68 / 793
2 海の国の聖人候補
260 準備は怠りなきように
しおりを挟む
260
「それじゃタイチ。まず、私の案内人として専属契約をしましょう。契約料として500ポル前払いします。
それに、ご挨拶の品を持っていきたいから、港の皆さんに必要な品物をこれで買ってきて頂戴」
私は更に1000ポルをタイチに渡す。
「こ、こんなに頂けません!!俺が港で1日働いても1ポルと少しなんです!これは、いくらなんでも多すぎます、メイロードさま!」
慌てて返そうとするタイチに苦笑しながら私は諭す。
「タイチへのお金は1日分でもないし、日当でもないわ〝専属料〟なの。
これから貴方には私の指示に従って、しばらくの間一生懸命働いてもらうことになる。
すごく大変なことを頼むことになるかもしれない。
その大切な仕事をずっとしてもらうために支払うお金なのよ。だから、遠慮は無用!堂々と貰って頂戴。
ご挨拶品の方は、とにかく現状皆さんに必要なものを持っていきたいの。よろしくね」
ボロ泣きのタイチは、何度も頷きながらお金を握りしめた。
「なんでもします!一生でもお仕え致します!これだけのお金があったら、貧しい子供達にも食事がさせられます。ありがとう、ありがとうございます」
だいぶ背の高いタイチが小さな私の前でボロ泣きしている図は、なんだかちょっと滑稽だが、彼にとっては〝希望の涙〟なのだろうし、悲しい涙でないなら、むしろさっぱりしていいのかもしれない。
私はタイチにハンカチを渡し、落ち着くまで少しの間、買っていきたい土産のことや必要とされる物資について話した。
落ち着いたタイチに、私は手持ちの軽トラサイズの容量のマジックバッグを持たせ、物資の買い出しと、船のチャーターを頼んだ。
「マジックバッグは、この国では帝国とは比べ物にならない貴重品らしいから、見つからないよう気をつけて使ってね。この家にも小さな台車があったから、それと併用するといいわ。
個人で買うには多すぎる量だから、疑われたらマリス商会のお使いだと言ってね。商人ギルドにはちゃんと登録済みだから、どんな量でも必ず売ってくれるはずよ」
「はい、任せて下さい!しっかり値切って買えるだけ買ってきます!」
「頼もしいわ。お願いね」
涙を拭いて、真剣な顔になったタイチは、早速台車を引いて市場へと向かって行った。
〔セーヤ、ソーヤ 。そちらの様子はどう?〕
〔タイチの言葉は概ね正しいようございます。小さな領地ですので焦げ付いた借り入れ額も微々たるものでした。
ですが、原因になった急激な不漁に今後の回復見通しがありませんから、資金の貸し手はどこも手を引いてしまい、自転車操業すら出来ずに破綻に至ったようです。税金の支払いの見込みが立たないことも、かなり国の心証が悪いようでした〕
〔メイロードさま、ご依頼のヤツ見つけましたけど、アレは使い物にはならないと思いますよ。どうします?〕
〔そちらは現地へ行って諸々確認してからの状況次第かな……今は場所が分かれば充分なので、戻ってね。ありがとう、2人とも〕
〔了解です〕
〔了解です〕
相変わらず、2人の調査力半端なし。必要な情報は半日でほぼ揃ってしまった。
どうやら領主側の緊急に解決すべき問題は、短期的な資金のショートのようだ。
帳簿で確認は必要だが、亡くなった領主は有能で実直な方だったそうだし、大きな借財はないと見ていいだろう。
ならば、今のうちに手が打てれば、まだバンダッタにはチャンスがある。
……となると、頂いた時には迷惑としか思わず〝過保護〟と笑ってしまったおじさまたちのご威光を、早速使うことになるだろう。私が表に出ないように全てを進めるには、コレを使うしかない。
(みなさんのお心遣い、ありがたく使わせて頂きます!)
私は商業ギルド発行の身分証明カードを押し頂き、早速マホロ商業ギルドのタスカ幹事にアポイントを取るため《伝令》を放った。
《伝令》は30分も経たないで戻ってきて、
(いつでも時間はお作り致します。早い方がよろしいのでしたら、1時間後で如何でしょう?)
とのことだったので、お礼と了解の《伝令》を返した。
交渉がまとまれば、午後には船で出発する。
港町の再生が、私にできるのか、それは行ってみなければ分からないが、できる準備はした。
(タイチ、頑張ろうね!)
