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3 魔法学校の聖人候補
400 ポーションの達人
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400
古典薬のレシピは、どれも効能優先でかなり強い効果を持った高価な素材をたっぷり使用しているため、おいそれと買えるようなものではないが、その分効果は抜群のようだ。更に、今回私が作ってみた感覚から類推されるのは、私のように、魔法力量が桁違いの特殊な人間が作成した古典《魔法薬》では、その効果が更に高まったり、付与効果が生まれたりすることだ。これには《聖魔法》もしくは《聖性》の影響も関与していると考えるべきかもしれない。
《薬学研究会》のラビ部長も、教会の人間が作る薬は効果が高い傾向がある、といった話をしていたし、《聖魔法》が使えて〝強魔法力〟の私は、3倍いやもっと大きな補正の掛かった薬ができてしまうのかもしれない。
(まさか3乗とか言わないよね……まさかね……
どっちにしろ、これは、外での薬作り、本当に慎重しないといけないなぁ……)
私は普通の薬が作れるように、それから自室で調整を繰り返すことになった。少なくとも作る機会のありそうな一般的な薬は、絶対に補正がかからないように調整しておかないと危険だ。
今の私はハルリリさんから《魔法薬》を教わっていた頃に比べると、桁違いに魔法力は増えているし、知識も増えている。あの頃と同じ気持ちで薬作りに取り組んだら、必ず何がしかのボロが出てしまうに違いないのだ。
《ポーション》程度の素材ならば、自分で採取してストックしてあったものだけでもかなりの量があったので、そこからはひたすら安定した品質の《ポーション》を作るための特訓に入った。
ともすれば《ハイポーション》になってしまいがちな《ポーション》を、アベレージの品質に固定することが一番難しいという、なんとも面倒なことになってしまったが、200本ほど《ハイポーション》を作ってしまった辺りで、なんとか普通の《ポーション》を確実に作るコツを掴むことができた。
そしていいのか悪いのか、コツを掴んだせいで、物凄い早業でポーションが作れるようになってしまった。
気を抜かずゆっくり、ゆっくりと思いながらやらないと、2分もかからずできてしまうようになってしまったのだ。普通の魔法薬作りでは、1時間に2ー3本できれば御の字なのだから、爆速にもほどがある、絶対人に見せられない能力だ。
更にがっかりポイント。私は《生産の陣》を使って、もともといくらでも複製できる《ポーション》を、わざわざ材料を使ってまで大量に作る必要など微塵もないのだ。
(なんだ、このムダ技能……)
どうにも納得がいかないモヤモヤした気持ちを振り払いながら、私はため息とともに片付けを始めた。
道具を整理し、ソーヤと一緒に大量にできてしまった《火傷治療薬》と意図せずできてしまった《火傷治療薬(強再生力付与)》、それに《ポーション》《ハイポーション》を《無限回廊の扉》の中に運び込みながら、古典的な《魔法薬》の強い効き目と《白魔法》について考えを巡らせた。
多くの人に〝治癒の魔法〟を届けたかった〝彼〟は、自らの力を固定化できないかと考えたのではないだろうか。
恐らく、最初の《魔法薬》はもっともっと魔法力偏重で素材は触媒のような役割だったのだろうと思う。
だが、それではやはり作れるのは〝彼〟のような特殊な人間に限られるし、たくさんの人が使える薬にはならない。そこで、触媒でしかなかった材料を研究しながら増やし、素材と魔法力を融合させた《魔法薬》へ至ったのではないか、と私は考えている。
何しろ古典薬のレシピは魔法力と親和性が高すぎる。ゼンモンさんやハルリリさんの《魔法薬》は、魔法力を大量に注ぎ込んでも付与効果まで付くほど強力にはならない。ゼンモンさんの特化した効能の《魔法薬》に至っては、魔法力を注ぎ込んでも効果の強化さえあまり起こらないのだ。
古典的な《魔法薬》は元々《白魔法》そのものだったから、私のような《聖魔法》使いの強い魔法力を注ぎ込むことで薬の効能が先祖返りしているのではないか、そんな風に私には思えた。
(まだ、確証はないけど、この古典《魔法薬》を、削ぎ落としていったら《白魔法》へ辿り着けるんじゃないかな。そんな気がする。これは前進だよね、やることが見えてきた!)
