとうございます!百合亜さんと末永くお幸せにー」
さぁ、イベントは終わった。後は適当にご飯をつまんで帰ろう。
私の態度に意表を突かれたように固まる裕貴と百合亜だったが、我に返った裕貴は彼女を連れてその場から立ち去って行った。
彼らがいなくなった途端、周りで様子を窺っていた生徒がぞろぞろ集まってくる。
「織花さん!大丈夫でしたか?わたくし達、何もできなくてごめんなさい」
一人の女子生徒が謝罪すると、他の子達も私に声をかけてきた。仕方ない、相手は王子だしね。
「まったく、あの女の顔見ましたか?笑っていましたのよ!むかつく!」
「ま、まぁまぁ、令嬢がそのような言葉を使うものではありませんわ」
予想以上に皆が怒っていた。私よりも凄まじい怒りだ。本来、この場面で織花の味方はいなかった。しかし、私が中等部で平和的に過ごしたおかげか、こうして慰めてくれる友人を得ることができた。私は幸せ者だ。
「さて、気を取り直してご飯でも頂きません?せっかくの祝いの席ですもの。ね?」
「織花さんがそう言うなら…。でも、これだけは分かってくださいませ、わたくし達は織花さんから離れませんわよ」
「えぇ!色々と危なっかしいですし!」
えっ?どこが?
胸に抱いた疑問はしかし、その後の談笑の中で消えていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,094
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる