絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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4.魔法学園入学

最近の日課

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 入学式の次の日、学力テストが行われた。今回は一般常識がメインとなるので、そこまで難しいものではなかった。このテストは学生達の学力レベルを測るためのものだが、上位の学生達の順位は公開され、学生達のやる気をさらに引き起こしていた。


私もその中の一人である。今回のテストで私は一位の座を獲得した。しかし、二位であるジャックとは僅差の結果だったのだ。嬉しさもあったが、浮かれていられないと決意を新たにした。

 ちなみに、他の攻略対象者達も大体上位10位以内の好成績を叩き出していた。さすが、少女漫画のヒーロー役、軒並み頭が良い。


 そこで、そのテストの結果を受けて、私が最近通っている場所がある。それはズバリ図書室である。この魔法学園には、図書室が二箇所あり、一般的な蔵書が置かれているのが中央図書室と言う。もう一箇所は、専門書を多く所蔵してある、専門図書閲覧室という場所だ。


 セパルはあの性格だ、図書室など暇でつまらないと言って、私の寮の部屋で昼寝をしている。近頃は、私に付いてこない時間を昼寝に当てているらしい。気持ちよく眠っているようで何より。私の部屋で寝るくらいなら、一旦魔界へ帰ればいいのに。以前、そう告げるとセパルは少し考えて「まぁ良いではないか」と答えていた。


 今日は既に日の沈む時刻だが、図書室にはポツリポツリと人の出入りがある。
  さて、 図書室で一体何を読むのかというと、私はこの世界についての知識をさらに深めようと通い詰めているわけで。


今日はこの世界における悪魔とは何かについて、調べようとしている。取り敢えず、目に付いた背表紙の本を手に取る。淡い色調の本は、随分古いものだろうか、所々色褪せている。



『悪魔が得られぬ物』


タイトルを見て、中を開くとまさかの絵本だった。絵本…絵本か…と思って本を閉じ、本棚へ戻そうとする。しかし、適当にパラパラめくったページに描かれた、悪魔の苦悩する表情に何故か手が止まってしまった。


その顔はまるで、人間のようだった。苦悶の表情で慟哭する悪魔の姿に、胸を裂かれるような切なさを覚える。


座り直して、この絵本を最初から見てみよう。
本を改めて机に置き、読み込んでいく。


ーーーーーー


この話は、ある悪魔が人間の娘に恋をしてしまったという話のようだ。しかし、悪魔の恋は実らない。娘の魂に惹かれていた悪魔だが、その魂とは、生まれた時二つに分かたれた悪魔自身の魂の片割れだったからだ。悪魔は生まれた時に、前世の罪から魂が二つに分かれ、彼らは自分の半身を求めて永遠にさまようのだという。


悪魔は、その事実に打ちひしがれる。彼は確かに娘の魂に惹かれていたが、それと同じ位娘の明るく活発な性格を愛していたから。


ーーあの娘がいない世界など、何の意味も無い。…娘が消えるくらいなら、自分が消えればいい。


悪魔はそう考えたが、人間の魂より悪魔の魂の方が生命力が強く、それは叶わなかった。結局、娘の魂は悪魔の魂に取り込まれ、同化してしまったのだ。その娘は、魔力や特別な力などを持たない普通の少女だった。魂が完全になっても、娘の声はもう聞こえない。悪魔は失ったものを求めて、涙を流し続けた。


本の最後に、泣き疲れたその悪魔は、今ではもう涙を流すことすら出来なくなったという結末が書かれていた。



ーーーーーー


「……」


何て悲しい話だろう。悪魔の得られぬ物、なんて言うからとんでもない価値の宝物かと思ったら、それが私と同じ人間の愛だったとは。


それに、悪魔も恋するんだなぁとどこか感慨深い気持ちになった。奪いたくなくても、奪ってしまうその性質も、この本を読めば考えさせられるものがある。


しみじみとした感傷に浸っていた私は、今日はセパルに優しくしようと思った。この本に出会えて良かった。授業とは関係ないけど、視野が広がるという点では、重要な本だったと言える。


心が一杯になったので、今日はもう部屋へ帰ろう。今はどの本を読んでも、先程の感動を忘れられそうにない。



私は静かに図書室の扉を閉めた。
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