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3.私だってハンムラビ法典は知ってます
ご褒美は鼻血ものでした
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今日という今日、生徒達が待ち望んだ納涼祭が始まりましたよ~!ドキドキの肝試しが皆を待っている!素敵なスチルが私を待っている!
興奮しながらくじを引く。このくじによって、肝試しのパートナーが決まるのだ。くじは数字が書かれており、同じ数字が書かれたくじを持つ者同士でペアを組む。そこには、男女という縛りはない。肝試しで男子同士という謎の組み合わせにもなり得るのだ。
ふぉぉお、緊張する…。私は誰とペアになるんだろうか。
神様、欲望が多過ぎていつも祈ってますけど、何かしらの運をわたくしめに…なにとぞ!
引いたくじには105の数字。さて、私の105の嫁はどこですか?婿でもいいんだけどさ。
人数的にもすぐには分からないだろうと私が諦めていると、聞き覚えのあるイケボが聞こえてきた。
「俺のくじの嫁さ~ん!105番ちゃんカムヒア~」
…流星と同じようなことを考えてしまった私って…。…深くは考えまい。私だって浮かれる時はあるもの、うん。
「流星、105番が女子かは分かんねーだろ」
冷静な突っ込みを入れられている中、非常に言い難いのだけど、105番は私です…。
流星を後ろからつついて、くじを見せる。その顔は喜色満面といったところか。おかしいな、流星の後ろに尻尾が見える気がするわ…。
「やったぁぁぁ!神様仏様イエス様!祈った甲斐あった!今度お供え物しなきゃな」
神頼みし過ぎっ!数撃てば当たるみたいなことを神様で考えちゃ駄目でしょ…。これは絶対バチが当たるな。
順番が来るまではお喋りに興じ、いざ順番が来るとなるとドキドキソワソワがマックスになる。
スタッフ役の教師から渡された懐中電灯を片手に、夕暮れ時の森を進む。この森は花園学園の校舎裏に位置しており、日頃から薄暗くて気味が悪いと評判のスポットなのだ。
私はゲームで体験したことあるし!と余裕満々で進む。流星の腕を引っ張るようにして進み、折り返し地点まで到着した。途中幽霊役にびくつかされたが、何とか腰を抜かさず頑張れた。
そして、そこまで来て私は己の間違いに気づいた。流星の時のスチルって…怖がるヒロインを流星がリードするやつ…。この場合、ヒロインの立ち位置の女の子は私となる。
「わ、私、自分でスチル潰しちゃった!?何という痛恨のミス…うわぁぁぁぁん!嘘だー!」
「お、織花っ!?ちょ、どこに…」
ショックのあまり私はどこへともなく駆け出した。呼び止めようとする流星を置き去りにしたまま。
ーーー
肝試し会場である花園学園裏の森の細道で、私は薄暗闇の中キノコを栽培ーーしているようなジメジメした後悔に苛まれていた。
体操座りで1人反省会中なのだ。己の至らなさよ…!貴重なスチルが…藤峰織花、お前のケアレスミスで潰されてしまったんだぞ、私のアホ!
それこそ人が見たらアホとしか思えないような一人二役的な言動を繰り返す。私がそうして反省会を行っていたら、すぐ側の草むらが大きく音を立てた。
「ひっ、ひぇ…!うっ、むぐうぅ」
反射的に悲鳴をあげたら速攻で口を塞がれた。早い、早いよ。悲鳴は最後まで叫ばせてよ。
「静かにしろ、ばれちまうだろーが」
あれ、もしや五十嵐会長?
そう思い至り、じっくり顔を見つめていると、五十嵐ははっと何かに気づいたように後ろを振り返り、私を勢い良く木陰に押し倒した。
五十嵐が自分の腕をさっと私の頭の下に回していたおかげで、地面に後頭部を強打することは避けられた。それでも、色々と物申したい。じっとりと私の上に覆い被さる五十嵐を睨みつける。
ところが、何するんですか!と怒ろうとして、私も五十嵐が隠れる理由に遅ればせながら気がつく。
「かぁいちょー!五十嵐かいちょー!もう、どこ行ったんですか?置いてくなんて酷いですよ!」
百合亜だ。彼女の言葉と五十嵐の行動から、2人がペアだったことが分かった。やはり、狙っていたのね百合亜…その強運っぷりは尊敬するわ。
暫く2人で気配を殺して木陰に隠れる。百合亜も少しは粘ったが、見つからないと判断したのか。
「もう~!会長の恥ずかしがり屋さん!」と意味不明なことを叫びながら去っていった。
…恥ずかしがり屋さん?
