絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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2.さらなる出会い

いざ、市場調査

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物作りの才能があるかもしれない、そしてそれによって商売を展開できるのでは?と思い立って数日。この度はお忍びで下町を訪れている。



町娘が着そうな服を下働きの子に貸してもらい、髪の毛もつばの広い帽子に突っ込んでいる。よく見たらお忍び感があるけど、遠目には溶け込めているはずだ。


人々は何を求めているのか?それを探りに来たのだ。



今は昼過ぎだが、予想以上に活気に溢れている。ご飯を食べる者や、食後に買い物をしている者など、多くの人が集まっている。


ご飯は先程パン屋でサッと済ませてきた。パンは手軽だし、美味しくていいわぁ…。


立ち並んでいるお店から香ばしい匂いが漂ってくる。これは…この匂いはっ、唐揚げ!?


「サリ、唐揚げを買いましょう」


私の足は迷うこと無く、お店に向かった。サリは「え、お嬢様!?」と戸惑いながらもしっかり付いてきてくれる。出来た侍女である。



唐揚げ店は人気のお店なのか、この通りでも一、二を争うくらい人が並んでいる。しかし、店の回転率は高いようで、三十分位で列の前の方にたどり着く。


串に刺さった唐揚げに、香辛料がたっぷりかけられる。うん、良い匂いだ。二本を購入し、一本をサリへ差し出す。すると、サリは今にも唐揚げに食いつきそうな目をした私に気付いたのか慌てて制する。


「私がお先に毒味致しますので、まだ食べないで下さい」


店主が気を悪くしないよう、小声でそう伝えられた。別に大丈夫じゃないか?とは思うけど、サリにとってはこれも仕事なのだ。そう考え、大人しく待つ。



サリが一口唐揚げを齧り、目を見開く。あ、美味しかったんだな…。もういいのかな。


「お嬢様、大丈夫のようです。それにしても、下町の唐揚げを初めて食べました…」



「ありがとう。美味しかったでしょう?ふふ、あの香りから間違いないと思ったのです!」


鼻には自信があるからね。あぁ、本当はもう一本食べたかった。パンを食べた上でも食欲をくすぐってくるとは、罪深い食べ物だわ。


食べ物に関してだが、ここでは食べ歩きができるようなものが多い。仕事の合間にやって来る労働者のことを考えたためであろう。


そして、どちらかと言うとパンや肉のように、お腹にたまりやすいものが多い。甘い物もあるが、お持ち帰り専用のクッキーやマフィンが少し売ってあるくらいか。



やはり、下町で売れるものと貴族が好むものには違いが見られる。しかし、前世は平民、私の中に身分による壁や偏見はない。下町の食事も普通に美味しく感じたし。むしろ、こちらの方が過ごしやすい。



食品以外はどうだろうか。メインの通りを少し外れた方へ行ってみる。こちらは、少し落ち着いた雰囲気のお店が並んでいる。


外から覗くと洋服や日用品などが雑に並べられている。値段は物によってそれぞれだが、何せ貴族社会で育ってきたために、レートはいまいち分からない。これは勉強しておかないと、損をしそうだ…。誰か平民の友人が欲しい。ヒロイン以外で。


しかし、ここでは百円ショップ的なお店はないのだろうか。もし、ないならそれも販売戦略として使えそうだ。安くお買い得、庶民の大好きな言葉である。


この世界の庶民が欲しがるものは、どういうものかな。価値観が大きくずれていないといいのだけれど。



少し店主に聞いてみようか。えーっと、ここは日用品のお店にしておこう。



「あっ、サリ…私は今からこのお店の店主の方とお話をしようと思います。サリにとってはつまらないでしょうし、先程の唐揚げのお店へ行って、兄様達へのお土産を買ってきてくれないかしら」



こっちに来てから言ってごめん。だけど、やっぱりあれ美味しかったから、ぜひとも家族にもあの唐揚げを味わって欲しい。



「お嬢様を一人にするわけにはいきません」



サリは困った顔でそう訴える。それはそうだよねぇ。こういう時身分が高いというのは厄介だ。どれほど安全に見える所にも、護衛や付き添いが必要とされる。



しかし、私自身魔法も使えるし、少しなら剣も扱える。それに、この店から動くつもりもないから大丈夫だということをサリに一生懸命伝える。まだ日も明るいうちだからと念を押すと、ようやくサリも折れてくれた。



「絶対にこのお店から出ないで下さいね」


最後まで心配そうにしながら、サリは来た道を引き返していく。
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