14 / 18
魔法使いの悲劇
しおりを挟む
目の前でアリステラを奪われたシリルは、魔法使いをじっとりと睨みつけていた。片手で魔法使いの首を絞めつつ、もう片方の手には剣が握られている。
今にも死にそうな魔法使いは、息も絶え絶えに訴える。
「ギブ、ギブギブ!死ぬ!死ぬって!」
「お前が死んでも俺には何の問題もないが?」
「うわぁぁ、馬車ー!早く娘さん戻してぇぇ!じゃないと俺が死んじゃうぅ」
今はもう見えない馬車に向かって、魔法使いが叫ぶ。それを冷めた目で見やって、シリルはこの魔法使いをどう料理してやろうかと考えていた。
魔法の力そのものは強力、けれど接近戦は苦手らしく、今のところ抵抗らしい抵抗は見られない。万が一、アリステラに何かあってはいけないので、こうして生かしてはいる。
「はぁ…。アリステラ様にもしもの事があれば…分かっているだろうな……」
「わ、分かってます分かっでまずがら、腕緩めてくらさいよ……」
「緩めたら逃げるかもしれないだろう?犯罪者に情けをかける訳には行かない」
「えっ、俺、犯罪者扱い?うそ、どこが?」
涙目でオロオロと弁解する魔法使いに絆されるシリルではない。その腕はきっちり魔法使いの首元をホールドしていた。このくらい苦しむべきなのだ。シリルとしては当然の報いである。
どのくらいの間、そうしていたかは分からない。アリステラにかけられた魔法の説明をさせて、危険性がないのかなどを確かめていたシリルはふと空を見上げる。
そして、固まった。
つい先刻、猛然と駆け去った馬車が同じような速度で、こちらに向かってきたからだ。
何度見ても意味のわからない速度だ。あんなに危なさそうな馬車に乗っていて、アリステラは本当に大丈夫なのか。
「俺の馬車よ!我が叫びを聞いてくれたか~!マジ死ぬとこだったわ、ナイスタイミングだぜ」
戻ってきた馬車に飛びつこうとする魔法使いを制して、シリルは馬車に駆け寄る。馬車のドアを開ければ、そこからアリステラが転がり出てきた。どう見ても、顔色の悪い彼女を見てシリルは慌てて彼女を支える。
「アリステラ様!どうなさったのですか!?」
「うぷ…馬車に酔った…」
青ざめた顔のアリステラの背を撫でつつ、危ない足取りの彼女を抱き上げる。疲れたのか、そのまま眠ってしまったアリステラを抱いたまま、シリルは魔法使いの長ったらしいマントの裾を踏みつけた。
「待て。逃がしはしない」
ぐぐっと足元に力を入れ、逃げようとする魔法使いを足止めする。
「あの。ほんと、すみませんでした…もう許して下さい、お兄さん……」
「許してくれで許されるほど、世間は甘くないぞ」
その言葉に、魔法使いはがっくりと肩を落とした。
今にも死にそうな魔法使いは、息も絶え絶えに訴える。
「ギブ、ギブギブ!死ぬ!死ぬって!」
「お前が死んでも俺には何の問題もないが?」
「うわぁぁ、馬車ー!早く娘さん戻してぇぇ!じゃないと俺が死んじゃうぅ」
今はもう見えない馬車に向かって、魔法使いが叫ぶ。それを冷めた目で見やって、シリルはこの魔法使いをどう料理してやろうかと考えていた。
魔法の力そのものは強力、けれど接近戦は苦手らしく、今のところ抵抗らしい抵抗は見られない。万が一、アリステラに何かあってはいけないので、こうして生かしてはいる。
「はぁ…。アリステラ様にもしもの事があれば…分かっているだろうな……」
「わ、分かってます分かっでまずがら、腕緩めてくらさいよ……」
「緩めたら逃げるかもしれないだろう?犯罪者に情けをかける訳には行かない」
「えっ、俺、犯罪者扱い?うそ、どこが?」
