絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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8.文化祭

あみだくじは最後の手段

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 「それでは、このクラスの出し物は多数決によりーー演劇に決定します!」



私の願い、早くも散った。


今日はいよいよ、文化祭の出し物を決めるのだが、先程までの多数決の結果、演劇に半数以上の票が集まった。


そりゃ、展示なんてポイント稼ぎにくいもの採用されそうもないだろうけどさ…。演劇って。何という手間のかかるものを。

これはあれだ、木の役が狙い目!

いや…冷静になろう。公爵令嬢が木の役ってどうなのよ…。周りが絶対に許さないだろう。


 私が悶々と考えるうちに、演劇の題目もサクッと決まった。「白雪姫」だそうだ。白雪姫と言えば…小人に王子に…「世界一の美人はだあれ?いや、私でしょうが?」と鏡に問いかける王妃だな。


内容の細かいところは後で詰めることにして、進行役の生徒は先に役を決めると言う。


役を決めるにあたり、希望制にすると当然、白雪姫と王子の人気が炸裂した。


そして、実は小人役のところで手を挙げていたのだが、私は皆にスルーされた。


え?ちょ、ひどくない?


公爵令嬢がそんな役するわけがないと思われたのだろうか。幻覚扱いされた?


地味に落ち込んでいると、このままでは埒が明かないと判断した何人かが叫び始めた。


「こうなったら、あみだくじで平等に決めよう!」


…平等。本当にそれは平等になるのか?私が小人役でも許されますか?


微かに見えた希望に私は顔を上げる。クラスは熱気に包まれ、自分こそが美味しい役に!という無言の迫力が滲み出ている。


教卓の上に置かれた箱から、皆が恐る恐るくじを抜き取る。全員がくじを引き終えると、黒板にあみだくじの線が浮かび上がってきた。自分の引いた番号の先に何が書かれているのか。数秒の沈黙が過ぎ去り、クラスに緊張が走る。


それから、教室内でさまざまな声が上がる。歓喜の声から沈痛な叫び、非常に騒がしい。


そんな中、私はくじの先を呆然と見つめていた。何度も自分の番号とそれを見比べるが、結果は変わらない。


25番ーーー「王妃」


あ、悪役…。嘘でしょ…この劇のある意味要的な悪役じゃないの!

え、呪い?これが私の運命?何であみだくじでピンポイントに悪役なのよ…。


 ショックを受ける私を他所に、それぞれの役の横に生徒の名前が書き込まれていく。


白雪姫はウォークラリーで一緒の班になったカリーナ、王子はジャック、小人、王子の従者、王妃の家来、王妃の鏡など、順に名前が記されていき、そしてーー「王妃」、クリスティーヌの名もしっかりと記されていた。


悪役ではあるものの、身分の高い役だから問題ないということだろうか?誰も反対する者はいない。主役も貴族令嬢ではないが、あみだくじによる公平な決定ということで、皆一応納得しているらしい。ジャックが私と同じように素晴らしいクジ運を発揮してしまったため、女子の悔しげな声は未だに聞こえる。


そのジャックは…まぁ、不愉快な顔でした、ハイ。私だってそんな気持ちだと無駄にシンパシーを感じてしまう。こういう役回り嫌いそうだもんね。でも、クラスとしては文句無しの王子だから。


私も家柄だとか実際に殿下の婚約者という点で、ぴったりな配役だと思われたのかもしれない。


 冷静に分析する私の横で、男女両方が配役にざわついていた。



「ジャック様が王子役だなんて眼福…!生きてて良かったわ」


「カリーナも可愛らしいし、本番楽しみだよな!」


「それよりも…王妃役だろ?最高かよ!クリスティーヌ様になら俺…踏まれてもいい…」


その男子生徒の声で、一瞬教室が違う意味でざわつく。


「…カザルス。お前小人役だろ?王妃が小人踏む場面なんてないんじゃないの?」


ジャックが突っ込むも、他の生徒達は何かを確認するかのように目を合わせる。


「採用。クリスティーヌ様が小人を踏む場面を採用しますわ」


「マジで?やる気出てきた!」


カザルスと呼ばれた少年は拳を握る。それを見たジャックは呆れ顔だった。


私は話の流れについていけずに、一言も発することなく、気づけばカザルスを踏む王妃に任命された次第である。


だって、人に踏まれたいとかいきなり言われてみてよ。ちょっと…いや…だいぶ引く。しかも、それを採用ってまさか過ぎる。私って人を踏むような認識されてるの?

あ、でも、フレッドの足を踏むことは多いな。


すると、セパルがそれに反応してこう言った。


『妾も眷属を踏むことはよくあるぞ?』


セパル、それはうっかりなの?可哀想だからほんとやめてあげて…。



 相変わらずのセパルにもはや深く突っ込む余裕もない。今度セパルの眷属に会うことがあれば、優しくしてあげよう…。


取り敢えず、私はそんなことを考えることで現実逃避した。
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