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8.文化祭
本番とアクシデント
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劇の開幕を告げるアナウンスが聞こえてくる。劇は広めの多目的ホールを借りて行う。
今日は朝からセパルとは別行動を取っている。いつも私に憑いて回るセパルだったが、劇には興味がないらしいので、他のクラスを覗きに行っているようだ。
緞帳が上がれば、早速私の出番である。正直魔法の鏡役に人数割くより、王妃役を増やして欲しい。無駄に出番多いよ、この役。王妃役をシフト制にして欲しいと言っても、「何言ってるんですか、王妃はクリスティーヌ様以外演じきれません!」と大反対をくらった。解せぬ…。
難なく序盤の出番をこなし、一時舞台裏に帰る。今の所、特に問題もなく進んでいる。
中盤は…小人の家に王妃が乗り込む。つまりは、また私の出番だ。やってて思うけど、この演劇って白雪姫より王妃の出番多いよな…。これじゃどっちが主役か分からない。
「おのれ白雪姫…!次はわたくし自らその息を絶ってやろう」
そう言って、私は森の外れで洗濯をしていた(という設定の)小人達の周りに氷魔法を放つ。人に当たらない絶妙な位置に魔法を落としながら、倒れ込んだ小人の背中をヒールの靴で軽く踏む。言わずもがな、その小人こそカザルスだ。
…うわぁ…二度とやりたくない。今回は何故かジャック以外のクラスメイト全員に頼み込まれたから渋々やったけど…。今度があったら、頼まれてももう絶対しない。
悪役令嬢どころか、悪の女王レベルじゃないのこれ?
場面は変わり、小人達を打ち負かした王妃は小人の家にたどり着く。そこで、白雪姫に毒林檎を渡し…その場で林檎を齧った白雪姫は昏倒してしまう。
次の場面では皆さんお待ちかねの王子登場。死してなお美しい姫に王子は愛を誓い、口付け(の振り)をする。観客席からは凄まじい反応があった。…おかしい、舞台裏からも悲鳴が。振りだって分かってるのにこのリアクション、ジャックの人気の凄さを実感する。
さて、いよいよ迎えるはラストだ。ここでやっと私の出番が終わる。戦って裏切られて負けて死亡。はい、簡単なお仕事ですねー。
もうすぐ終わりということもあり、私は気楽に舞台に上がった。王子陣営と王妃陣営とで戦いが始まり、王妃の魔術師が王妃を裏切る。ここまでは練習通りだった。
「王妃よ、今までの悪行の報いを受けるのだ。現れよ魔獣達!王妃を倒せ!」
事前に用意していた魔獣の召喚札を手に、魔術師が呪文を唱える。しかし、その場に現れたものは、練習で見ていたものとは比べ物にならない大きさと魔力を放っていた。その姿は地獄の番犬、ケルベロスを思わせるような巨大な犬だった。本当にケルベロスなら3頭分だろうが、その頭は2頭分だ。とはいえ、この魔獣の咆哮だけでも人々の恐ろしさを掻き立てるには充分だった。
魔術師も王子も、クラスメイト達はそのトラブルに呆然としている。私も同じように驚くが、誰よりも早く現実に引き戻される。魔獣が私を目掛けて襲いかかってきたからだ。
「…!くっ…」
凄まじい風圧を伴って突進してくる魔獣から必死に距離をとる。数秒前まで私が立っていた場所には深い爪痕が残されていた。この世界に生まれてきて初めての、命の危機と言えるかもしれない。
魔獣は私が逃げた瞬間、すぐに方向転換して再び向かってくる。魔獣によって一気にステージは狭まり、逃げ場はほとんどない。
一か八か、迎え撃つしかない。そう決めて、身体中に力を溜めていく。魔獣が飛びかかる時、私もまた魔法を放った。私の放った氷魔法は魔獣の足元をバキバキと音を立てながら氷で覆っていく。その魔法の発動時間も決して遅くはないのだが、まだ氷に包まれていない前足で魔獣はしぶとく抵抗し、私を薙ぎ払おうとする。
ただでさえ動きにくい衣装を着て、魔力を出し惜しみせずに行使しているのだ。その攻撃を避ける力などもう残っていない。魔獣の爪が私の右腕を掠め、軽い血飛沫が上がった。
「…王妃が命ずる。わたくしに…従え!」
私の一喝に魔獣がビクリと身体を震わせ、静止する。それと同時に、私の氷魔法が魔獣の巨躯を完全に覆った。その場に残ったのは静寂と、ところどころが壊れたステージだった。
私はふらりとその場に倒れ込んだ。本当はかなり限界なのだが、一応劇は続いている。そう思い、最後の仕上げをすることにした。私のアドリブにも、ナレーションの子が柔軟に対応する。
「その場に目を閉じて横たわる王妃は、死を迎える前に氷に包まれていく。力を使い過ぎた王妃はその反動を受け、自滅していったのです」