涙目でオロオロと弁解する魔法使いに絆されるシリルではない。その腕はきっちり魔法使いの首元をホールドしていた。このくらい苦しむべきなのだ。シリルとしては当然の報いである。
どのくらいの間、そうしていたかは分からない。アリステラにかけられた魔法の説明をさせて、危険性がないのかなどを確かめていたシリルはふと空を見上げる。
そして、固まった。
つい先刻、猛然と駆け去った馬車が同じような速度で、こちらに向かってきたからだ。
何度見ても意味のわからない速度だ。あんなに危なさそうな馬車に乗っていて、アリステラは本当に大丈夫なのか。
「俺の馬車よ!我が叫びを聞いてくれたか~!マジ死ぬとこだったわ、ナイスタイミングだぜ」
戻ってきた馬車に飛びつこうとする魔法使いを制して、シリルは馬車に駆け寄る。馬車のドアを開ければ、そこからアリステラが転がり出てきた。どう見ても、顔色の悪い彼女を見てシリルは慌てて彼女を支える。
「アリステラ様!どうなさったのですか!?」
「うぷ…馬車に酔った…」
青ざめた顔のアリステラの背を撫でつつ、危ない足取りの彼女を抱き上げる。疲れたのか、そのまま眠ってしまったアリステラを抱いたまま、シリルは魔法使いの長ったらしいマントの裾を踏みつけた。
「待て。逃がしはしない」
ぐぐっと足元に力を入れ、逃げようとする魔法使いを足止めする。
「あの。ほんと、すみませんでした…もう許して下さい、お兄さん……」
「許してくれで許されるほど、世間は甘くないぞ」
その言葉に、魔法使いはがっくりと肩を落とした。
0
あなたにおすすめの小説
この闇に落ちていく
豆狸
恋愛
ああ、嫌! こんな風に心の中でオースティン殿下に噛みつき続ける自分が嫌です。
どんなに考えまいとしてもブリガンテ様のことを思って嫉妬に狂う自分が嫌です。
足元にはいつも地獄へ続く闇があります。いいえ、私はもう闇に落ちているのです。どうしたって這い上がることができないのです。
なろう様でも公開中です。
身分違いの恋
青の雀
恋愛
美しい月夜の晩に生まれた第1王女ベルーナは、国王と正妃の間に生まれた初めての娘。
権力闘争に巻き込まれ、誘拐されてしまう。
王子だったら、殺されていたところだが、女の子なので、攫ったはいいものの、処理に困って、置き去りにされる。
たまたま通りすがりの冒険者家族に拾われ、そのまま王国から出る。
長じて、ベルーナの容姿は、すっかり美貌と品位に包まれ、一目惚れ冒険者が続出するほどに
養父は功績を讃えられ、男爵の地位になる。
叙勲パーティが王宮で開かれ、ベルーナに王子は一目ぼれするが、周囲は身分違いで猛反対される。
王女と男爵令嬢
青の雀
恋愛
赤ん坊の時に、取り違いにあってしまった王女アクエリアスは、5歳の時に乙女ゲームのt悪役令嬢に転生してきたことを知り、「人生詰んだ」とガッカリしていた。
前世は、アラサーのキャリアウーマンとして活躍していた村崎紫子
もう一人の王女に婚約者も、王女としての地位もすべて奪われ、断罪され父の手により処刑される運命をなんとしても変えたい。
奮闘していくうちに、乙女ゲームの原作とまったく違う展開になっていく。
生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
要望通り、悪女を逆ハーレムルートにしました
ラブリス
恋愛
目を覚ますと、乙女ゲームのヒロインフィーナになっていた。でも、ヒロインの立場は悪女エレノアに奪われてしまった。
そっちが望むなら、逆ハーレムルートにしてあげる。こうなった責任を取って貰いましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる