絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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3.体験入学へ

到着

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お昼前になって、ようやく馬車は足を止めた。魔法学園の正門近くに馬車は停まり、私達は地面へ足をつける。ちなみに、グレイがドアの開け閉めをしてくれた。


あれ以降、グレイは特に変わりなく沈黙を貫いている。たまに、私が視線を送るとびくついている気もするが。


『おぉ、昔と変わらぬのう!それにしても、何と遠い…道を開けてしまえば一発じゃというに』


せパルが学園に来て早々、不満を口にする。今まで黙って姿を消していた分、ストレスが溜まっていたのかもしれない。そして、さり気なく問題発言をしている。セパルだけならともかく、私がそんな常識外れの力で移動できるわけないだろう。


『むむ、人間は生き辛くてかなわぬ』


ちなみに、セパルが姿を消している状態でも、彼女が私の身体に触れている限り、頭の中で会話は可能である。セパル曰く、今は私と腕を組んでいるらしい。どこかのカップルのつもりか?


未だに不平を零すセパルのことは放っておいて、魔法学園の正門から学園を見渡す。歴史を感じさせるような古く大きな門には、梟の図像が刻まれている。梟は魔法を使う者が一番よく用いる動物だ。


建物の外観は、まさしくヨーロッパのゴシック建築の城で、全体は白色で塗装されている。その側には細長い塔がそびえ立ち、頂上付近には大きな鈴が付けられている。恐らくあれが時刻を告げるものなのだろう。


荘厳な建物の様子に思わず見とれていると、背中に圧を感じた。


『早う中へ入らぬか。間抜けにしか見えぬぞ』


気付けば正門前で、馬鹿みたいに空を仰いでいる自分がいた。確かに、これは恥ずかしい。


僅かばかり足を速めて、校舎へ入る。今は授業中のようで、周りは静かだ。グレイを先頭に、私達は廊下を進む。廊下の各所には花が飾ってあり、可愛らしい。


 まず、初めに入学者担当の先生の元を訪れた。そこで、数枚の書類を受け取り、体験入学へのお礼としてクッキーを貰った。やった、クッキーを貰えるとは思わなかったよ。


その後は、その先生に案内され、校舎を一周しながら建物の説明を受ける。そして、午後の授業の見学をさせてもらうことにした。見学するのは、現在1年次の学生のクラスだそうだ。ひとまず、それまでは自由にしていいとのことなので、お昼ご飯を食べに行く。二時間後に先程の部屋、つまり入試課へ戻れば良いから、ゆっくり食べられそうだ。



学食を求めて三千里…。



校舎が広いのと、不慣れなこともあって食堂がやけに遠く感じた。多分途中で道を間違えて遠回りしてしまった。けれど、その分お腹は空いている。



「本格!釜焼きピッツァのモッツァレラチーズ二倍でお願いします。あと、サーモンとオリーブのパスタを二人前で」


グレイにも聞いたのだが、謎のジェスチャーで返されてよく分からなかった。…勝手に頼んでしまったが、これで良いだろうか。


席を取っていたグレイが、居場所を示すように手を振る。今気づいたが、学内ではあの怪しいマスクを外しているようだ。ここでは逆に目立つもんなあれ。


「ご飯…私が食べたいものにしちゃいましたけど、大丈夫ですか?」


席につきながら、グレイに問いかける。すると、グレイは親指をグッと立てる。それは「いけるよ」ってことなんだよね多分。


終始喋らないグレイと、美味しい食事に悶絶している私の間に言葉なんて必要なかった。


その様子を見て、セパルだけが『妾は甘い物が食べたい』と呟いていた。
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