「それじゃタイチ。まず、私の案内人として専属契約をしましょう。契約料として500ポル前払いします。
それに、ご挨拶の品を持っていきたいから、港の皆さんに必要な品物をこれで買ってきて頂戴」
私は更に1000ポルをタイチに渡す。
「こ、こんなに頂けません!!俺が港で1日働いても1ポルと少しなんです!これは、いくらなんでも多すぎます、メイロードさま!」
慌てて返そうとするタイチに苦笑しながら私は諭す。
「タイチへのお金は1日分でもないし、日当でもないわ〝専属料〟なの。
これから貴方には私の指示に従って、しばらくの間一生懸命働いてもらうことになる。
すごく大変なことを頼むことになるかもしれない。
その大切な仕事をずっとしてもらうために支払うお金なのよ。だから、遠慮は無用!堂々と貰って頂戴。
ご挨拶品の方は、とにかく現状皆さんに必要なものを持っていきたいの。よろしくね」
ボロ泣きのタイチは、何度も頷きながらお金を握りしめた。
「なんでもします!一生でもお仕え致します!これだけのお金があったら、貧しい子供達にも食事がさせられます。ありがとう、ありがとうございます」
だいぶ背の高いタイチが小さな私の前でボロ泣きしている図は、なんだかちょっと滑稽だが、彼にとっては〝希望の涙〟なのだろうし、悲しい涙でないなら、むしろさっぱりしていいのかもしれない。
私はタイチにハンカチを渡し、落ち着くまで少しの間、買っていきたい土産のことや必要とされる物資について話した。
落ち着いたタイチに、私は手持ちの軽トラサイズの容量のマジックバッグを持たせ、物資の買い出しと、船のチャーターを頼んだ。
「マジックバッグは、この国では帝国とは比べ物にならない貴重品らしいから、見つからないよう気をつけて使ってね。この家にも小さな台車があったから、それと併用するといいわ。
個人で買うには多すぎる量だから、疑われたらマリス商会のお使いだと言ってね。商人ギルドにはちゃんと登録済みだから、どんな量でも必ず売ってくれるはずよ」
「はい、任せて下さい!しっかり値切って買えるだけ買ってきます!」
「頼もしいわ。お願いね」
涙を拭いて、真剣な顔になったタイチは、早速台車を引いて市場へと向かって行った。
〔セーヤ、ソーヤ 。そちらの様子はどう?〕
〔タイチの言葉は概ね正しいようございます。小さな領地ですので焦げ付いた借り入れ額も微々たるものでした。
ですが、原因になった急激な不漁に今後の回復見通しがありませんから、資金の貸し手はどこも手を引いてしまい、自転車操業すら出来ずに破綻に至ったようです。税金の支払いの見込みが立たないことも、かなり国の心証が悪いようでした〕
〔メイロードさま、ご依頼のヤツ見つけましたけど、アレは使い物にはならないと思いますよ。どうします?〕
〔そちらは現地へ行って諸々確認してからの状況次第かな……今は場所が分かれば充分なので、戻ってね。ありがとう、2人とも〕
〔了解です〕
〔了解です〕
相変わらず、2人の調査力半端なし。必要な情報は半日でほぼ揃ってしまった。
どうやら領主側の緊急に解決すべき問題は、短期的な資金のショートのようだ。
帳簿で確認は必要だが、亡くなった領主は有能で実直な方だったそうだし、大きな借財はないと見ていいだろう。
ならば、今のうちに手が打てれば、まだバンダッタにはチャンスがある。
……となると、頂いた時には迷惑としか思わず〝過保護〟と笑ってしまったおじさまたちのご威光を、早速使うことになるだろう。私が表に出ないように全てを進めるには、コレを使うしかない。
(みなさんのお心遣い、ありがたく使わせて頂きます!)
私は商業ギルド発行の身分証明カードを押し頂き、早速マホロ商業ギルドのタスカ幹事にアポイントを取るため《伝令》を放った。
《伝令》は30分も経たないで戻ってきて、
(いつでも時間はお作り致します。早い方がよろしいのでしたら、1時間後で如何でしょう?)
とのことだったので、お礼と了解の《伝令》を返した。
交渉がまとまれば、午後には船で出発する。
港町の再生が、私にできるのか、それは行ってみなければ分からないが、できる準備はした。
(タイチ、頑張ろうね!)
応援ありがとうございます!
68
お気に入りに追加
12,627
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。