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3 魔法学校の聖人候補
504 狩猟同好会
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504
「笑った? 会長がぁ?」
生姜、それに《仙鏡院》で見つけたシナモンにとても似た香りの樹皮を使って作ってみたハードタイプでスパイスが効いた香り豊かなクッキーを、バリバリ美味しそうに頬張りながら、トルルは驚きの声をあげた。
「うん。さっきね、博士によろしく伝えてくれって言いながら、すごく穏やかな笑顔で微笑みかけてくれたんだ。シルベスター会長って案外優しい人なのかもって思っちゃった」
私の言葉に、 お茶を楽しんでいたオーライリとクローナがいやいや、っと思いっきり首を振る。
「会長の通り名ご存知じゃなかったんですか? 〝氷のアーシアン〟って呼ばれているんですよ。それは《氷魔法》がお得意だからということだけじゃなく、あの鉄壁の無表情から来ているんです」
オーライリの言葉に私は驚く。
「へぇ、そうなの? 私といるときはそこまで無表情じゃない時もある気がするけど……」
「それはメ……マリスさんが特別会長のお気に入りだからですよ。我々の知っている会長の微笑みは、相手を心底蔑んだ時のものぐらいです。その笑顔の怖いことといったら……」
普段怖いものなしのクローナまで顔を曇らせているところをみると、その〝笑顔〟は本当に恐ろしいらしい。
(〝氷のアーシアン〟ねぇ……)
こんな風にみんなで噂話をしながらゆっくりと話すのは、新学期に入って初めてなので、私は気になっていたみんなの近況を聞き出すことにした。
2年生になったことで、授業のほとんどが選択制になった。みんなそれぞれ得意分野を中心に少し進んだ魔法を習い始めているのだそうだ。クローナは《火魔法》を極めることにしたそうで火系の攻撃魔法を習い始めており、オーライリは人とは違う魔法を扱えるようになりたいと、一年の時に取得しきれなかった《基礎魔法》を増やしつつ、無属性の特殊な魔法を学べるクラスを取っていた。トルルは《風魔法》と《土魔法》の中級クラスの魔法を学びながら、狩りにもせいを出しているそうだ。
「それで〝狩猟同好会〟を作ろうかと思っているの。やはりひとりだと、捕まえられる獲物が限られちゃうでしょ。狩るのが難しい獲物の方が、段違いに買取金額が高いし、魔石が出る可能性も高いじゃない? それに複数での攻撃ができれば魔法連携の勉強もできるし、部室や予算がついたら狩りの道具も揃えられるじゃない?」
なるほど、ちゃっかりしたトルルらしい計算だ。それに確かに、そうやって複数で連携して獲物に当たるという実戦経験を積むことは、とても有意義だし訓練としてもとてもいい。
「ほら! トルル! ちゃんとおっしゃい!」
オーライリがトルルの方をギロッと睨んだ。
何事かと思って小首を傾げている私に、トルルは言いにくそうにこう告げた。
「あのね……同好会を申請するのに、趣旨を書いた紙とね……実績表というのを提出しないといけなかったのね。それで、冬合宿のことを記載したらマリスさんも同好会メンバーってことになっちゃって……」
クローナも苦笑している。
「私も知らないうちに〝狩猟同好会〟のメンバーになっておりましたの。もちろんオーライリも……」
「まったく、トルルのやることはこれだから!」
「でも〝狩猟同好会〟ができてから、たくさん入会申し込みがあったよ。まだあんまり実績がないから、予算があまりもらえないんだけどね。それに冬合宿一位の実績でなんとか同好会設立の許可をもらったようなものなんで、できれば名前だけでも貸しておいてくれると……あの……助かる、いえ助かります」
そう言って頭を下げるトルルに、みんな半笑いだ。
「名前をお貸しするのは、そういう事情ならば構いませんが、オーライリもクローナももちろん私も、多忙であまり参加できない幽霊会員になっちゃいそうですね」
