52 / 57
8.文化祭
熱血指導!
しおりを挟む
1年2組の文化祭の出し物は演劇、「白雪姫」に決定した。物語の重要な敵役、王妃とは私のことである。
1日経って私は吹っ切れた。こうなったら、完璧な王妃になってやろうじゃないの。悪役なイメージより、高貴で冷徹な王妃様を演じてみせる。
演技力がないと思われるのも何か嫌だしね…。
後期の試験も終わり、学園は既に文化祭ムードに突入している。学園では授業時間の大半も文化祭の準備に割り当てられているのだ。我がクラスも、それぞれが演劇のための準備を進めている。そんな中、シナリオ担当の生徒が立ち上がった。
「シナリオ完成です!」
生徒は皆に朗読するようにして、シナリオを読み上げていく。
白雪姫と呼ばれる美しい王女がいた。彼女の継母にあたる王妃は魔法の鏡に向かって世界一の美女は誰かと尋ねる。ある時、王妃がいつものように尋ねると、鏡は初めて違う答えを口にした。「この世で最も美しいのは白雪姫です」と。
それを聞いた王妃は白雪姫を亡きものにして、世界一の美女の座を取り戻そうとした。そのためにあらゆる手段を取る。漁師や魔法使いに命じ、白雪姫を殺そうとするが上手くいかない。
痺れを切らした王妃は、ついに自ら白雪姫が過ごす小人の家にやって来る。外にいた小人達を制圧し(ここでカザルスが踏まれる!)、老婆に変装した王妃が渡した毒林檎によって、白雪姫は倒れた。
小人達は白雪姫の死を悲しみ、彼女を棺に入れた。そこへ王子が通りかかり、白雪姫の美貌に一目惚れする。王子は死してなお美しい白雪姫に口付けする。
棺ごと白雪姫を王子の国へ運ぶ途中、王妃が今度こそ白雪姫の死を確認しようと、手下を連れてやって来る。そこで、王子と王妃の戦いの末、王妃は味方であったはずの魔法使いに裏切られる。魔法使いが召喚した魔物に王妃は倒され、その戦いの衝撃で白雪姫は喉に詰まっていたリンゴの欠片を吐き出す。
生き返った白雪姫に一同は大喜びして、王子と白雪姫は結婚する。めでたしめでたし。
………………王妃の最期、散々じゃない。
私、味方に裏切られて死ぬ落ち?現実ですら友人ほぼいないのに、役でもこんな結末か。あと、しっかりカザルスが踏まれるストーリーが盛り込まれていたことに驚いた。本気だったんだ。ちょっと鳥肌立った…。本番でしっかり踏めるか不安だわ…。
微妙な不安を抱えていると、セパルが自信満々に宣言した。
『もしもの時は妾が代わりに踏んでやるぞ!安心しろ!』と。代わりってどうするんだとか言わない。何も保険がないよりはマシかもしれないし。ありがたいのかよく分からない応援に内心苦笑した。
とはいえ、全体のシナリオとしては良い流れかなと思っていると、一人の女子が待ったをかけた。
「キス…?ジャック様が…?」
その呟きに周りがはっと気づく。ジャックもシナリオ担当者の熱気に押されていたのか、ようやく「は?」と不満の声を上げる。
あっ、そうよね。皆の憧れ、イケメン君が一人の女子生徒だけにキスとか許さないよね!
徐々に高まる女子の不満を、シナリオ担当者が制止する。
「あくまで、ふり!本当にはしないから大丈夫!じゃ、後で台本作るから明日までにセリフ完璧に覚えてね!」
鬼か?王妃のセリフ結構多いぞ…。今日はひたすら台本との戦いになりそうだ。
ーーーー
翌日。1年2組の教室では劇の予行練習が行われていた。セリフ全てを暗記させられた面々はどことなく眠そうだ。私も顔には出さないがさっきからあくびをこらえている。
「鏡よ鏡、この世で最も美しいのは誰?」
「それは王妃様でございます!」
「はい、カットォォォ!クリスティーヌ様、顎をあと15度上に!もう少し偉そうに!鏡役!息が合ってない!もっと揃えて!」
熱血指導だ…。シナリオ担当者もそうだったが、皆の熱気が凄い。てか、偉そうにって言われても抽象的でよく分からない…。そう伝えると、演技指導のステラは少し考えて言い直した。
「エリザベス様を思い出して、もう一度お願いします!」
ステラさーん、それ本人に聞かれたらまずいと思うよ!いや、分かりやすかったけどね!?