「五十嵐会長って、恥ずかしがり屋さんなんですか?」
衝動のままに尋ねてみたら、心底軽蔑するかのような目で見下ろされた。り、理不尽!
「誰が恥ずかしがり屋だ…。ほら、手出せ」
言われた通りに手を差し出すと、五十嵐がその手を取り、私の身体を起こしてくれた。さっきは強引に押し倒したくせに、急に紳士的な態度とるとかギャップ萌え。顔を逸らして、萌えとの戦いに私は葛藤する。
「はぁ…痛いとこねーか?わりぃな…怪我してたのに乱暴にしちまって。何せ俺も(あんなしつこい)女は初めてでな…。つい、抑えがきかなかったんだよ。(土で)汚れた所も拭いてやるからこっち向け」
ひぃやぁあ、その少し汗ばんだ色気溢れるご尊顔を近づけながら、そんな際どいこと言わないで!さっきの押し倒された体勢と言い、違う意味に聞こえるんですー!
私は五十嵐のセリフを勝手に取捨選択しながら聞き、悶絶する。私の頭め、お母さん(本体)は貴方をそんなに破廉恥な子に育てた覚えはありませんっ!
「…おい?何か平気そうだな」
はうっ!それにこれって、スチル再現じゃない…!つい、自分が当事者だと忘れてしまうけど、原作は怯えて縋り付くヒロインが可愛くて五十嵐が理性崩壊しかけちゃうやつ。マジ神だったわぁ…。
私の場合は事故で起こったスチルだったけど、これはこれで良き。
私の様子を訝しがる五十嵐に向かって、私は正直な気持ちを口にした。
「生スチル、ご馳走様でした」
興奮しながらくじを引く。このくじによって、肝試しのパートナーが決まるのだ。くじは数字が書かれており、同じ数字が書かれたくじを持つ者同士でペアを組む。そこには、男女という縛りはない。肝試しで男子同士という謎の組み合わせにもなり得るのだ。
ふぉぉお、緊張する…。私は誰とペアになるんだろうか。
神様、欲望が多過ぎていつも祈ってますけど、何かしらの運をわたくしめに…なにとぞ!
引いたくじには105の数字。さて、私の105の嫁はどこですか?婿でもいいんだけどさ。
人数的にもすぐには分からないだろうと私が諦めていると、聞き覚えのあるイケボが聞こえてきた。
「俺のくじの嫁さ~ん!105番ちゃんカムヒア~」
…流星と同じようなことを考えてしまった私って…。…深くは考えまい。私だって浮かれる時はあるもの、うん。
「流星、105番が女子かは分かんねーだろ」
冷静な突っ込みを入れられている中、非常に言い難いのだけど、105番は私です…。
流星を後ろからつついて、くじを見せる。その顔は喜色満面といったところか。おかしいな、流星の後ろに尻尾が見える気がするわ…。
「やったぁぁぁ!神様仏様イエス様!祈った甲斐あった!今度お供え物しなきゃな」
神頼みし過ぎっ!数撃てば当たるみたいなことを神様で考えちゃ駄目でしょ…。これは絶対バチが当たるな。
順番が来るまではお喋りに興じ、いざ順番が来るとなるとドキドキソワソワがマックスになる。
スタッフ役の教師から渡された懐中電灯を片手に、夕暮れ時の森を進む。この森は花園学園の校舎裏に位置しており、日頃から薄暗くて気味が悪いと評判のスポットなのだ。
私はゲームで体験したことあるし!と余裕満々で進む。流星の腕を引っ張るようにして進み、折り返し地点まで到着した。途中幽霊役にびくつかされたが、何とか腰を抜かさず頑張れた。
そして、そこまで来て私は己の間違いに気づいた。流星の時のスチルって…怖がるヒロインを流星がリードするやつ…。この場合、ヒロインの立ち位置の女の子は私となる。
「わ、私、自分でスチル潰しちゃった!?何という痛恨のミス…うわぁぁぁぁん!嘘だー!」
「お、織花っ!?ちょ、どこに…」
ショックのあまり私はどこへともなく駆け出した。呼び止めようとする流星を置き去りにしたまま。
ーーー
肝試し会場である花園学園裏の森の細道で、私は薄暗闇の中キノコを栽培ーーしているようなジメジメした後悔に苛まれていた。
体操座りで1人反省会中なのだ。己の至らなさよ…!貴重なスチルが…藤峰織花、お前のケアレスミスで潰されてしまったんだぞ、私のアホ!