「そ、それは、そうだと思ってる……」
「だから、とっとと〝狩猟同好会〟の実績を作りましょう!」
私の言葉にトルルがポカンとしている。
「へっ?」
私はオーライリとクローナを見て言った。
「まだ、新学期が始まって日が浅く、生徒会の仕事も始動したばかりで比較的時間が取れるでしょ。今のうちに、ちゃっちゃとみんなで狩りに行きましょう! それで、実績を作ってしまえば、私たちがあまり参加できなくても問題ないでしょう?」
「えっ、いいの? クローナ、オーライリ?」
相変わらず半笑いのクローナとオーライリは、小さく何度かうなづいた。
「私、あなたの家族のためにお金を稼ぎたいという気持ち、とても尊いと思っていますの。それに確かに、今なら1日ぐらい時間を作れますからね」
「マリスさんと狩りに行ける機会を私が逃すわけがないでしょう。絶対行きます! あ、でも、トルルは少し反省しなきゃダメよ。忙しいマリスさんに迷惑かけて!」
「ご、ごめんなさい」
小さくなって謝るトルルに私は微笑みかけた。
「大丈夫よ。私たちお友達でしょう。こういう時は助け合うものよ。
こうなったら春の山の稀少な動物や魔物をガッチリ狩ってきましょうね」
私の言葉にトルルは私の手を取り
「ウンウン、ガッチリ高い値段のつく獲物を取って、お母さんにお金を送るわ! 頑張る、私!」
そう言いながら涙目になっている。
こうして〝狩猟同好会〟の実績作りのための公式な狩猟が行われることになった。
こう言ってはなんだが、この会の性質上お金目当ての入部者がどうしても主力となるので、貴族はクローナとももうひとり下級貴族の二年生男子ルドイ・マベデルだけ。私たち4人に加えて彼ら10名が参加する。ライアン、ザイク、モーラは残念ながら、一年生の時の積み残し授業の消化に忙殺されているそうで不参加だ。
(14名いれば色々なフォーメーションが考えられるし、面白い狩りになりそうだな)
私は早速オーライリたちと具体的な戦術を決め始めた。善は急げだ。今週末にはカタをつけたい。
(春の山にはどんな生き物がいるのかな。楽しみ!)
「笑った? 会長がぁ?」
生姜、それに《仙鏡院》で見つけたシナモンにとても似た香りの樹皮を使って作ってみたハードタイプでスパイスが効いた香り豊かなクッキーを、バリバリ美味しそうに頬張りながら、トルルは驚きの声をあげた。
「うん。さっきね、博士によろしく伝えてくれって言いながら、すごく穏やかな笑顔で微笑みかけてくれたんだ。シルベスター会長って案外優しい人なのかもって思っちゃった」
私の言葉に、 お茶を楽しんでいたオーライリとクローナがいやいや、っと思いっきり首を振る。
「会長の通り名ご存知じゃなかったんですか? 〝氷のアーシアン〟って呼ばれているんですよ。それは《氷魔法》がお得意だからということだけじゃなく、あの鉄壁の無表情から来ているんです」
オーライリの言葉に私は驚く。
「へぇ、そうなの? 私といるときはそこまで無表情じゃない時もある気がするけど……」
「それはメ……マリスさんが特別会長のお気に入りだからですよ。我々の知っている会長の微笑みは、相手を心底蔑んだ時のものぐらいです。その笑顔の怖いことといったら……」
普段怖いものなしのクローナまで顔を曇らせているところをみると、その〝笑顔〟は本当に恐ろしいらしい。
(〝氷のアーシアン〟ねぇ……)
こんな風にみんなで噂話をしながらゆっくりと話すのは、新学期に入って初めてなので、私は気になっていたみんなの近況を聞き出すことにした。
2年生になったことで、授業のほとんどが選択制になった。みんなそれぞれ得意分野を中心に少し進んだ魔法を習い始めているのだそうだ。クローナは《火魔法》を極めることにしたそうで火系の攻撃魔法を習い始めており、オーライリは人とは違う魔法を扱えるようになりたいと、一年の時に取得しきれなかった《基礎魔法》を増やしつつ、無属性の特殊な魔法を学べるクラスを取っていた。トルルは《風魔法》と《土魔法》の中級クラスの魔法を学びながら、狩りにもせいを出しているそうだ。