そのナレーションを聞いて安堵したのか、私の意識は遠ざかって行く。意識を失う寸前、セパルの気配も感じたし、もう大丈夫だろう。
心置き無く私は意識を手放した。
今日は朝からセパルとは別行動を取っている。いつも私に憑いて回るセパルだったが、劇には興味がないらしいので、他のクラスを覗きに行っているようだ。
緞帳が上がれば、早速私の出番である。正直魔法の鏡役に人数割くより、王妃役を増やして欲しい。無駄に出番多いよ、この役。王妃役をシフト制にして欲しいと言っても、「何言ってるんですか、王妃はクリスティーヌ様以外演じきれません!」と大反対をくらった。解せぬ…。
難なく序盤の出番をこなし、一時舞台裏に帰る。今の所、特に問題もなく進んでいる。
中盤は…小人の家に王妃が乗り込む。つまりは、また私の出番だ。やってて思うけど、この演劇って白雪姫より王妃の出番多いよな…。これじゃどっちが主役か分からない。
「おのれ白雪姫…!次はわたくし自らその息を絶ってやろう」
そう言って、私は森の外れで洗濯をしていた(という設定の)小人達の周りに氷魔法を放つ。人に当たらない絶妙な位置に魔法を落としながら、倒れ込んだ小人の背中をヒールの靴で軽く踏む。言わずもがな、その小人こそカザルスだ。
…うわぁ…二度とやりたくない。今回は何故かジャック以外のクラスメイト全員に頼み込まれたから渋々やったけど…。今度があったら、頼まれてももう絶対しない。
悪役令嬢どころか、悪の女王レベルじゃないのこれ?
場面は変わり、小人達を打ち負かした王妃は小人の家にたどり着く。そこで、白雪姫に毒林檎を渡し…その場で林檎を齧った白雪姫は昏倒してしまう。
次の場面では皆さんお待ちかねの王子登場。死してなお美しい姫に王子は愛を誓い、口付け(の振り)をする。観客席からは凄まじい反応があった。…おかしい、舞台裏からも悲鳴が。振りだって分かってるのにこのリアクション、ジャックの人気の凄さを実感する。
さて、いよいよ迎えるはラストだ。ここでやっと私の出番が終わる。戦って裏切られて負けて死亡。はい、簡単なお仕事ですねー。
もうすぐ終わりということもあり、私は気楽に舞台に上がった。王子陣営と王妃陣営とで戦いが始まり、王妃の魔術師が王妃を裏切る。ここまでは練習通りだった。
「王妃よ、今までの悪行の報いを受けるのだ。現れよ魔獣達!王妃を倒せ!」
事前に用意していた魔獣の召喚札を手に、魔術師が呪文を唱える。しかし、その場に現れたものは、練習で見ていたものとは比べ物にならない大きさと魔力を放っていた。その姿は地獄の番犬、ケルベロスを思わせるような巨大な犬だった。本当にケルベロスなら3頭分だろうが、その頭は2頭分だ。とはいえ、この魔獣の咆哮だけでも人々の恐ろしさを掻き立てるには充分だった。
魔術師も王子も、クラスメイト達はそのトラブルに呆然としている。私も同じように驚くが、誰よりも早く現実に引き戻される。魔獣が私を目掛けて襲いかかってきたからだ。
「…!くっ…」
凄まじい風圧を伴って突進してくる魔獣から必死に距離をとる。数秒前まで私が立っていた場所には深い爪痕が残されていた。この世界に生まれてきて初めての、命の危機と言えるかもしれない。
魔獣は私が逃げた瞬間、すぐに方向転換して再び向かってくる。魔獣によって一気にステージは狭まり、逃げ場はほとんどない。
一か八か、迎え撃つしかない。そう決めて、身体中に力を溜めていく。魔獣が飛びかかる時、私もまた魔法を放った。私の放った氷魔法は魔獣の足元をバキバキと音を立てながら氷で覆っていく。その魔法の発動時間も決して遅くはないのだが、まだ氷に包まれていない前足で魔獣はしぶとく抵抗し、私を薙ぎ払おうとする。
ただでさえ動きにくい衣装を着て、魔力を出し惜しみせずに行使しているのだ。その攻撃を避ける力などもう残っていない。魔獣の爪が私の右腕を掠め、軽い血飛沫が上がった。
「…王妃が命ずる。わたくしに…従え!」
私の一喝に魔獣がビクリと身体を震わせ、静止する。それと同時に、私の氷魔法が魔獣の巨躯を完全に覆った。その場に残ったのは静寂と、ところどころが壊れたステージだった。
私はふらりとその場に倒れ込んだ。本当はかなり限界なのだが、一応劇は続いている。そう思い、最後の仕上げをすることにした。私のアドリブにも、ナレーションの子が柔軟に対応する。
「その場に目を閉じて横たわる王妃は、死を迎える前に氷に包まれていく。力を使い過ぎた王妃はその反動を受け、自滅していったのです」
そのナレーションを聞いて安堵したのか、私の意識は遠ざかって行く。意識を失う寸前、セパルの気配も感じたし、もう大丈夫だろう。
心置き無く私は意識を手放した。
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