古典薬について詳しくなることは《白魔法》に近づく道かもしれない。私はこれからしばらくは、ひっそりと個人的に古典的な《魔法薬》の製作をしながら、〝魔法薬研究会〟で、更に文献調査を進めていこうと決めた。
〝魔法薬研究会〟には、薬学に関する古い文献も多く保存されていた。
あそこに入ることは、私の特殊性を考えると多少の危険を伴うけれど、それでもその価値は十分ある。
私はソーヤが面白がって淹れてくれたお持たせの〝滋養強壮茶〟の不味さに顔をしかめながらも、クラブ活動に時間を割いて取り組んでいくことを決心した。
古典薬のレシピは、どれも効能優先でかなり強い効果を持った高価な素材をたっぷり使用しているため、おいそれと買えるようなものではないが、その分効果は抜群のようだ。更に、今回私が作ってみた感覚から類推されるのは、私のように、魔法力量が桁違いの特殊な人間が作成した古典《魔法薬》では、その効果が更に高まったり、付与効果が生まれたりすることだ。これには《聖魔法》もしくは《聖性》の影響も関与していると考えるべきかもしれない。
《薬学研究会》のラビ部長も、教会の人間が作る薬は効果が高い傾向がある、といった話をしていたし、《聖魔法》が使えて〝強魔法力〟の私は、3倍いやもっと大きな補正の掛かった薬ができてしまうのかもしれない。
(まさか3乗とか言わないよね……まさかね……
どっちにしろ、これは、外での薬作り、本当に慎重しないといけないなぁ……)
私は普通の薬が作れるように、それから自室で調整を繰り返すことになった。少なくとも作る機会のありそうな一般的な薬は、絶対に補正がかからないように調整しておかないと危険だ。
今の私はハルリリさんから《魔法薬》を教わっていた頃に比べると、桁違いに魔法力は増えているし、知識も増えている。あの頃と同じ気持ちで薬作りに取り組んだら、必ず何がしかのボロが出てしまうに違いないのだ。
《ポーション》程度の素材ならば、自分で採取してストックしてあったものだけでもかなりの量があったので、そこからはひたすら安定した品質の《ポーション》を作るための特訓に入った。
ともすれば《ハイポーション》になってしまいがちな《ポーション》を、アベレージの品質に固定することが一番難しいという、なんとも面倒なことになってしまったが、200本ほど《ハイポーション》を作ってしまった辺りで、なんとか普通の《ポーション》を確実に作るコツを掴むことができた。
そしていいのか悪いのか、コツを掴んだせいで、物凄い早業でポーションが作れるようになってしまった。
気を抜かずゆっくり、ゆっくりと思いながらやらないと、2分もかからずできてしまうようになってしまったのだ。普通の魔法薬作りでは、1時間に2ー3本できれば御の字なのだから、爆速にもほどがある、絶対人に見せられない能力だ。
更にがっかりポイント。私は《生産の陣》を使って、もともといくらでも複製できる《ポーション》を、わざわざ材料を使ってまで大量に作る必要など微塵もないのだ。
(なんだ、このムダ技能……)
どうにも納得がいかないモヤモヤした気持ちを振り払いながら、私はため息とともに片付けを始めた。
道具を整理し、ソーヤと一緒に大量にできてしまった《火傷治療薬》と意図せずできてしまった《火傷治療薬(強再生力付与)》、それに《ポーション》《ハイポーション》を《無限回廊の扉》の中に運び込みながら、古典的な《魔法薬》の強い効き目と《白魔法》について考えを巡らせた。
多くの人に〝治癒の魔法〟を届けたかった〝彼〟は、自らの力を固定化できないかと考えたのではないだろうか。
恐らく、最初の《魔法薬》はもっともっと魔法力偏重で素材は触媒のような役割だったのだろうと思う。
だが、それではやはり作れるのは〝彼〟のような特殊な人間に限られるし、たくさんの人が使える薬にはならない。そこで、触媒でしかなかった材料を研究しながら増やし、素材と魔法力を融合させた《魔法薬》へ至ったのではないか、と私は考えている。
何しろ古典薬のレシピは魔法力と親和性が高すぎる。ゼンモンさんやハルリリさんの《魔法薬》は、魔法力を大量に注ぎ込んでも付与効果まで付くほど強力にはならない。ゼンモンさんの特化した効能の《魔法薬》に至っては、魔法力を注ぎ込んでも効果の強化さえあまり起こらないのだ。
古典的な《魔法薬》は元々《白魔法》そのものだったから、私のような《聖魔法》使いの強い魔法力を注ぎ込むことで薬の効能が先祖返りしているのではないか、そんな風に私には思えた。
(まだ、確証はないけど、この古典《魔法薬》を、削ぎ落としていったら《白魔法》へ辿り着けるんじゃないかな。そんな気がする。これは前進だよね、やることが見えてきた!)
古典薬について詳しくなることは《白魔法》に近づく道かもしれない。私はこれからしばらくは、ひっそりと個人的に古典的な《魔法薬》の製作をしながら、〝魔法薬研究会〟で、更に文献調査を進めていこうと決めた。
〝魔法薬研究会〟には、薬学に関する古い文献も多く保存されていた。
あそこに入ることは、私の特殊性を考えると多少の危険を伴うけれど、それでもその価値は十分ある。
私はソーヤが面白がって淹れてくれたお持たせの〝滋養強壮茶〟の不味さに顔をしかめながらも、クラブ活動に時間を割いて取り組んでいくことを決心した。
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