ステラの例えをイメージしながら、再び同じ場面を繰り返す。すると今度は一発OKが出た。エリザベス効果…てか、皆からもやっぱり偉そうだと思われてるのね。
「おぉ…何と美しい姫だ…?」
「ジャック様!セリフ合ってますから!語尾を上げないでください」
珍しくジャックも戸惑っているようだ。普段言い慣れないセリフに本人が違和感を隠せないみたいだ。むしろ、いつも毒吐いてるようなものだしな。王子と言えば、真逆で甘ったるいセリフを言わないといけない。
見た目は王子ぴったりでも、中身はそう上手くいかないようだ。
それから約2週間、私達はステラの指導の元、演劇の練習に打ち込んだのだった。
1日経って私は吹っ切れた。こうなったら、完璧な王妃になってやろうじゃないの。悪役なイメージより、高貴で冷徹な王妃様を演じてみせる。
演技力がないと思われるのも何か嫌だしね…。
後期の試験も終わり、学園は既に文化祭ムードに突入している。学園では授業時間の大半も文化祭の準備に割り当てられているのだ。我がクラスも、それぞれが演劇のための準備を進めている。そんな中、シナリオ担当の生徒が立ち上がった。
「シナリオ完成です!」
生徒は皆に朗読するようにして、シナリオを読み上げていく。
白雪姫と呼ばれる美しい王女がいた。彼女の継母にあたる王妃は魔法の鏡に向かって世界一の美女は誰かと尋ねる。ある時、王妃がいつものように尋ねると、鏡は初めて違う答えを口にした。「この世で最も美しいのは白雪姫です」と。
それを聞いた王妃は白雪姫を亡きものにして、世界一の美女の座を取り戻そうとした。そのためにあらゆる手段を取る。漁師や魔法使いに命じ、白雪姫を殺そうとするが上手くいかない。
痺れを切らした王妃は、ついに自ら白雪姫が過ごす小人の家にやって来る。外にいた小人達を制圧し(ここでカザルスが踏まれる!)、老婆に変装した王妃が渡した毒林檎によって、白雪姫は倒れた。
小人達は白雪姫の死を悲しみ、彼女を棺に入れた。そこへ王子が通りかかり、白雪姫の美貌に一目惚れする。王子は死してなお美しい白雪姫に口付けする。
棺ごと白雪姫を王子の国へ運ぶ途中、王妃が今度こそ白雪姫の死を確認しようと、手下を連れてやって来る。そこで、王子と王妃の戦いの末、王妃は味方であったはずの魔法使いに裏切られる。魔法使いが召喚した魔物に王妃は倒され、その戦いの衝撃で白雪姫は喉に詰まっていたリンゴの欠片を吐き出す。
生き返った白雪姫に一同は大喜びして、王子と白雪姫は結婚する。めでたしめでたし。
………………王妃の最期、散々じゃない。
私、味方に裏切られて死ぬ落ち?現実ですら友人ほぼいないのに、役でもこんな結末か。あと、しっかりカザルスが踏まれるストーリーが盛り込まれていたことに驚いた。本気だったんだ。ちょっと鳥肌立った…。本番でしっかり踏めるか不安だわ…。
微妙な不安を抱えていると、セパルが自信満々に宣言した。
『もしもの時は妾が代わりに踏んでやるぞ!安心しろ!』と。代わりってどうするんだとか言わない。何も保険がないよりはマシかもしれないし。ありがたいのかよく分からない応援に内心苦笑した。
とはいえ、全体のシナリオとしては良い流れかなと思っていると、一人の女子が待ったをかけた。
「キス…?ジャック様が…?」
その呟きに周りがはっと気づく。ジャックもシナリオ担当者の熱気に押されていたのか、ようやく「は?」と不満の声を上げる。
あっ、そうよね。皆の憧れ、イケメン君が一人の女子生徒だけにキスとか許さないよね!
徐々に高まる女子の不満を、シナリオ担当者が制止する。
「あくまで、ふり!本当にはしないから大丈夫!じゃ、後で台本作るから明日までにセリフ完璧に覚えてね!」
鬼か?王妃のセリフ結構多いぞ…。今日はひたすら台本との戦いになりそうだ。
ーーーー
翌日。1年2組の教室では劇の予行練習が行われていた。セリフ全てを暗記させられた面々はどことなく眠そうだ。私も顔には出さないがさっきからあくびをこらえている。
「鏡よ鏡、この世で最も美しいのは誰?」
「それは王妃様でございます!」
「はい、カットォォォ!クリスティーヌ様、顎をあと15度上に!もう少し偉そうに!鏡役!息が合ってない!もっと揃えて!」
熱血指導だ…。シナリオ担当者もそうだったが、皆の熱気が凄い。てか、偉そうにって言われても抽象的でよく分からない…。そう伝えると、演技指導のステラは少し考えて言い直した。
「エリザベス様を思い出して、もう一度お願いします!」
ステラさーん、それ本人に聞かれたらまずいと思うよ!いや、分かりやすかったけどね!?
ステラの例えをイメージしながら、再び同じ場面を繰り返す。すると今度は一発OKが出た。エリザベス効果…てか、皆からもやっぱり偉そうだと思われてるのね。
「おぉ…何と美しい姫だ…?」
「ジャック様!セリフ合ってますから!語尾を上げないでください」
珍しくジャックも戸惑っているようだ。普段言い慣れないセリフに本人が違和感を隠せないみたいだ。むしろ、いつも毒吐いてるようなものだしな。王子と言えば、真逆で甘ったるいセリフを言わないといけない。
見た目は王子ぴったりでも、中身はそう上手くいかないようだ。
それから約2週間、私達はステラの指導の元、演劇の練習に打ち込んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる