利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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4 聖人候補の領地経営

805 アフターヌーンティー

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805

「ときにメイロード、マリス伯爵家は親戚筋であるシルベスター公爵家とは交流はしていないのか?」

褒賞について決定したことで、ホッとした空気が流れているところで、私は手土産である少し和テイストを取り入れたアフターヌーンティーセットをマジックバッグから取り出した。

ルミナーレ様にもご相談したところ、きっと私の料理が一番喜ばれるとアドバイスをいただいたので、お茶会風の気軽な会食をイメージして用意した手土産代わりのものだ。事前に侍従の方にこのような軽食とデザートをお持ちしますとお伝えしてあったので、テーブルセッティングも淀みなく綺麗にできている。

三段重ねの食器セットは、白に金のラインだけ入ったお皿を使い、それを支えるフレームには部分的に強度のある見栄えの良い黒い木材を用い、金属部分は金物加工の工房に発注して作ってもらった。派手にならない程度に金細工もされているので、お値段もそれなりにお高いが、その価値はある出来栄えだ。

一口サイズに整えた薄いパンを使ったサンドウイッチ、スコーンにはクロテッドクリームと二種のジャムを添えている。餡子とホイップしたバターを挟んだ小さなどら焼き、マリネした白身魚を使ったサラダ、彩りにフルーツ。つまみやすい色とりどりの軽食を載せたセットを五つ用意してきた。

お菓子やお料理も好評だったが、どうやらこちらの世界では、この高さを出したテーブルセッティングは珍しいようで、この食器をとても気に入っていただき、是非とも皇宮仕様のものを作って欲しいというお話までいただいた。

(これは大口発注の予感、おじさまに丸投げしよっと)

そんな和やかな雰囲気のお茶会を楽しんでいると、先のような話をダイン皇子が突然私に振ってきたのだ。ほとんど忘れていた家名だったので一瞬私は誰のことかと思ったが、さすがにすぐ思い出せた。

(あ、シルベスター 生徒会長のご実家で、メイロードの父であるアーサー・マリスの生まれた家ね)

私には皇子の質問の意図がわからなかったが、もともと私が貴族として独立した家を興すまでの経緯にシルベスター公爵家は大いに関わっている。というよりシルベスター公爵家からの干渉を受けないために、私はマリス伯爵家を興したのだ。あちらも家を構えてしまい使娘には興味を失ったようで、なにも言っては来なかった。こちらとしても当然関わりなど持たないよう、ひっそりと田舎の領地に引っ込み、絶対出会わないように気をつけている。

「そうでございますね。袂を分かち新しい家を起こしたという事情もございますし、もともと私は庶民でもございますから、公爵家の皆様は畏れ多く、とても親戚などという気軽な気持ちでは近寄れません。きっと私のような者が公爵家に関わり合うのはご迷惑でございましょう。
それに、私も田舎で忙しくしておりますので……」

「そうか……確かに領地をメイロードひとりで引き受けているのだから、そうした親戚付き合いをするゆとりもないか……」

ダイン皇子は、なるほどという顔をしているが、なぜ突然シルベスター公爵家の名前が出てきたのか、私はわからずキョトンとしてしまう。

そこで正妃様は少し眉をひそめてから、苦笑しつつこう言われた。

「ダイン皇子、そなたの悪いくせに私のかわいいメイロードを巻き込むな」

それに対して、ダイン皇子はただ静かにほほえみ、少し頭を下げながらこう返す。
「これが、これは……申し訳ございません。なかなかの逸材を発見しつい先走ってしまいました」

「あ、あ、兄上!?」

そして、なぜかおふたりのやりとりにユリシル皇子があわてている。

私は頭に〝?〟というマークが浮かんだが、話はすぐに別の方向へ向かい、和やかにお茶会も終了し、私は退席することになった。

ルミナーレ様は、御公務に関連した相談事があるとかで、もう少し残られるそうだ。

私が退出する寸前、ユリシル皇子に声をかけられる。

「そうだ、僕にもメイロードに内々に注文したいものがあるので、歩きながらで構わないから、エントランスまで話ができないだろうか」
「は、はい殿下。ではそのように……」

そこからは護衛を前後に二名ずつ少し離れた位置に配置する形で、私とユリシル皇子は話しながら皇宮の内門へと向かうことになった。大きな兵士に囲まれながらフカフカの敷物の上を歩いていくと、

「先程の正妃様と兄上の会話の意味、メイロードにはわからなかっただろう?」

と、ユリシル皇子は品物の発注とはまったく関係のない話をいきなり切り出した。

そして話はまた別の方向に飛ぶ。

「実はダイン兄上には正妃はいないのだが、側室が十八人いるんだ」

「十八人……で、ございますか。それはまた……」

基本的に皇族の側室に人数制限というものは存在しない。とはいえ、その数はあまりにも多すぎる。

ユリシル皇子はそこから、この十八人の側室の謎を私に話してくれた。

「兄はとても有能で、特に内政を取り仕切る才能に恵まれている。法律の見直しや政策の立案、兄が内務省を取り仕切り始めてから、すべての仕事の効率が上がっているんだ」

「それは素晴らしことでございますね」

私は素直に感心した。国の中枢に有能な人がいることは喜ばしい。だが、それが私となんの関係があるのだろう」

「もちろん内務省の仕事量は膨大だ。兄ひとりでできるわけもなく、三十人の側近たちがそれを支えているんだが……そのうちの十八人は兄の側室である女性たちなんだ」

「え! 側室が働いているんですか?」

私は驚いて声を上げる。

(皇子の妃が働くなんて、そんなことあるの!?)
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