それこそ人が見たらアホとしか思えないような一人二役的な言動を繰り返す。私がそうして反省会を行っていたら、すぐ側の草むらが大きく音を立てた。
「ひっ、ひぇ…!うっ、むぐうぅ」
反射的に悲鳴をあげたら速攻で口を塞がれた。早い、早いよ。悲鳴は最後まで叫ばせてよ。
「静かにしろ、ばれちまうだろーが」
あれ、もしや五十嵐会長?
そう思い至り、じっくり顔を見つめていると、五十嵐ははっと何かに気づいたように後ろを振り返り、私を勢い良く木陰に押し倒した。
五十嵐が自分の腕をさっと私の頭の下に回していたおかげで、地面に後頭部を強打することは避けられた。それでも、色々と物申したい。じっとりと私の上に覆い被さる五十嵐を睨みつける。
ところが、何するんですか!と怒ろうとして、私も五十嵐が隠れる理由に遅ればせながら気がつく。
「かぁいちょー!五十嵐かいちょー!もう、どこ行ったんですか?置いてくなんて酷いですよ!」
百合亜だ。彼女の言葉と五十嵐の行動から、2人がペアだったことが分かった。やはり、狙っていたのね百合亜…その強運っぷりは尊敬するわ。
暫く2人で気配を殺して木陰に隠れる。百合亜も少しは粘ったが、見つからないと判断したのか。
「もう~!会長の恥ずかしがり屋さん!」と意味不明なことを叫びながら去っていった。
…恥ずかしがり屋さん?
「五十嵐会長って、恥ずかしがり屋さんなんですか?」
衝動のままに尋ねてみたら、心底軽蔑するかのような目で見下ろされた。り、理不尽!
「誰が恥ずかしがり屋だ…。ほら、手出せ」
言われた通りに手を差し出すと、五十嵐がその手を取り、私の身体を起こしてくれた。さっきは強引に押し倒したくせに、急に紳士的な態度とるとかギャップ萌え。顔を逸らして、萌えとの戦いに私は葛藤する。
「はぁ…痛いとこねーか?わりぃな…怪我してたのに乱暴にしちまって。何せ俺も(あんなしつこい)女は初めてでな…。つい、抑えがきかなかったんだよ。(土で)汚れた所も拭いてやるからこっち向け」
ひぃやぁあ、その少し汗ばんだ色気溢れるご尊顔を近づけながら、そんな際どいこと言わないで!さっきの押し倒された体勢と言い、違う意味に聞こえるんですー!
私は五十嵐のセリフを勝手に取捨選択しながら聞き、悶絶する。私の頭め、お母さん(本体)は貴方をそんなに破廉恥な子に育てた覚えはありませんっ!
「…おい?何か平気そうだな」
はうっ!それにこれって、スチル再現じゃない…!つい、自分が当事者だと忘れてしまうけど、原作は怯えて縋り付くヒロインが可愛くて五十嵐が理性崩壊しかけちゃうやつ。マジ神だったわぁ…。
私の場合は事故で起こったスチルだったけど、これはこれで良き。
私の様子を訝しがる五十嵐に向かって、私は正直な気持ちを口にした。
「生スチル、ご馳走様でした」
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