「それで〝狩猟同好会〟を作ろうかと思っているの。やはりひとりだと、捕まえられる獲物が限られちゃうでしょ。狩るのが難しい獲物の方が、段違いに買取金額が高いし、魔石が出る可能性も高いじゃない? それに複数での攻撃ができれば魔法連携の勉強もできるし、部室や予算がついたら狩りの道具も揃えられるじゃない?」
なるほど、ちゃっかりしたトルルらしい計算だ。それに確かに、そうやって複数で連携して獲物に当たるという実戦経験を積むことは、とても有意義だし訓練としてもとてもいい。
「ほら! トルル! ちゃんとおっしゃい!」
オーライリがトルルの方をギロッと睨んだ。
何事かと思って小首を傾げている私に、トルルは言いにくそうにこう告げた。
「あのね……同好会を申請するのに、趣旨を書いた紙とね……実績表というのを提出しないといけなかったのね。それで、冬合宿のことを記載したらマリスさんも同好会メンバーってことになっちゃって……」
クローナも苦笑している。
「私も知らないうちに〝狩猟同好会〟のメンバーになっておりましたの。もちろんオーライリも……」
「まったく、トルルのやることはこれだから!」
「でも〝狩猟同好会〟ができてから、たくさん入会申し込みがあったよ。まだあんまり実績がないから、予算があまりもらえないんだけどね。それに冬合宿一位の実績でなんとか同好会設立の許可をもらったようなものなんで、できれば名前だけでも貸しておいてくれると……あの……助かる、いえ助かります」
そう言って頭を下げるトルルに、みんな半笑いだ。
「名前をお貸しするのは、そういう事情ならば構いませんが、オーライリもクローナももちろん私も、多忙であまり参加できない幽霊会員になっちゃいそうですね」
「そ、それは、そうだと思ってる……」
「だから、とっとと〝狩猟同好会〟の実績を作りましょう!」
私の言葉にトルルがポカンとしている。
「へっ?」
私はオーライリとクローナを見て言った。
「まだ、新学期が始まって日が浅く、生徒会の仕事も始動したばかりで比較的時間が取れるでしょ。今のうちに、ちゃっちゃとみんなで狩りに行きましょう! それで、実績を作ってしまえば、私たちがあまり参加できなくても問題ないでしょう?」
「えっ、いいの? クローナ、オーライリ?」
相変わらず半笑いのクローナとオーライリは、小さく何度かうなづいた。
「私、あなたの家族のためにお金を稼ぎたいという気持ち、とても尊いと思っていますの。それに確かに、今なら1日ぐらい時間を作れますからね」
「マリスさんと狩りに行ける機会を私が逃すわけがないでしょう。絶対行きます! あ、でも、トルルは少し反省しなきゃダメよ。忙しいマリスさんに迷惑かけて!」
「ご、ごめんなさい」
小さくなって謝るトルルに私は微笑みかけた。
「大丈夫よ。私たちお友達でしょう。こういう時は助け合うものよ。
こうなったら春の山の稀少な動物や魔物をガッチリ狩ってきましょうね」
私の言葉にトルルは私の手を取り
「ウンウン、ガッチリ高い値段のつく獲物を取って、お母さんにお金を送るわ! 頑張る、私!」
そう言いながら涙目になっている。
こうして〝狩猟同好会〟の実績作りのための公式な狩猟が行われることになった。
こう言ってはなんだが、この会の性質上お金目当ての入部者がどうしても主力となるので、貴族はクローナとももうひとり下級貴族の二年生男子ルドイ・マベデルだけ。私たち4人に加えて彼ら10名が参加する。ライアン、ザイク、モーラは残念ながら、一年生の時の積み残し授業の消化に忙殺されているそうで不参加だ。
(14名いれば色々なフォーメーションが考えられるし、面白い狩りになりそうだな)
私は早速オーライリたちと具体的な戦術を決め始めた。善は急げだ。今週末にはカタをつけたい。
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